【感想】公園へ行かないか? 火曜日に

柴崎友香 / 新潮社
(20件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
6
5
4
1
0

ブクログレビュー

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  • mario3

    mario3

    滝口悠生のアイオワ日記、中上健次のアメリカ・アメリカに続いて読んだ、IWPの参加作家の本。
    実は柴崎さん自体を読んだのも初めてだったけど、繊細な書き方に引き込まれる。
    この人の視点、好きだなあと思った
    読みやすいし丁寧。

    ちょくちょく、自分を取るに足らないものに感じられてショックを受ける様子が描かれる。
    とくにラストのNY旅行で、アジア人で女で、背が低いから、と扱いが雑にされる様はわたしもよくわかるので苦しくなった。
    英語が苦手ながら、周囲の作家たちといい関係でいたいと頑張る様子は新入社員のよう。
    でも周囲の人はもっとクールでざっくばらんな感じ。わかるーーーう。
    途中、2ヶ月中断を挟んだ本だったけど、時系列ではないパラグラフなので読みやすかった。
    ニューオーリンズの幽霊たち、言葉音楽言葉、が面白かった。
    映画好き、音楽好きだったことはアメリカ暮らしに幸したはず。
    アメリカの博物館事情も興味深い。
    アトラクション型や、追体験型がある。なるほど。
    ホロコースト記念博物館の話の終わり、ここの警備員が白人至上主義者に撃たれて最近亡くなった、の表示に胸を突かれる。
    アメリカは、なんてとこだ、とアメリカにいかなければ、わからないのだし、アメリカにいたことで、日本の社会や日本語での思考に気づくことができるのは普段当たり前にいる世界のレイヤーに気づく好機なんだろう。
    同様に、他の国から来た作家の心のうちに想いを馳せたり、自分の大阪弁への思いに気づくのも面白い。
    アメリカと野球とか。

    柴崎さんの本もいずれ読んでみようと思った。
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    投稿日:2023.07.05

  • afro108

    afro108

    このレビューはネタバレを含みます

     最近小説読んでいないのでリハビリ的に読んだ。アイオワ大学のライティングプログラムに参加した話をつづった小説であり、虚実の境が曖昧で日記、エッセイ的な小説でオモシロかった。基本は世界中から集まった作家たちのある種のモラトリアム期間の記録というストレートなオモシロさが一番にくる。アメリカでの生活、参加者間のカルチャーギャップ、誰と何を話したかなど。著者は英語が話せないことを悔いている場面も多いが、それも含めてコミュニケーションの記録であり体験記として興味深かった。例えばこんな風。

    *目の前に確かにあるものと、人の意思や関係ややりとりで成り立っていることと、今自分と話している人が思っていること知っていること、私が理解していることが、常に少しずつずれていて、それがときどき重なったりつながったりして、いくつもの層のあいだを漂っているみたいに、暮らしていた。*

     以前に滝口悠生さんによる「やがて忘れる過程の途中」という同じくアイオワ大学のライティングプログラムを題材とした小説を読んでいたので大まかな全体の流れは理解していたが、やはり作家が違えばこれだけ書き口、パースペクティブが異なることが興味深かった。一人称で書かれているのだけども、会話描写が少ないからなのか全体に距離を感じた。観察日記的とでも言えばいいのか。起こっていることと自分の考えの擦り合わせについてたくさん書かれている。特にトランプが大統領選で当選したタイミングで当時の現地の空気を日本の小説家の視点で読むのが新鮮だった。もしかすると距離を感じたのはトランプが生んだ分断の空気の影響もあるかもしれない。実際旅行者とはいえその風に晒されているような描写がいくつかあり、あの頃から世界は少しはマシになったのだろうかと考えたりもした。
     日本にいるだけでは、相対的な日本および日本語の価値や意味などが掴みにくい。アメリカで英語で周りの人たちとコミュニケーションを取る中で著者による日本語の論考は興味深かった。端的にはこういうこと。いつかいってみたいアイオワ大学。

    *ここから見るそこと、そこから見るここ。
    ここにいるから見えるそこと、そこにいるから見えるここ。ここにいるから見えないそこ。ここにいるから見えないここ。*

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    投稿日:2023.04.16

  • おひげ

    おひげ

    『公園へ行かないか? 火曜日に』読了。
    小説らしいがエッセイのような感覚で読みました。異国のライティングプログラムに参加した主人公。そこで感じる文化の違いや歴史、価値観、社会情勢についてを描かれていた。旅行記は何度か読んだことはあるが留学記は読んだことなかった。とても面白かった。
    この方がアメリカに行ったのがトランプ政権が誕生した時だったため、その時のアメリカの様子を知ることができた。本当に白熱した選挙戦だったんだなと。
    そして戦争に対する価値観とかも国によって見方が違うのだなあとかも。野球もそう。
    世界の広さを知る。アメリカに行ってみたいと思った。

    2022.10.10(1回目)
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    投稿日:2022.10.10

  • 黒猫

    黒猫

    図書館で見つけたので。小説家と思ったらIWP (International writers program) に参加したエッセイ。アイオワ、NYC、ニューオーリンズ…。情景「だけ」を描写して分析とか心象とかをほとんど書きいれないところが好きだなと思う。
    戦争、日本経済の停滞、ニューオーリンズの治安…なんとなく、大事な本だなと思った。買おうかな。
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    投稿日:2022.08.03

  • hazel8483

    hazel8483

    IWPというアメリカの研修制度に興味があって
    関係する書籍をちょこちょこ読むのですが
    …あれ?小説扱いっていことは
    多少の脚色もあるってことかしら。

    アイオワの町に2ヶ月近く住んで
    大学の用意したプログラムに参加したり
    小旅行に行って、文化交流をしたり。
    英語が得意ではない上
    どちらかというと人見知りっぽい著者が
    よく参加したなぁ、すごいなぁ、と思います。
    でも、そんな性格なりに異国の作家たちと
    触れ合ったり、語り合ったりすることで
    考えさせられることも多かったみたいですね。

    トランプ政権誕生の空気、メジャーリーグの余波
    もう〝知らない国〟ではなくなってしまった
    ともに参加した作家たちの故郷の話。

    カバーに、現地で撮った写真が使ってあるのですが
    うん、たしかに毎朝カーテンを開けて
    最初に見るホテルからの風景がこれでは
    ちょっと気分も盛り下がるかも(笑)
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    投稿日:2021.08.23

  • k-masahiro9

    k-masahiro9

    表紙の美しさに惹かれて手に取り、読み終えて改めて表紙を眺めると、作品内の風景を再度辿るような気持ちになった。文体も激しい盛り上がりなどはないけれども、静かに淡々と日常が描かれる。自分自身の学生時代の異文化理解経験を、どこか懐かしい気持ちで思い起こしながら楽しんで読むことができた。続きを読む

    投稿日:2021.04.04

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