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梅原猛 / 岩波新書 (27件のレビュー)
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総合評価:
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Mkengar
これまでの科学技術文明が人類の生活水準を劇的に押し上げてきた反面、環境破壊を通じて地球への負荷も目に見えて大きくなっています。そのような中で本書では人類全体が指針とすべき新たな「哲学」として、天台思想…の「草木国土悉皆成仏」を挙げておられます。これは生きとし生けるものすべてが仏の本性を持っている、という仏教の思想の1つで、神道にもそのルーツをたどることができます。この本の大きな特長は、梅原氏が世界の様々な「哲学」と「草木国土悉皆成仏」思想を比較しその優劣を論じているところで、仏教でいうところの教判論だと思いました(注:様々な教えの違いを分析しその優劣を述べるのを仏教では教判と呼びます。例えば空海は「弁顕密二教論」という書の中で、密教と顕教というカテゴリーのもと、密教が優れていることを論じています)。その意味で本書は世界の哲学(思想)の教判書である、と認識しました。 このような哲学の教判書をかける人物は世界でもほとんどいないのではないでしょうか。さすがに梅原氏も、本書のタイトルを「序説」とした理由として、梅原氏自身が西洋哲学から離れてだいぶ年月が経っていること、よって西洋哲学の面での論述が不十分である点を挙げておられが、それでも非常に中身の濃い本だと感じました。大変勉強になりました。続きを読む
投稿日:2023.04.28
1440612番目の読書家
最澄に連なる比叡山中興の祖である良源は天台宗本覚思想を完成した。日本文化の本質を解く鍵はこれにある。本覚思想とは、草木国土悉皆成仏、一木一草のなかに大日如来が宿っているという思想である。本覚思想は鎌倉…仏教の共通の前提となっている。 さらに遡ると縄文文化に行き着く。縄文とアイヌには連続性があり、アイヌの貝塚思想は生きとし生けるものの再生を願うものである。 草木国土悉皆成仏、アミニズムは世界の原初的文化である狩猟採集文化共通の思想である。 デカルトは世界を変えるのではなく自分を変えろと考えた。これはストア派と類似する。アリストテレス以来自然とは神の意思の実現であるとされていた。デカルトは自然とは数学的公式により把握されるとした。ここにデカルトの偉大さがある。 ニーチェは血でもって書けと言った。頭でも情でもない、血である。自分に味方のないことを確認した後、勝ち誇る者に論争を挑め。ニーチェはデカルトの理性万能主義を否定して、最も重要なものは意志であるとした。 ハイデッガーはニーチェ研究に始まり実存主義哲学を創始した。死を自覚することで初めて自己が生まれるとした。のちにザインの哲学へ移行する。凶暴な意志が世界を支配しており、それに隠れた「存在」が重要とした。 世阿弥は鶯も蛙も歌を詠むと言った。草木思想である。 ソクラテスとプラトンは人間中心主義の祖である。人間中心主義、科学万能主義はいずれ裁きを受ける。続きを読む
投稿日:2022.06.01
Akiyoshi MIKI@BizFolio
西洋哲学が主流になったのは、その言葉による構成力だと思います。 しかし、世界には東洋をはじめ、色々な知恵が点在しています。 それらを統合して哲学を新しくしていく、それこそが人類哲学、多様化の時代の…哲学です。 本書はそのものでは有りませんが、読むとその姿をほんのりとイメージできます続きを読む
投稿日:2022.01.30
波瀬龍
