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マーガレット・ワイス, トレイシー・ヒックマン, 安田均 / KADOKAWA (6件のレビュー)
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総合評価:
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ただ
久しぶりに帰ってきたクリンの世界は、思いの外、地続きであり、ほっとした反面、ここから全てが一新された、次世代の冒険者の物語が始まると予想していた私にとっては、やや肩透かしを食らった感もあった。 …というのも、ドラゴンランスを知らない人にとって、ここから入れるのではないかという思いから、なんとかお勧めしたい気持ちがあったのだが、最初の「ドラゴンランス戦記」から読むことでしか得られない感動があまりに多い為、ファン向けの要素が強いのは間違いないと思う。 でも読んでみれば、案外気にならず物語に入っていけるのだろうか? ちょうど本書は、三つの中編で構成されているので、手軽に読めるというのはあるかもしれない。 ただ、「戦記」や「伝説」のネタばれにはなってしまうので、それだけご注意下さい。 おそらく、これ読んでしまうと、過去の作品を読むモチベーションはかなり下がってしまうと思うので。 間が空きすぎたので、簡単にドラゴンランスのことを書きますと、元は、AD&D(アドバンスト・ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ)というTRPG(テーブルトーク・ロールプレイング・ゲーム)の設定や世界観に基づいた、剣と魔法の海外ファンタジーもので、例えとしてはドラクエが分かりやすいのかもしれないが、それよりもボードゲームの、より細かい設定を盛り込んだファンタジーを想像していただければ、しっくり来そうな感じがあり、それは、TRPGが所謂ごっこ遊びのような、想像を巡らせて楽しむ、コミュニケーションツールからも近いものがあると思います。 ですからドラゴンランスは、TRPGのリプレイを小説化したような感もありつつ、より登場人物の内面に鋭く切り込んだ、様々な種族の葛藤が織り成す、善と悪とそのどちらでもない人間ドラマとしても楽しめる作品となっているわけです。 シリーズ最初の「戦記」は、悩めるハーフエルフの「タニス」をリーダーとしてドラゴン軍に挑む、壮大な冒険ものであり、次の「伝説」は、その中の双子の兄弟、魔法使いレイストリンと戦士のキャラモンを中心とした物語でありながら、世界の新たな危機に対して挑む、続編としての面白さもある作品でした。 そして長くなりましたが、本書のセカンドジェネレーションとなり、収録された三つの中編は、ちょうど時系列順になっていながら、徐々に次世代側にシフトチェンジしていく構成が上手く、最初は「伝説」から約20年後が舞台となっており、それぞれの中編について書いていきたいと思います。 「キティアラの息子」 タイトルを見て、「あのキティアラが子どもを!?」といった衝撃と、更に衝撃的な真相を知った時は、彼女ならやりかねないと思わせる非情ぶりを感じたが、その後の向き合い方には、どこか憎めない部分もあり、おそらく「伝説」からこの要素は強くなったのだとは思うが、人の中には善も悪も共存していることを実感させてくれる、このリアル感は、ファンタジーとはいえ、決して侮れないものがあるのが、ドラゴンランスの一つの味となっており、この多面性が様々な局面で思わぬ感動を引き起こしてくれるのが、本書は多く、ここではこれまで孤独な人生を送ってきた育ての母「サラ」と、息子「スティール」の関係性が、微妙な距離感でありながらも確かな愛情を築き上げてきたのが、読んでいてよく分かり、切ないものがあった。 そして、その切なさは、スティール自身望んでいるのが、闇の神が率いるドラゴン軍の指揮官アリアカンの暗黒騎士団の一員である点にあり、『不浄の闇と、聖なる光の子』という相反するもの同士が共存する彼を、なんとか引き留めようと、サラは、かつてのランスの英雄であるキャラモンにお願いし、彼は彼でタニスも同行させることにする。 