【感想】ジーヴズの事件簿 才智縦横の巻

P・G・ウッドハウス, 岩永正勝, 小山太一 / 文春文庫
(126件のレビュー)

総合評価:

平均 3.6
17
39
43
6
2

ブクログレビュー

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  • 0107springsteen

    0107springsteen

    やんごとなきお方の愛読書ということで恐れ多くも拝読。
    事前知識が全くなかったので読み始めていつの時代の本かと思ったら、20世紀前半の小説ということで納得。
    イメージにある古き良き英国の香りと申しましょうか、こういう人たちによってそのイメージが形成されたのかもなぁと思わされる次第。
    ゆったりとその空気感を楽しむ本かと思われ。
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    投稿日:2023.11.27

  • Konstanze

    Konstanze

    「その本、人は死ぬのですか?」
    なんの本だったか、人に勧められて私の訊いたことである。
    「誰か殺されるのですか?」
    大事なことではないか。
    殺人があるのか、犯罪はあるのかというのは。
    探偵がいるのかというのは。
    あいにく「ない」とのことだった。
    その人はゲラゲラ笑って全否定したのだ。
    「人は死なない。殺されない。だから探偵は出てこない」
    ううむ、残念。

    実はこれもである。
    人は死なない。殺されない。よって探偵はいない。
    しかしジーヴズがいる!

    『ジーヴスが来て一週間もたたないうちに、僕は自分のことを自分で処理するのをやめてしまった。』(8頁)
    ジーヴスを雇う人は言う。

    バーティ(バートラム・ウィルバーフォース)・ウースターその人である。
    ロンドンのマンションすまいの彼は、貴族の家に生まれて、気のいい、ただし服の趣味の突飛な――派手なチェックのスーツや、紫色のシャツ、燦然と輝く藤色の靴下――ひとことで言えば、服の趣味のよくない青年である。

    ジーヴズはその従僕だ。
    「機略と手際」をモットーとし、紳士に仕える紳士として文句のつけようがない従僕である。

    バーティのところにはしょっちゅう厄介ごとがくるのだが、なぜかうまく片が付く。
    ジーヴズの手によって。

    厄介ごとといっても殺人のようなものではなく、犯罪といえば泥棒くらいなものだ。
    他にたとえば恋のキューピットだろうか。
    たとえば、バーティの友人ビンゴは非常に惚れっぽい。
    春になるごとに女性に恋をして結婚を考える。
    それに協力させられるのがバーティだ。
    バーティのお気に入りの服も――趣味の悪いあれやこれやも――うまく始末されていく。

    ジーヴズは話題になったことがある。
    そこでばーっと目に入るようになった。
    探偵小説だとか、ジーヴズが執事であるとか、教養小説だとかいう印象、情報があるが、違う。

    ジーヴズは従僕(valet)だ。
    そしてこれはユーモア小説だ。
    ゲラゲラ抱腹絶倒ではない、クスッと笑みがこぼれるようなシリーズである。
    あるいはニヤリとするような。

    人は殺人ではないものを読みたくなる時がある。
    理屈っぽくないもの、陰惨ではないものを読みたくなる時がある。
    そんな時に読むべきはジーヴズシリーズだ。

    そして、問題になるのが読むべき順番である。
    長編やら短編やらあるというではないか。
    そして全集が――え、14巻もあるの?!
    そういう人に、私はこれをお薦めする。

    短編集である。
    ジーヴズの初仕事から載っていて、いわば、おさえるところはおさえた短編集である。
    これで気に入ったら、シリーズの他作品に手を出せばいいのだ。

    先の先を読む人ジーヴズである。
    人はジーヴズになりたいのか、ジーヴズに仕えられたいのか。
    あなたはどちらだろう?
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    投稿日:2023.05.08

  • あきこうき

    あきこうき

    人に勧めてもらった。
    玉野五十鈴の誉れにチンパシーを育まさせざるを得ない。

    日常ミステリーをチーマにしてるので今までハード系のミステリーに親しんできた自分としては新たな分野となったが面白かった。

    シーヴスとバーティの絡みが面白い。
    バーティはシーヴスを使っていると思っているが、実際のところはバーティはシーヴスの掌の上でおどらされているだけでバーティはどこか友達というかはGoogleとかに似ている感じ。

