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マルク・レビンソン, 村井 章子 / 日経BP (70件のレビュー)
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総合評価:
ABAKAHEMP
否応なく放り込まれた競争の荒波
読んでて遠い目になるというか、何とも途方もないスケールで、マラッカマックスという世界最大のコンテナ船になると、全長400m・幅60m・喫水18mの鋼鉄の塊が海に浮かんでるそうな。 とてもじゃないが想…像を超えているし、ちょいちょい映像があればもっと楽しめるだろうなと感じる部分があって、BS海外ドキュメンタリーかディスカバリー・チャンネルにないか探してみたい。 こんな船が万一沈没したら20億ドルものの損害らしくエゲつないよな。 "じゃあ、コンテナの中身は何?"というと、実は世界の海を運ばれるコンテナの約20%は空だったりする。 残り8割のコンテナにしても、その中身は完成品なんてほとんど入っていない。 バービー人形の髪の毛だったり、ネジやレバーだったりと、次の処理を必要とする仕掛品がほとんどらしく、開封してもガッカリするだけかもしれない。 ただ、開けてみるまで何も分からないという意味では、コンテナは「核物質、麻薬、テロ用の爆弾から不法移民にいたるまで、不正な品物を忍び込ませる格好の手段」になっているとも言える。 将来、ニュートリノ探知機が配備されて鋼鉄の中までスキャンできる新技術が開発されるまでは、書類上の確認だけで済ませるしかない。 全長がサッカーコートを何面も並べたよりも長い、フルコンテナ船に乗船している人数は、驚くほど少ない。 人件費という点では、乗組員だけでなく、港湾労働者にかかる費用も激減した。 盗難や破損も少ないから保険料も安くなったし、その他諸々の費用も切り詰められた。 コンテナの導入で、この荷役コストが大幅に削減されたにもかかわらず、実は当初、輸送コスト全体の大幅削減にはつながらなかった。 なぜかというと、コンテナ輸送のカギを握るのは、量だからである。 量が多ければ多いほど、1個当たりの輸送コストは下がる。 貨物がいっぱいに詰まった35トン・コンテナ1個の運賃は、「ファーストクラスの航空券1枚よりも安い」のだが、大型コンテナをいっぱいにするだけの貨物はなかなか集まらなかった。1960年代のほとんどのメーカーは、コンテナをいっぱいにできるような生産方式をとっておらず、だいたいは注文を受けてから生産し、そのたびに送るというやり方だった。このように、コンテナのメリットや可能性を生かす態勢が、海運業者だけでなく輸送業界全体、ひいては荷主まで含めて、整備されるまではずいぶんと時間がかかったのである。 「荷主が出荷する段階でコンテナをいっぱいにし、そのまま荷受人の元まで運ばれてはじめて経済効果が最大化される」のだ。 ただ大きな箱を船に詰め込んだだけでは、ほとんど意味がない。 海運輸送だけでなく、内陸輸送のコストも合わせて引き下がらないと駄目で、そういう意味で、港・船・クレーン・倉庫・トラック・鉄道など、すべての要素が変わらなければ輸送コストの圧縮につながらなかった。 「コンテナリゼーションはシステムである。コンテナの全面活用を念頭において設計されたロジスティクス・システムで使われてはじめて、効果は最大化される」 コンテナリゼーションは世界経済を様変わりさせた。 ただの「箱」が国際貿易量の増加に果たした役割は徒法もなく大きいし、地理的条件の意味合いも一変させている。 輸送費が取るに足らないコストとなると、サプライチェーンはいくら延びてもかまわないことになる。 積出港は必ずしも人口が多く、後背の工場と近接している必要はなくなった。 地理的条件に縛られなければ、コストは安い方がいいに決まっている。 アジア各国が「世界の工場」となった理由もここにあった。 ただ、人件費が安いのはアジアだけではない。 なぜアフリカやその他で繁栄しなかったのか? この答えも、コンテナリゼーションが地理に与えたもう1つの影響にある。 というのも、荷主の立地によって、輸送コストが大幅に下がる場合と、そうでない場合が出てきたのだ。 内陸で経済規模が小さくコンテナ輸送に見合うだけの輸送需要を持たない地域は、混載貨物時代よりも厳しい状況に追い込まれようになった。 また、港湾の近代化を怠った所も、貿易量が減るだけでなく、主要港から外され、2流の扱いを受け、ひいてはすべてのものが割高についてくる。 ただの箱が、一国の経済をグローバル・サプライチェーンに結ぶ媒介役を果たしているのである。続きを読む