物語の上手さとして、スティール自身の、将来のかかった重要な分岐点をメインにしながらも、タニスとキャラモンの話す、かつての彼の思い出話が胸に迫る点にあり、まさかあのエピソードで、今更胸を抉られるとは夢にも思わず、辛いものがあったが、その分、彼の素晴らしさも知ることが出来たことで、彼らの魂の邂逅により目頭を熱くさせられ、それは、普段大人ぶった振る舞いをするスティールが時折見せる、『悲しみに満ちた孤独な幼子の顔』にもよく表れていた、立場は一切関係ない、彼自身の人間性の問題とも思われて、彼の言葉『でも、おれの魂は、おれのものだ』からも、今後どのような人生を歩んで行くのか、その母譲りの、癖のある切ない微笑も含めて楽しみである。 「受け継ぎし者」 キャラモンとティカの三男である、魔術師「パリン」に焦点を当てた物語でありながら、とても緊張感のある面白さとなったのは、やはり彼の登場であり、果たしてそれは現実なのか、それとも幻なのか、読み手も「えっ、中編でこんな重要な局面を迎えるのか!?」といった展開にページを捲る手が次第に速まっていった結果、最後の推理ものでいうところの、大どんでん返しが見事に決まるという、いやあ、これはやられたなと、思いながらも、実はやられてなかったのかもしれない、といった絶妙な終わり方が好きだが、それにしても彼の生きることへの精神力は、あそこまで行くとポジティブだよねと思わせた、その思考法は恐ろしくも尊敬の念を覚えた。 そしてシリーズのファンにとって感動的なのが、そのタイトルに込められた意味合いであり、それはかつての双子の兄弟の思い出とも見事にリンクした、複雑な感情がありながら、どこか爽やかさも伴っていたのは、彼の涙ごしの微笑みからも感じられた、彼への惜しみない愛情だったのかもしれない。 「賭けるか?」 読んでいてデジャヴ感があり、タイトルも見たことあるなと思ったら、これ「ドラゴンランス英雄伝」5巻のそれだと気付いたものの(これと「受け継ぎし者」は英雄伝を元に書き直している)、ダウガンのネタばれ以外は覚えていなかったので面白かった。 ここから本格的に、キャラモンとティカの息子三人が登場し、長男のタニンは、気の短さが母と、何故か名前の由来でもあるタニス譲りで(笑)、その長男と指導者の役割を大真面目にこなす傍ら、次男スタームは、兄とそっくりの容貌でありながら、陽気でのん気な性格と、自分で責任を取りたくないから大抵は兄任せにする一面に、名前の由来とは真逆なのがまた面白く、三男のパリンは「受け継ぎし者」でも印象的だった、知識に優れながら確固とした自分の意志も持ち合わせた、生真面目さが持ち味で、ちなみに、上の二人は騎士を目指している。 そんな彼らの冒険は、一人のドワーフに巻き込まれる形で展開していく中、どことなくユーモラスなのが特徴的で、最初から最後まで賭け事がポイントとなりつつ、奇想天外な発明をするノームの、ノーム式帆走船に危険を感じながらも目指すのは、灰宝石(グレイジェム)という混沌の力を象ったもので、そのクライマックスでの混沌が作り出した、欲との戦い、つまり自分自身との戦いに、挫けそうになった彼らであったが、特にパリンを支えたあの言葉、『わたしは生涯をとおして、おのれ自身のものだった。わたしが選んだ道は、何ものにもとらわれぬ自らの意志で選びとったものだ』に秘められた思いの、シリーズファンだからこそ知る、その確かな説得力に大きな勇気をもらった彼の姿には、まさに次世代へとその譲れぬ思いが継承されてゆく、ひとつの希望を見たような気持ちにさせられたのであった。 ちなみに下巻も、このようないくつかの中編で構成されると予想しており、そこではついに、レイストリンの娘が登場するそうで、今から楽しみです。続きを読む
投稿日:2024.03.24
ひまわりめろん
