【感想】日本人の法意識

川島武宜 / 岩波新書
(35件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
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ブクログレビュー

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  • 夜田わけい

    夜田わけい

    明治期に10年足らずで急いで西洋由来で形成された法は、西洋的な法意識とは異なっていて、日本人の生活の実態とかけ離れていた。権利や裁判という基本的な概念さえ、西洋人の意識や感覚とは異なっている、というのが趣旨。前半は読みやすく後半で具体例を説明する感じだが、今日の日本人の感覚を考えても全く古びないところがすごい本。

    西洋的な文書文化ではなくて、契約書も必要なときに話し合って解決しようとしたり、和の精神を大事にしようとしたりするのが日本人で、西洋的な厳格さが言語のレベルで日本人と違うというところも論点にあって、とても興味深い。
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    投稿日:2023.12.29

  • 1397195番目の読書家

    1397195番目の読書家

    第1章は言い回しが読みづらいのですが、第2章以降だんだん読みやすくなってきます。

    第2章~第4章は、権利、所有権、契約について扱っています。
    西洋的な権利義務関係では、権利の有無をはっきりさせて、裁判で白黒付けようとします。
    この点、日本の法律は西洋に倣っているため、法文上は西洋と同じです。
    しかし、前近代的な権力関係から引き継がれた法意識が、権利を内容不確定・未確定なものとして扱おうとするため、実際の運用においては法文とのズレが生じてしまう。

    1967年刊行の本なので、現代よりも前近代的な法意識を前提としています。
    とはいえ、何か争いがあって落とし所を探すとき、本書にいうような法意識を幾分用いているときもあるので、全く無用というわけでもない。
    むしろ、自分の考え方のルーツを分類するのに、役に立つかもしれません。

    第5章は、民事訴訟とりわけ調停の話。
    民事訴訟法を勉強する際に調停についても習うわけですが、民事訴訟法自体が眠くなりがちなのに、調停はなおさら興味を持てなかった記憶があります。
    それは訴訟自体よく分からないのに、調停はもっとよく分からないからで。
    本書では、この調停について戦前からの来歴を学ぶ上ことができるので、社会学寄りな視点で興味を持つことができるようになると思います。
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    投稿日:2023.08.13

  • よしだ

    よしだ

    例示を厚く記載してくれているので、とても読みやすい本だった。
    集団の和を重視し法を曖昧にゆとりを持って解釈しようとする日本の法意識と、個人の権利を重視し法を明確・厳格に解釈しようとする欧米の法意識の差異がよく分かった。
    現代法の概念は欧米で生まれたものなので、欧米の法意識の方が適切に思える一方で、曖昧さやゆとりを持つ日本の法意識から生じているメリットも間違いなくあるのではないかなと思う(自身の仮説ではあるけれど、日本の犯罪率の低さの要因の一つもここにあるのではないかなと思う)。
    必要な場面(特に国際的なビジネスの場面など)では、信頼獲得などのために法意識を変えていく必要があるとは思う一方、日本人同士の争いについてまでも西欧のような法意識への転換を図る必要はないよなと思った。
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    投稿日:2023.04.20

  • いっくん

    いっくん

    法学者にとって必読だと言われていたので読んだ。

    日本人の法意識は外国のそれとは違う。その文化的背景に触れつつ、日本人にとってふさわしい紛争解決手段について述べられている。

    確かに、私たちは道徳的な観点から法律と疎遠になることが多い。しかし、その事に漬け込んで、日本人の価値観が介入できないように細かく定められた法律もある。それは日本人の特性を無視したものである。それはまた、法律制定者の利益にのみとらわれてしまっている。個人的には、権利義務の話が面白かった。日本人には、その意識が薄い。
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    投稿日:2022.06.26