【由来】 ・図書館の岩波アラートで 【期待したもの】 ・(図書館の本紹介文)日本には「草木国土悉皆成仏」という偉大な思想がある−。デカルト、ニーチェらを俎上に近代合理主義や人間中心主義が置き去りにし…てきたものを吟味し、持続可能な未来への可能性を日本の歴史のなかに見出す。 【要約】 ・「理性=人間」中心主義だったこれまでの西欧の思想潮流を批判的に概観し、日本の縄文文化やアイヌ文化の中にも見られる「草木国土悉皆成仏」に、これからの世界を担う哲学を見出す。 【ノート】 ・梅原猛という人の本を初めて読んだ。それまでは、何となく胡散臭さを感じていたのだが、本書を読んでも、やはり、そこここに胡散臭さや自己顕示欲を感じる。 ・が、デカルトからニーチェ、ハイデガーを概観しているのは、哲学に馴染みのない人には分かりやすい。飲み屋で、ちょっと哲学に詳しいオッサンが気持よく語っているまとめを聞いてる感じだ。そこから導き出されてる日本的なものの礼賛には、我田引水だなあと感じるものの、魅力を感じないでもない(歯切れの悪い言い回しだが、全面肯定できる類のものではないので、こういう言い方になってしまう)。ある友人からの話で、そのオリジナリティに疑問符がついたのだが、貝塚は縄文人のゴミ捨て場ではなく、再生の祈りの場である、とか、そのような思想はアイヌ文化の中にも色濃く見えるとして熊送りの儀式であるイオマンテの話を出してきたりで、玉石混交な印象。 ・哲学の「序説」というには物足りない展開だが、今後どんなものが出てくるのか、ちょっと期待している。続きを読む
投稿日:2018.10.28
yoshio2018
大きな題目となった。人類哲学。今までの西洋哲学ではこれからの世界の未来を担えない。その思想が「草木国土悉皆成仏」だそうだ。なんだかアニミズムのような感じがするが。天台本覚思想を一言でいうとそうなるとか…(?)。続きを読む
投稿日:2018.10.11
江戸っ子
このレビューはネタバレを含みます
ヘレニズムやソクラテスなどの省察がまとめ終わっていないけれど、ひとまずまとめてみた。 ---- 前提として、哲学は古代ギリシアで生まれ近代西欧で発達した。 インド哲学や中国哲学は思想について語ったもので、哲学は一部地域に偏っており、普遍的なものとは言えない。 そして近代の哲学に支えられた、現代の科学技術や資本主義は行き詰まりを見せている。 したがって、今の哲学(西洋近代哲学)を見直す必要がある。 ——— 日本の『草木国土悉皆成仏』という思想が解決の糸口となる。 万物すべてに魂が宿っているという思想で、日本の思想であると同時に、世界の原始的文化の狩猟採集・漁労採集文化の共通思想でもある。 cf. アニミズム etc. ——— 近代の哲学に支えられた、現代の科学技術や資本主義は行き詰まりを見せている。 つまり近代の哲学は行き詰まりを見せている。 その近代の哲学を支えたデカルトについて省察してみる。 ・・・・ デカルトの「コギト・エルゴ・スム(われ思う、ゆえにわれあり)」は、懐疑によって哲学を突き詰めた結果、 「疑っている自分が存在する」ということだけは否定できない、つまり実在する、としたことを言い表している。 「疑っている自分の存在」を肯定することは、理性(疑っていること)を肯定すること。 つまり理性をベースとする、近代の西洋哲学の理論がこれに支えられている。 加えて、デカルトはこの世界に存在する実体は三つであるとした。 ①神という完全な実体 ②内側による思惟を本質とする実体 ③外側にある延長と本質とする物質という実体 デカルトは自然の本質を延長と考え、数式によって表現された法則によって機械的に把握されるとした。 この思想が、近代科学技術文明を裏付ける理論となった。 ・・・・ このデカルトの自然を機械的に把握できるという思想と逆の思考が、 『草木国土悉皆成仏』、「自然は生きている」という思想なのではないのか。 原子力発電、異常気候、エネルギー資源問題など、自然を征服することが人類を滅ぼす危険性を持っているとわかった今、 生きとし生けるものすべてと共存する哲学、『草木国土悉皆成仏』が、人類の哲学の根本にならなければならない。 ——— 『草木国土悉皆成仏』の考えを表してる文化人 ・宮沢賢治 :『草木国土悉皆成仏』→「いちょうの実」、「利他行」の考え→「なめとこ山の熊」 ・伊藤若冲 :「動植綵栽」
投稿日:2017.07.18
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