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安部龍太郎 / 集英社文庫 (4件のレビュー)
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林田力
南北朝時代の新田義貞を主人公とした歴史小説。本書の義貞は爽快感があり、物語の主人公らしさがる。義貞は六波羅探題によって冤罪で投獄される。冤罪が明らかになると「探題さま、検断さま、それに俺を連行した石見…彦三郎という方にわびを入れてもらいましょう」「人の言い分を何ひとつ聞かずにこんな仕打ちをされて、黙って引き下がれるか」と主張する(94頁)。冤罪を有耶無耶にしがちな日本社会で義貞の台詞は輝いている。 私は義貞にはパッとしないイメージを持っていた。皇国史観では忠臣・ヒーローと持て囃されたが、逆に皇国史観が否定されて久しい。吉川英治『私本太平記』のイメージが強い。同じ源氏一門の足利氏に対抗意識を抱いているが、足利氏は歯牙にもかけていないほど差がある。同じ南朝の忠臣とされる楠木正成は後醍醐天皇の政治に批判的視点も持つように描かれることが多い。これに対して義貞がそのように描かれることは乏しい。続きを読む
投稿日:2022.11.05
yohei89
新しい新田義貞像の提案だった。鎌倉幕府倒幕の立役者なのに、楠木正成に比べいつも扱いが悪い。 自分の義に忠実な義貞だ。
投稿日:2022.01.08
シップ
群馬県太田市に縁があったので、その出身者である新田義貞について読んでみた。 太平記物では、主要な登場人物だが、楠木正成や足利尊氏とは違って主人公にはならない人物。それを主人公に据えた作品とあってどのよ…うな内容かと読み進めていったが、やはり新田義貞を主人公にストーリーを進めるのは、やや展開に物足りなさを感じてしまう。 解説にあるような快男児として描くより、悲劇のヒーローとして描く方が小説的には面白くなるのかもしれない。続きを読む
投稿日:2019.11.08
DJ Charlie
同じ作者による『太平記』の時代を背景とした物語『婆娑羅太平記 道誉と正成』を読了して日が浅かったので、視掛けた本書に思わず手が伸びた。出逢って善かった!愉しく読了したところである。 例えば『婆娑羅太平…記 道誉と正成』の佐々木道誉は、商業、流通のような分野に関与して蓄えた資金力を背景に、様々な情報を持って謀略も厭わなかった人物として描かれていたと思うが、本作の新田義貞は少し違う。時代の変化に苦慮しながらも「ありたい」を貫こうとした、「古き善き武士団の棟梁」という感で、「愛されるべき快男児」というように描かれる。実に気持ちの好い男なのだ… 複雑怪奇な展開の“政治”の下、荒廃も見受けられるような状況にも拘らず「ありたい」を貫く快男児…そんな男と出会える物語が非常に愉しかった!!或いは…「かくありたい」と、何となく思う一面も否定し悪い。続きを読む
投稿日:2019.11.01
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