ドラゴンランスの英雄たちの第二世代を描いた中編集 このあとの大長編の前の顔見せ興業的な意味合いがあったのかな だいたい第二世代モノって「うーん」ってものが多くて、最近ヒット作のない漫画家が昔の大ヒッ…ト作を引っ張り出してきて二匹目のどじょうを狙って台無しにしちゃうパターンばっかりじゃないですか(言い過ぎ) 成功例と言えば『キン肉マン2世』ぐらいしか思い浮かばない(他にもいっぱいあるよ!) そもそもドラゴンランスとキン肉マンを同列にカタルーニャ地方(スペイン!) あ、でもキン肉マンて結局超人大図鑑的な面白さがメインみたいなところあるから続編作りやすいか あ、でもでも二世の持つ悲喜こもごももうまく描かれてて中身も面白かったな~ ってキン肉マンの話ばっかりやないか! えーと、そうそうドラゴンランスね 3つの中編はそれぞれ違った面白さがあって、この辺のバリエーションの豊かさはさすがに二人で共作してる強みだなぁと思いました そしてキン肉マンの作者ゆでたまご先生も二人組なんですな 見事に繋がりました!さすが! 続きを読む
投稿日:2023.03.20
花陰 八
ドラゴンランスは世代が交代した今作以降の評判は悪いそうなんですが、パリスくんにバリバリ共感したのですごい面白かったです。体育会系な兄にいつも頭ごなしに命令されてむかついてた文系の弟が、きちんと丁寧に…理由を説明された上でお願いされて「僕を認めてくれた」と感動って、めちゃめちゃいい話やん。 下巻の話になりますが、レイストリンはパリスとの関係で十分だから娘は蛇足だったかなー(単体で見たら好きなんですが、クリサニアとのことを思うとやっぱ微妙)と思ってたら娘さん思いっきり主人公。そして何故か「夏の炎の竜」だけ図書館になくて読めない…… 先に「魂の戦争」を読むことになりそうですが、少なくとも子世代はみんな好きでした。もっと平穏な未来がほしかったけど、そうそう上手くはいかないか。続きを読む
投稿日:2013.03.08
nophin
久しぶりにこのシリーズを読みました。 前までの話を忘れていたけど、読みながら少しずつ思い出したし、前を知らなくても楽しめる短編集だと思います。 第二世代の話ということなので、私の好きな家族もののストー…リー揃いで、なかなか良かったです。 キティアラはあんまり好きじゃないけど、キティアラの息子の話も面白かったし、キャラモンの息子たちの話も面白かったです。レイストリンもあんまし好きじゃなかったけど、この締めくくりはいい感じ。続きを読む
投稿日:2012.06.01
macozou
さらに続くシリーズの「夏の炎の竜」に繋がる、短編集。 「夏の炎の竜」を読もうと思っているなら、先に読んでおいた方が良い。
投稿日:2008.12.16
りん
「ドラゴンランス」の子どもたちの物語です。 むかしは、こういう続編って、 「やっぱり、前作にくらべると……」 という感想をもちがちでした。 でも、最近は、 「そういう続編も悪くないなぁ」 と…思っています。 源氏物語も、源氏が死んでからは面白くないとか思っていましたが、最近は、薫とか匂宮の話も好きなのです。 これは、年のせいかもしれません。 ということで、「ドラゴンランス セカンドジェネレーション」です。 これは、長編ではなくて、中短編集という感じですね。 「ドラゴンランス」、「ドラゴンランス伝説」とか、けっこう「英雄」の物語だったのですが、こっちは、ちょっと軽い感じがして、冒険者の日常という感じがします。 きっと、タニスたちも、若い頃は、こんな冒険を……とか思ってしまいます。 キットの息子スティールは、めっちゃ魅力的です。 その善と悪への引き裂かれ方は、レイストリンを思わせます。 パリン。レイストリンにあこがれている彼にも、もちろん、その影を感じるのですが、本質的な部分で、スティールの方に、わたしはレイストを感じました。 きっと、みんな、そういう感じで、誰かに誰かの影をみているんでしょうね。 そういう、「長い恋」みたいな雰囲気が、なんとも2代目物語のよいところです。 どの話も大好きなのですが、「賭けるか?」の軽さは、すばらしかったです。 わたしは、ダウガンが誰かは、かなり早い時点でわかりましたが。 パラダインにしても、レオルクスにしても、本当に、この世界の神様たちは、魅力的です。 新しい物語。かなり期待通り…期待以上です。 これからはじまる大きな物語も、期待大ですねぇ。続きを読む
投稿日:2008.08.18
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