  • やまたく

    やまたく

    日本人の法意識

    これまで70刷を誇る名著。大学時代からの積読で常々読みたいと思っていたが、なかなか読む機会がなく、やっと読むことができた。
    日本は開国以降、不平等条約改正のため、近代国家として当時の列強諸国に認められる必要があった。日本における法制度は、土着的なルールから端を発するものではなく、近代化の要請において、急速に取り入れられたものである。そのような歴史的は背景から、日本人を語るうえで、法制度を仔細につまびらかにする以前に、日本人がそもそも持っている法というものへの意識を考察することが、第一義ではないかという問題意識をもとに、所有権や契約などの考え方について、西洋的な法の概念と日本における法意識を対比して述べられていく。
     まず、そもそも、法の言葉というものは元来確定的・固定的であり、一義的にとらえられる必要があるが、そもそも日本語の言語体系として「明確に限界づけられた意味内容を伝達するのではなく、伝達使用する内容の中の中心的な部分を表明することばを用いることにより、それに伴う他の種々の意味内容はそのことばによって示唆され、その結果伝達される意味内容の周辺は不確実なものとなり、伝達の受け手によって変化しうる」ものである。これをして日本語の含蓄という場合もある。
    日本における法の言語が不確定的かつ流動的であると同時に、日本人のルールに対する意識も当初の西洋的な法意識とは異なる。日本人は理想と現実についての境界をそれほど厳密にとらえていない。法が現実にあっていない場合、現実へのなしくずし的な妥協が公然と行われ、もはやそれをもって融通が利くという美徳になっている部分がある。
    根本として、日本人は権利と権力に対する誤認識がある。本来、権力はもともと立場の強い人間が持つ、他者への強制力であり、権利とは権力に対抗するために、立場の弱い人間が持つ力である。権利に対してなしくずし的に妥協にしてしまえば、元の立場の強弱が支配している空間に逆戻りしてしまう。ゆえに、西洋においては一度得た権利を、権利を得た側がなし崩し的に妥協するということは絶対にない。しかしながら、日本では権利と権力はしばしば混同され、同一視すらされている場合がある。典型的な例が、雇用における権利である。従業員を雇っている人(≒社長、役員)は従業員に対して、権力を持っている。一方、従業員は社長や役員に対して権利を持っているのである。日本における雇用概念もまた、丁稚奉公のような形より始まっており、従業員の権利意識は極めて低い。具体的な例も出したが、このように、日本における権利意識や法への意識というものは、法や権利を最初に定義されたときのような切迫感などはまるでなく、極めて曖昧にとらえられている。
    こうした考え方が、しばしば政治意識にもむずびつく、日本人は政治行動においても従順すぎる。未だに、政府のことを「お上」と言う人がいるが、これは政府に対して、我々が選挙で選び、そしていつでも政府に対して抗議し、変えることができるという意識の欠如を明確に物語っている。
    日本人の法意識を物語る最たるものは契約意識である。日本人は契約に関しても、もはやネガティブなイメージすらある。のらりくらりと関係性を保つことを美徳として考え、契約書面を取り交わしたいというだけで不機嫌になる人もいる。さらに、仮に契約を締結したとしても、契約を軽視した言動もすくなくない。「それは契約上の話であって、実際には、、」と言う文句はしばしば使われるが、この言葉が日本人の契約観を如実に物語っているだろう。さらに、日本人は契約を軽視することと表裏一体であり、契約以上のことを当然の如く期待している場合がある。こちらも非常に奇妙なことであり、契約になくてもやってもらって当たり前と考えている次元があることは、日本人の特色であるだろう。

    上記の法意識に関する考察は、私のように保険を扱う者であれば強く共感する部分があるのではないか。保険は万能であり、保険はお守りであるという感覚は、実際には一般的である。ただ、保険は何よりもまず契約であるがゆえに、保険契約にない場合の事故や事象には保険金は払われない。これは保険募集人の説明不足の問題も実際にはあるが、保険金支払いで揉めるのは基本的に上記のような契約意識が契約者側に極めて希薄だからである。さらに、よく地場代理店などでは、保険会社に対して「融通が利く」ことを求める傾向にある。法への意識をなし崩し的に考えているからこその姿勢である。昨今では、海外ともやり取りも増えたが、日本人が契約締結後、特に事故時にネゴシエーションするのに対して、当たり前ではあるが、海外は契約締結前の最もネゴシエーションする。いかに権利を守り、有利に契約するかということを極めて重視する。だからこそ、一度契約が成立すれば、契約は絶対に守る。この契約を遵守するという意識が全く異なるのである。一方、これも重要な点であるが、彼らは契約を守ると同時に、契約の範疇以外であれば言葉通り「なんでもやる」。ここが怖いところでもある。
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    投稿日:2021.07.10

  • 波瀬龍

    波瀬龍

    【由来】


    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】

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    投稿日:2018.10.28

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