【感想】独ソ戦 絶滅戦争の惨禍

大木毅 / 岩波新書
(157件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
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22
3
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ブクログレビュー

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  • Ryo Watanabe

    Ryo Watanabe

    戦争論 クラウゼウィッツ
    敵の重心を攻略せよ。 党派的に分裂しているならば、首都を攻略。弱小国ならば、その同盟国を攻撃。

    独ソ戦の特徴。
    イデオロギーのぶつかり合いの絶滅戦争であること。
    1.事前の準備不足。限りあるリソース、時間を、どう用いるか。優先順位付けが曖昧であった。
    ドイツ側からみると、緒戦で大量包囲を完了したものの、モスクワ攻略などに要する時間を浪費してしまった。

    1933-39の軍拡が、失業者を減らした一方、設備投資、資源輸入のための外貨減少、製造業労働者不足を招いた。
    → 収奪戦争へ

    読む限り、ドイツはソ連に負けるべくして、負けた。戦略的敗北。
    絶滅戦争で、戦争に勝つことは無理では?? ましてや、広大な国土を持つ、膨大な人的資源を持つソ連に対しては。
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    投稿日:2024.01.14

  • ナガシ

    ナガシ

     お恥ずかしながら、少なくともここ10年くらいは第二次世界大戦の主戦は太平洋戦争だったという感覚でいた。
    この大戦による日本の犠牲者は戦闘員、非戦闘員合計でおおよそ3百万人と推計されている。気が遠くなるような悲惨な数字だ。
    一方、旧ソ連はジェノサイトも含めると犠牲者は28百万人と推計されている。想像を絶する数字。
    ドイツの犠牲者はおおよそ8百万人と推計されている。

    また、まさに現在進行中のウクライナ情勢におけるロシアの文字通り「地政学」上の立ち位置が分かるような気がした。
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    投稿日:2023.11.20

  • りー

    りー

    こんな表現は適切ではないかもしれないが、面白かった
    久しぶりに本の内容について議論したくなってしまって友人に勧めまくった
    どちらも戦略なくただ人が死んでいく
    こんな人が国を動かした時代があったなんて…

    投稿日:2023.10.28

  • ぬえ

    ぬえ

    独ソ戦の発端 イギリスとの戦いの行き詰まりを感じ、ソ連を先に下せばイギリスも諦めるだろうとの考えがドイツ側にあった。ヒトラーの思想にはきたる「千年帝国」のためにソ連の国土を植民地にするというのもあった

    戦争と地形 フランスは道路が舗装されており、侵攻が容易であったが、ソ連の土地は荒れており、鉄道の軌間も異なっていたこともあり計画通りに戦争を進められなかった

    不完全な計画 ソ連の戦力をあまりにも軽く見た計画(首都の陥落とソ連側の重要な燃料拠点の同時攻略等)を立て、兵站が不足する自体に陥った。その影響でドイツ軍による村落の収奪が始まり、多くのパルチザンを生むことになった。(同志少女の最初のシーンが思い出される)
    表面上は勝利しているように見えても、その実全く計画通りには行っておらず、「空虚な勝利」であった。

    ドイツの戦争の発端 ヒトラーの独裁が戦争を招いたのか?否、ドイツ国民の総意である。これには以下の要素が挙げられる。
    ・ゲルマン民族至上主義
    ユダヤ人、社会主義者、精神病者を劣等者とすることでナチズムの政策に固有の原動力を与えた。
    ・ドイツ国民重視の内政
    国民の不満を高めない為に軍備拡張の財源を税金に求めるのではなく、帝国主義的な収奪を行うことで解決を図ろうとした。

    三つの戦争 
    「収奪戦争」 対ソ戦前から「収奪戦争」の傾向はあった。その行為の根幹には人種差別の思想があった。奪われたのは物資だけではなく、五体満足のソ連軍の男子を徴兵さえもした。

    「通常戦争」 捕虜取り扱いにおける戦時国際法の遵守や非戦闘員の保護等

    「世界観戦争(絶滅戦争)」 敵と見なした者の絶滅を追求する「絶滅戦争」の意味を持つ。「出動部隊(アインザックグルッペ)」はその象徴的な存在がであり、将来ドイツの障害となるであろう存在(ユダヤ人、ボリシェヴィキ等)を殺戮する役割を持っている。
    だが、「世界観戦争」という存在には弱点があった。世界観の維持の為に「軍事的合理性」という通常戦争が持つ特性を捨てなければならない為、「退却」という選択肢は無いに等しかった。(体制の動揺を防ぐため)
    ソ連側にも「大祖国戦争」という標榜、「ファシストの侵略者」に打ち勝つため(その他いろいろ)という思想が生まれたことで対独戦の正当性が付与され、世界観が構築された。

    最終的には、戦況の悪化ととも「世界観戦争」「収奪戦争」が「通常戦争」を飲み込み、「絶対戦争」となった。
    p220

    スターリンやらかし集
    ・緒戦の敗因を将校に帰し、粛清祭り。
    ・独ソ戦前に行われた大粛清によって軍部が急激に弱体化していた。
    ・ドイツが攻めてくるという情報があったにも関わらず情報を無視して防衛体制を築かなかった。
    ・ドイツ軍の軍人が乗っていた偵察機を撃ち落としてドイツ軍側の作戦計画がソ連側に漏洩したにも関わらず、スターリンは敵の工作だと信じ込んであてにしなかった。

    ヒトラーやらかし集
    ・杜撰な計画の遂行(ナチ側全員の責任でもあるが、ソ連を舐めた、首都と燃料拠点の陥落を求めたのはヒトラーである)
    ・偶然の勝利をきっかけにした自信過剰による軍部首脳部の軍人の解雇。敗北の責任を司令官に帰して辞めさせ、ヒトラー自身が司令官となった。

    「これ以上の後退は、諸君の破滅を意味し、しかも、それは祖国の破滅につながる。[中略] 一歩も退くな! これが、我らの主たるスローガンでなければならぬ。ほんの一メートル ほどであろうともソ連領土であれば、ただの一区画であろうともソ連の地ならば、おのおのの持ち場を、血の最後の一滴が流されるまで、可能な限り長期間にわたり、断固として 守り抜くことが要求されるのだ。」
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    投稿日:2023.10.25

  • 月猫夕霧

    月猫夕霧

    ソ連もドイツも指導者が戦略でなく作戦レベルで口を出すし、口を出すときの判断基準がイデオロギーだし、妙に過信して墓穴を掘るし……。似た者同士が正反対のイデオロギーを振りかざして被害を拡大させたのが良く判ります。
    あと軍人の作戦判断は妥当なものが多いと思いましたが、優勢な時は楽観視をしてしまいがちで、劣勢になると無理をして墓穴を掘るのは洋の東西を問いませんね(と、同じ時期の東の方を見ながら思う次第)
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    投稿日:2023.10.19

  • 鈴木 高志

    鈴木 高志

    人類史上、凄惨を極めた独ソ戦の様子を、時系列に淡々と描く。

    一般には知られていない独ソ戦を学ぶには最適な一冊。

    投稿日:2023.10.06

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