【感想】日本人の勝算―人口減少×高齢化×資本主義

デービッド・アトキンソン / 東洋経済新報社
(121件のレビュー)

総合評価:

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  • 低賃金雇用を良しとする経営者と国民所得の低さに目をつぶる政府

    失われた二十年を経験する間も、多くの政治家や識者が口を揃えて、日本のモノづくりや技術力の比類のなさを喧伝していたが、GDP成長率など圧倒的な低成長を邁進しつづける現状を鑑みると、その誇るべき技術力さえ心もとなくなっている所だったので、著者の指摘は時機を得ている。
    戦後日本の奇跡の経済成長も、元はと言えば急激な人口増加とそれに伴う若年層の増大によるもので、勤勉だったからではなく当たり前の成長だった。
    しかしこの成功体験が神話を生み、世界第28位という極めて低い生産性に甘んじても変革できない国になってしまった。

    ただ日本は中小企業が多すぎるから規模拡大して生産性を上げよという提言はどうかな。
    例えばタクシー業界は、慢性的な運転手不足に対して免許の受験資格を緩和することで若年層に門戸を広げようとしている。
    著者に言わせれば、やるべきなのは最低賃金を上げることで、それを実現するためには合併して会社の規模を大きくすることだろうが、ほとんどの場合、歩合制で安定しないし、客とのトラブルなど査定に影響するものは自腹で処理し、少しでも会社に目をつけられると難詰される現状では、ますます会社側からの圧迫が強まるだけという気がする。

    日本の戦後の急激な人口増加もそうだが、中小企業が他国に比べて多いのも、国が導いてそうなったのではないだろう。
    急激に増加すればその反動で急減するのは自然だし、国民性がそうならたとえ人口が少なくなっても小規模経営は減りこそすれなくならないだろう。
    昔から日本人は一つの会社で製品すべてを完成させるのではなく、製造加工を専門に細かく分担しあって生きていたので、必ずしも戦後の成功体験によるものではない。
    それとGAFAに代表される事業規模に比して働く人を極端に少なくするのが主流になりつつあるのに、茨の道にしか見えない。
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    投稿日:2020.01.30

ブクログレビュー

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  • キャスバル

    キャスバル

    菅義偉元総理大臣のブレーンでもあったと言われている元GSのデービッド・アトキンソン氏の著書。

    内容には大方同意である。
    今後給料を継続的に上げて行く事が出来ない企業=生産性が低い,イノベーションを起こしえない企業と判断され、急激な少子高齢化で"労働者"の大部分が減っていくことも相まって優秀な人材が集まらず、どんどん吸収合併され淘汰されていくだろう。

    昨今の(まるで中小企業を蚊帳の外に置いた様な)賃上げブームが良い証拠で、良い悪いでは無く実際にもうその流れが目と鼻の先まで来ていると感じる。私達一労働者に出来ることは、某ネットニュースの賃上げ記事のコメント欄に「中小企業は関係無い」だのだらだら不満を書き散らすことではなく、今の給料に不満があれば転職する事、それしか無いのだろう。

    また、著者を最近他の動画媒体でも比較的多く見かけるが、個人的にこの方の「多すぎる中小企業を淘汰すべき」との意見は1時間そこらの番組で末端まで説明するのはほぼ不可能で、言葉自体が強烈ながら無駄な誤解を産む可能性があると思われる。

    少なくとも私はそう感じた。
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    投稿日:2024.01.17

  • Anony

    Anony

    感想
    最賃を引き上げる。人材確保のためのポジティブスパイラルが回る。しかし構造的問題は解決するのか。必ず救いきれない問題はある。

    投稿日:2023.08.05

  • shoutic3

    shoutic3

    気づき
    ・日本において最低賃金の引き上げは社会福祉政策であり、他の先進国においては経済政策であると言う違い
    ・人材育成の重要性
    →任意ではなく強制。経営者にこそ育成が必要

    投稿日:2023.08.03

  • koyokaze1021

    koyokaze1021

    GDPが上がる要因は人口要因と生産性要因がある。前者が無理な日本は、後者を上げなくてはならないが、現状OECD最低基準。
    日本の労働者の質は世界で第4位だが、賃金が低いため、生産性は28位。
    色々な論文を提示して、根拠を持って論じているのは良いが、その論文の妥当性は自ら判断しないといけない。続きを読む

    投稿日:2023.02.22

  • mannz

    mannz

    日本は少子高齢化と人口減少が同時に訪れるという世界でどの国も経験したことのない恐ろしい未来が見えているにも関わらず、国は危機感が足りず、従来の延長線での対策しか打てていない。今のままでは急速な経済の縮小は避けられない。
    個人としては国に期待せず、自らの人材価値を高めるための努力を粛々と続けていく必要があると感じた。
    続きを読む

    投稿日:2023.01.14

  • もふ犬

    もふ犬

    面白かったです。
    ・大企業に比べて中小零細は生産性が低く、企業統合して規模を拡大すべき
    ・日本は中小零細が多すぎる
    ・中小零細からは技術革新も起きづらいどころか、前時代的な技術を使い続けている
    という話は特に印象的でした。
    最低賃金アップの話も面白い。

    インボイス制度が賛否両論を呼び起こしているが、中小零細の優遇を改めるには良い政策だと思った。
    続きを読む

    投稿日:2022.06.24

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