【感想】明智光秀 牢人医師はなぜ謀反人となったか

早島大祐 / NHK出版
(4件のレビュー)

総合評価:

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  • yasz

    yasz

    今年(令和二年)の大河ドラマの主人公は明智光秀ですね。彼の研究が進み、謎めいていた彼の若かった頃の様子が明らかになりつつある様です。

    織田信長の家臣の中で、秀吉と並んで筆頭であった彼が、自分を引き立ててくれた信長をなぜ討つ必要があったのか、いまだに私にとっては謎があります。今回読んだ本の類書を読むことで、彼が決断したり理由を私なりに見つけていこうと思いました。

    以下は気になったポイントです。

    ・在村医の第一世代は、牢人上がりが在村医になった17世紀、18世紀になって医者を村が自前で出せる様になったとされる。しかしそれ以前の16世紀も、牢人上がりが、地域の医療の一翼を担っていたと判断するのが妥当である(p51)

    ・足利義昭麾下担って最初に獲得した所領は、年に300万円程度の収入が見込まれる所領であった、その前提は、一石=500文=30貫=300万円で、永禄十三年当時の相場から計算(p64)

    ・愛宕神社にあった勝軍地蔵は15世紀以来、軍神として足利家を筆頭に武家からの信仰を集めて、それと合わせて愛宕権現信仰も16世紀に流布されていた(p75)

    ・天正三年の夏の時点で織田政権が大量の人員動員を可能にしていた事実が明らかになる、この要因として天正二年以来に進められていた道路整備事業がある、これは当時から見れば常識はずれの企てであった(p99)同様に、規格の統一という発想も斬新であった(p175)

    ・天正四年には、息子信忠には尾張・美濃を与え、かつて光秀が有していた洛中土子銭も、信長の娘に与えられた、武将たちと前線に立たせて酷使する一方で、その内側にある整備の済んだ領地は一族に与えていた。織田家中の武将たちはこの時代としては未曾有の距離の行軍を強いられる様になっていた(p189)

    ・山崎の合戦にて、伊勢貞興を筆頭とする伊勢家家臣の多くも戦場で討ち死にしており、ここに室町幕府官僚の系譜を引く人々が歴史の舞台から消すことになり、人材の上からも中世は終わりを迎えた、光秀は自身が継承した統治のための人材は秀吉に渡さず道連れにした、なので全く新しい家柄から秀吉政権の完了集団が登用されて行った(p194)

    2020年12月31日作成
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    投稿日:2020.12.31

  • sueone

    sueone

    今年の大河ドラマの主人公、明智光秀について、牢人医師、早口など新たな人物像を提示している。これまであまりみたことのない資料を根拠に示しているところが興味深い。

    投稿日:2020.06.24

  • 芳梅

    芳梅

    ○目次
    まえがき
    序章:新時代の子供たち
    第一部 明智光秀の原点
    第1章:足利義昭の足軽衆となる
    第2章:称念寺門前の牢人医師
    第3章:行政官として頭角を現す
    第4章:延暦寺焼き討ちと坂本城
    第二部 文官から武官へ
    第5章:織田家中における活躍
    第6章:信長の推挙で惟任日向守へ
    第7章:丹波攻めでの挫折
    第8章:興福寺僧が見た光秀
    第三部 謀反人への道
    第9章:丹波制圧で期待に応える
    第10章:領国統治レースの実態
    第11章:本能寺の変へ
    終章:明智光秀と豊臣秀吉
    あとがき

    ○感想
    明智光秀を史料を通して見たとき、様々な側面で、光秀個人や織田政権の構造の実態を垣間見ることができた。

    本書で学び得たものは多いが、特に興味深い織田政権の実態でいえば、光秀のような義昭麾下の足軽衆や朝山乗全、木下秀吉などの中途採用組が運営していたことから、在地でのトラブルが起きたり、慢性的な人材不足からの労働過多が起きていたこと。
    また一方で、光秀は、室町幕府の政所執事を務めた伊勢家などの旧幕臣などの能吏を自下に組み込み、後半な任国統治の運営・支配に当たるスペックを持っていたこと。
    織田政権は、こうした光秀ら多様な家臣に対象さし、明確な指示ではなく、大きな基本方針を示すに留まり、家臣はその基本方針に忖度して臨むことで忠節を示すという、前近世的な政権運営であったこと、など興味深い点は多々あった。

    本書は上記のような事柄だけでなく、光秀の動きを丹念におった時系列確認用としても使えるので、是非オススメしたい。
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    投稿日:2020.05.15

  • ヤマスカ

    ヤマスカ

    麒麟がくるがものすごく面白いので、関連本を読んでいるうちにたどり着いた本の一冊。

    ミーハーなもので、中高の知識もすっかり抜け落ちた上に、これまで戦国時代にさして興味もなかったうえに、最近読んだ戦国ものがへうげものだったおかげで、大した印象もなかった光秀のことが、帯にある通り、まさに「勝者が作る」歴史書や伝記などではなく、当時の書簡や存在にびっくりした「裁判記録」などによって実証的に光秀像を浮かび上がらせてくれた。

    ドラマや最近の各局の関連番組で作り上げられる「心優しき名君」とか、ちらっとみたルイスフロイスの「腹黒い謀略家」とも違う、生々しい光秀像を得られた気がする。

    何より驚いたんは、「光秀には信長の側室になった妹がいた」という点で、この妹の存在と、その死が光秀を最終的に謀反に導いたんだろうなぁ、という感じで。この妹が大河にはまだ出ていないから、お駒さんが養子になるのかなぁ、などと思った。

    加えて、いろいろ過剰評価、逆ハリの過小評価も極端な信長の実際の革新性、そして問題点も浮かび上がってきていて、目から鱗が何枚も落ちてしまった。

    本能寺の変の実際は、信長が推進した領国内の街道整備と、それが下支えする拡大政策、さらに平定された勢力圏内での一族優遇、という革新性と守旧的な政策に、最前線で東から西へ奔走しなければならないうえに、妹を失って家的な繋がりがなくなり、「検地よりも指出」なシステムによる統治を優先する光秀が家臣団の中であまり良い立場をもてずに、焦りと疲れから、という感じなんだろうかなぁ。
    悪辣な魔王を成敗、というよりは、他の家臣もわかってくれるやろてきな発作的な行動で、結局人心掌握がうまくなくて失敗したんだろうなぁ。

    いやー、面白い本だった。
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    投稿日:2020.05.07

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