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田中克彦 / 岩波新書 (35件のレビュー)
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総合評価:
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koba-book2011
▼素晴らしい本です。馬鹿を承知で煎じ詰めると、方言がことばであり、文法とか正誤など些事であり、そこにヒトの愛着と歴史があり、国家なんぞ超えた普遍の価値がある。国家は国家のために言語にマルバツをつけてレ…ッテルを貼るが、それはそれそのように理解せねばあかんぞな、というような。 ▼(引用)人の精神には弱いところがあって、何かきちんとした数字が示され、それが教科書などに印刷されると、やっと落ちついた気分になって安心できるというところがある。 ▼(引用)言語とは、それを構成するさまざまな諸方言をまとめて、その上に超越的に君臨する一種の超方言とする考え方である。それは頭のなかだけで描き得るきわめて抽象的なものであるから、誰にも話されていない、いわば日本語という名と、それについての観念とだけがある抽象言語とも言えよう。したがって言語とは、多かれ少なかれ頭のなかだけのつくりものである。別の言いかたをすれば、言語は方言を前提とし、また方言においてのみ存在する。それに対して方言は、言語に先立って存在する、よそ行きではない、からだから剝がすことのできない、具体的で土着的なことばである。それが観念のなかのことばではないという意味において、首都で話されている日常のことばは、厳密な言いかたをすれば、極度に観念のなかの標準型に近づけられた首都方言である。 ▼スカして言えば、「そうに決まってるやんか」ですが、それをねっとりと情熱プラス実証で語る本書は、時を超えて残したい名著です。しかも平易です。たれでも読めます。 続きを読む
投稿日:2024.01.21
司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)
「ぼくたちは国家の中で生まれ育つので、よほど意識しないと、取り立てて「国家とは何か」を案が得ることは無い。しかし、非日常的な空間でそれが呼び覚まされる時がある。例えばワールドカップやオリンピックでは「…日本」を「日本人」として応援したりする。旅行や違う文化に触れた時も自分が「日本人」として生きていることを実感したりする。 ・「国民国家」とは、今から200年のヨーロッパにおいて、特にフランス革命とナポレオンの時代に「方言」ではなく標準語を話すよう強制され、それによって自分たちは同じ「民族」であるという考えが形成され始めた。このように、排他的な領土を持った上で、理念上は一つの民族が、一つの言葉を持ち、一つの文化、一つの宗教、一つの歴史を共有すると信じるようになった国家のことをいう。 ・「国民国家」建設に成功すれば、政治的にも経済的にも、そして軍事的にも中央集権化が進むので、他国との競争は有利に働く。しかし同時にそれは、国内の少数民族など「マイノリティ(少数派)」に対して同化の権力を加え、非寛大な社会を構築することにもなった。」 (『世界史読書案内』津野田興一著の紹介より) 「だれしも母を選ぶことができないように、生まれてくる子どもにはことばを選ぶ権利はない。その母語が、あるものは野卑な方言とされ、あるいは権威ある国家語とされるのはなぜか。国家語成立の過程で作り出されることばの差別の諸相を明らかにし、ユダヤ人や植民地住民など、無国籍の雑種言語を母語とする人びとのたたかいを描き出す。」 目次 1 「一つのことば」とは何か 2 母語の発見 3 俗語が文法を所有する 4 フランス革命と言語 5 母語から国家語へ 6 国語愛と外来語 7 純粋言語と雑種言語 8 国家をこえるイディシュ語 9 ピジン語・クレオール語の挑戦続きを読む
投稿日:2023.08.15
町田
ことばがどうやって生まれるかを考えたことがなかった。あらゆる言語はピジンであることに気付き、驚いた。言語学の奥の深さを感じた。
投稿日:2023.03.17
echigonojizake
国語、国家語、母語、母国語、方言、俗語ーー。これらの意味の違いを明確に言える人はどれだけいるのだろうか。ラテン語とラテン系諸語にも明確に線引きができるという。 「イディオム(固有語)という語は、一社…会固有の特徴を反映するものときての言語をすこぶる適切に示す」ーー。こうしたソシュールのことばをベースにしつつ、言葉の持つ意味を多義的にとらえられる名著。日本という国にいるとなかなか感じない視点でもあるが、アイヌ人や在日朝鮮人の話にも通じる。40年前の本とは思えないほど新鮮だった。続きを読む
投稿日:2022.10.31
masaaki.oyabu
“ことば”というものを“国家”との関係性で見つめることが無かったの自分に愚かさを感じさせられた。 “母語”はそこに暮らす“なかま”たちのコミュニケーションのための必然として生まれてきたものであり、…それがそのなかまたち(民族)の文化を作り上げ継承してきたものなのだから、それを奪われたり、他の“ことば”を強要されることは、その断絶を意味することなのだ。だから、地域紛争は複雑で国家が操る政治で決着をつけようとすると必ず拗れることになる。 単一民族の日本人だからこのことを知らなかったのは仕方がないと、言い訳がましい言い訳を考えていたが、アイヌ、そして琉球で起きた“日本語”への統制の歴史を知らされ、彼等の嘆きを想像すると、 またしても、“国家”というものへの不信感を強め、それらにも思いが至らなかった自分の歴史観に愚かさを抱いた。 良書。見えなかった視点をくれた。続きを読む
投稿日:2021.12.10
submarine7235
情熱的社会言語学入門書。概して入門書といえば基本事項をわかりやすく満遍なく抑えたものというイメージがあり、またそのようなものが求められがちだ。本書では時折、感情的な意見が客観性を欠いたかのように映る。…しかし読み進めていけば言語の本質を真剣に追求した人間の息遣いに他ならないことに気づく。社会言語学のエッセンスもしっかり抑えられる。続きを読む
投稿日:2018.03.12
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