【感想】失われた過去と未来の犯罪

小林泰三 / 角川文庫
(20件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • nekommi

    nekommi

    このレビューはネタバレを含みます

    あることがきっかけで新しく記憶が出来なくなって、外部記憶装置を使うようになった世界の話。

    最後の展開はあまり飲み込めなかったけれど、「死」について考えさせられた。

    他人の記憶を体験するのは三雲岳斗先生の「忘られのリメメント」を思い出した。
    メモリの挿入で時間が飛ぶのにはAppleTVの「セヴェランス」を思い出した。

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    投稿日:2023.07.16

  • グンジョ

    グンジョ

    これ面白かった。
    人類は突然長期記憶を失ってしまう。記憶を失くしていく人類はその状況になんとか気づき、対応していく第一章から、長期記憶を失った人類が外部記憶装置(メモリ)を当たり前に使う世界での人々の群像劇である第二章へと続く。
    その人の人生の記憶データを蓄積したメモリは、その人本人なのか?まるで魂のように、メモリは他人の肉体などに挿入され、物語は展開し、魂とは?現実とは?といった宗教的な疑問を呈する。
    長期記憶を失った人類、という設定を現実的な世界観まで掘り下げたSF作品。作家の想像力に脱帽。SFのどんな設定だろうが、実際の現実だろうが、ちゃんと掘り下げたら、行き着く場所は同じなのかもしれないと思わされた程。テーマは壮大なのに、ストーリーや登場人物は身近で等身大。会話文多めで読みやすく一気に読了してしまった。
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    投稿日:2023.05.19

  • りーり

    りーり

    突如訪れた「大忘却」によって人類は新たな情報の記憶能力を失った。 覚えてられるのはごく最近の出来事である短期記憶と体に染み付いた手続き記憶だけ・・・。 遠くない未来、人間の記憶は体に埋め込む機械型のメモリーに委ねられた。 ここに一つのメモリーがある。 体は事故で失ってもう無い。 生きた人間にこのメモリーを挿し込めれば。 これは未来の犯罪の物語。

     小林泰三氏の「記憶」をテーマにしたSF作品。
    第一部にて人類が記憶能力を失った様子をパニック小説のように描いている。あくまで失ったのは「大忘却」以降の記憶能力で機械の操作などの手続き記憶やそれまでの人生での記憶は保持されていた。実際過去の記憶を完全に失っても言葉は話せるんだから本当に不思議である。ほとんどの人類が行動しては忘れてを繰り返す中、少しづつであるがこの驚異に立ち向かうものがいた。やがて人類は外部に取り付けたメモリーに記憶を蓄積することによって従来の生活を取り戻していく。
    第二部から物語が始まったと言って良い。メモリーという擬似的記憶装置にて新たな復活を遂げた人類とそれに併発する未来の犯罪の物語だ。今まで肉体に付従してきた記憶という概念が完全に肉体から切り離されたのである。しかしメモリー=命といって良いのになぜそんなに剥き出しで取外し可能なのだろう?普通誰にも見せなくないでしょ。
    小林氏らしいブラックなオチの付くSF、気に入ったら記憶破断者もおすすめだ。
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    投稿日:2023.01.04

  • 橘

    このレビューはネタバレを含みます

    色不異空、空不異色、色即是空、空即是色。本物と幻を区別する方法がないのなら、本物と幻は同じものだと考えるしかない…そんなめちゃくちゃな!(でも「阿・吽」で般若三蔵も「目に見えるものも記憶も全ては虚妄」って仰ってた…)
    人とは記憶なのか、魂とは記憶なのか。ある人の記憶を他者に入れたら、その人を定義するのは肉体に依るのか記憶に依るのか…これはだいたい記憶が勝っていました。記憶が永遠に失われないとしたら、人が死ぬことは無くなるのか。
    いやぁもの凄いですね…人類の記憶が10分しか保たなくなるパニックSFかと思いきや、人とは何かをじわじわ考えさせられ始める。数多の人々の記憶を取り込んで輪廻転生に近いものになった、とか。
    地球に浄土が爆誕してしまうラスト、そして「間違ったら何度でもやり直したらいい」の創世記。面白かったです。

    解説の終盤に深く頷きました。今の風潮では「(今すぐ)役に立つか立たないか」で役に立つ知識が尊ばれるけど、大事なのは今は役に立つかわからんけどいつかは役に立つかもしれない知識でも入れとく事だろうと思います。役に立つか立たないかなんてこの瞬間にも変化してるかもしれないのに。
    そう思い、今日も役に立たなそうな知識を蓄えながら生きていく訳です。一劫の長さとか今のところあの世でしか必要ない。

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    投稿日:2022.12.22

  • mui-mui

    mui-mui

    ある日突然全人類が10分程度しか記憶を保持できなくなる、というSFです。よくもこんなシチュエーションを思いつく。
    出会いがしらの人格の入れ替わりは使い古されたテーマですが、それをここまでSF的なロジックに落とし込んだ作品を私は見たことがありません。作中では言及されていませんが、外部メモリを悪用すると不死が実現しますね。続きを読む

    投稿日:2022.09.13

  • Anno

    Anno

    このレビューはネタバレを含みます

    人類が突然、記憶する能力を失ってしまった世界でのお話。
    当初はパニックに陥るものの、それから数十年後、記憶の外部記憶装置が完成し、人類はそれなくしては生きられなくなっていく……。

    記憶力を失い、肉体と記憶が切り離された世界で起こる様々な事件。記憶装置なく生きることを決めた人々、そして死者の外部記憶装置を挿入して“口寄せ”するイタコ。
    自己というものは何なのか、記憶や現実はどこまで信用できるのか。魂は一体どこにあるのか。
    新人類の創世神話ともいえるのかもしれない。
    色々なことを考えさせられる一冊です。

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    投稿日:2022.06.19

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