投稿日:2022.08.19
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netakayukism
コンテナについてほとんど全てのことがわかる本。コンテナのことはわかったんでもういいです〜ってなるぐらいの情報量なので、少し物流や貿易をかじりました程度の人にとってはボリューム的に若干苦痛かも。ただこれ…って日本のことを考えるきっかけにはなっていて、港で見かけるどでかいコンテナをJR貨物に積み替える作業ってどこでやってんだろうね?それとも基本はトラック?ググったりYouTubeだったり調べればそこら辺いくらでも分かるだろうから、知的好奇心がある人の知りたい欲をかきたてる一冊には間違いなくなると思う。あと港町特有の気性の荒さの理由が少しわかった気がする続きを読む
投稿日:2024.03.22
ひーちゃん
コンテナがシームレスに運ばれること、規格化に伴い大量に輸送できることで、世界的なサプライチェーンを可能にしたんだね。
投稿日:2024.03.12
echigonojizake
示唆深い本でした。イノベーションがいかに生まれ、抵抗する既存勢力と向き合い、政府や顧客の支持を取り付けてルールをつくり、新しい市場を切り拓いていくのかの様々なエッセンスが詰まったとても読み応えのある内…容ですね。 コンテナというシンプルに思えるものが、グローバリゼーションを一気に加速させて産業史、我々の生活を大きく変えたことがとてもわかりやすく、データも交えて示されています。 この本の主人公といえるマルコム・マクリーンの人間模様を描いたドラマとして充分楽しめます。日本の高度経済成長もコンテナのグローバル化に寄与し、さらに日本の成長にもドライブがかかったという相乗効果もよくわかる。 構成もよかったなあ。 続きを読む
投稿日:2024.03.02
たくや
コンテナが普及していく過程と影響の一端を知ることが出来て勉強になった。 トラック運送会社、鉄道会社や船会社などを巻き込んだコンテナの導入・規格化は世界の物流を効率化させ、結果的にグローバル化を推し進…めた。 港での荷揚荷卸をはじめとした物流費用が低下したことで、企業にとっては生産地と消費地の距離という制約から自由になり、労務費の低い場所でモノを製造することがトータルコストを押し下げることとなった。続きを読む
投稿日:2024.02.09
オーク
読了。コンテナの導入によるグローバルなサプライチェーン革命の話は刺激的だ。かつて在来船が主流の時代は輸送効率、荷役効率が悪く、企業の生産拠点も港の近くに設置せざるを得なかった。コンテナの導入により、生…産に必要な部材の調達が低コストかつ計画的に行うことができるようになり、生産拠点は港から離れた、土地や税金が安い場所へと移ることも可能となった。在来船の頃は航海中のコストよりも、埠頭に到着している間に発生する荷役等のコストの方が全体の大半を占めたそうだ。コンテナ化によって荷役のスピードは格段に上がり、品質も担保され盗難の恐れもなくなった。そして大幅なコスト削減が実現した。当然ながらコンテナ導入時には沖仲仕や労働組合の猛反発があったそうだが、時代の流れには逆らうことができない。コンテナ化によって誰も想像できなかったレベルでの港湾の合理化が進み、かつて沖仲仕、港湾労働者で溢れていた港から人々が去り、今では最新鋭の設備とコンピュータシステムによる荷役作業が主流となってきている。続きを読む
投稿日:2023.12.17
kai
コンテナ内の点検はむずい →麻薬とか爆弾とか移民とか運べちゃう 1.輸送技術の進化 2.イノベーションの重要性 今日重要なのは →イノベーションに、よって資本や労働者をどれほど効率的に使い、より…多くのものやサービスを生み出せるか」 →イノベーションは最終的に最も適した用途に応用されるにしても、初期段階ではうまく適用できないことが多い →→新技術は最初金にならない 発明の経済効果を生み出すもの →発明そのものではなく、それを実用化するイノベーション →組織や制度の変革 →→エジソンが電球を発明して20年後でも一般家庭での普及率は3%だった ■埠頭 サンフランシスコ、モントリーオール、ハンブルク、ロンドン、リオデジャネイロ、ブエノスアイレス 一航海にかかる総費用の半分は沖仲仕への賃金だった →人力だからダメ続きを読む
投稿日:2023.11.29
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