    また、ビンゴはとても面白い方。突拍子のないだこと!!
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    投稿日:2023.04.26

  • じゅう

    じゅう

    イギリスの作家「P・G・ウッドハウス」のユーモアミステリ小説集『ジーヴズの事件簿 才智縦横の巻(原題:The Casebook of Jeeves)』を読みました。

    少し軽めの内容の作品を読みたくなったんですよね。

    -----story-------------
    「機略と手際」、これが紳士に仕える私のモットーです

    20世紀初頭のロンドン。
    気はいいが少しおつむのゆるい金持ち青年「バーティ」には、厄介事が盛りだくさん。
    親友ビンゴには浮かれた恋の片棒を担がされ、「アガサ叔母」は次々面倒な縁談を持ってくる。
    だが「バーティ」には嫌みなほど優秀な執事がついていた。
    どんな難帯もそつなく解決する彼の名は、「ジーヴズ」。
    世界的ユーモア小説の傑作選。
    -----------------------

    ユーモア小説作家「P・G・ウッドハウス」の代表作である「ジーヴズ」シリーズの傑作選です… ぐうたらでダメ男の若旦那「バーティー」と、とんち男の召使い「ジーヴズ」、、、

    世界的に有名なこの名コンビと、オマヌケな「ビンゴ」やお節介屋の「アガサ叔母さん」たちが繰り広げる抱腹絶倒の人間喜劇… 天才執事「ジーヴズ」が、様々な事件やトラブルを解決していく痛快ストーリーが愉しめました。

     ■ジーヴズの初仕事(原題:Jeeves Takes Charage,1916)
     ■ジーブズの春(原題:Jeeves in Springtime,1921)
      ・その一 ジーヴズ、知恵を絞る
      ・その二 婚礼の鐘が鳴る
     ■ロヴィルの怪事件(原題:Aunt Agatha Her Mind/Pearls Mean Tears,1922)
      ・その一 アガサ叔母の直言
      ・その二 真珠は涙か
     ■ジーヴズとグロソップ一家
     (原題:The Pride of Wooster is Wounded/The Hero's Reward/
          Introducing Claude and Eustace/Sir Roderick Comes to Lunch,1922)
      ・その一 ウースター一族の名誉の問題
      ・その二 勇士の報酬
      ・その三 クロードとユースタスの登場
      ・その四 サー・ロデリックとの昼食  
     ■ジーヴズと駆け出し俳優(原題:Jeeves and Champ Cyril,1918)
      ・その一 紹介状
      ・その二 エレベーター・ボーイの瞠目すべき装い
     ■同志ビンゴ(原題:Comrade Bingo/Bingo Has a Bad Goodwood,1922)
      ・その一 同志ビンゴ
      ・その二 ビンゴ、グッドウッドで敗退
     ■バーティ君の変心(原題:Bertie Changes His Mind,1922)
     ■『ジーヴスの事件簿』刊行によせて トニー・リング
     ■P・G・ウッドハウス小伝 小山太一

    舞台は20世紀初頭のロンドン… 気立てはいいがおつむがゆるく、服装のセンスも微妙にマズい「バーティ」のもとには、次々と面倒ごとが舞い込んでくる、、、

    「ジーヴズ」が彼の屋敷に到着した日も、「バーティ」は、ちょっとばかり堅苦しい婚約者たっての頼みで、叔父が書いた回顧録の原稿を盗み出さなくてはならなくなった。

    叔父は回顧録の出版を熱望しているし「バーティ」は財政を叔父に頼っている… ところが婚約者は、自堕落で破廉恥な回顧録が出版されてしまったら、「バーティ」とは結婚しないと言い出した、、、

    さて、どうする? 苦悩の末に「バーティ」は行動を起こすが、主人の服装に関してはいささか差し出がましい口をきく「ジーヴズ」の明晰な頭脳は、それをはるかに上回る解決策を弾き出していた(『ジーヴズの初仕事』)。

    「バーティ」に降りかかる災難は、これだけでは終わらない… 親友の「ビンゴ」はいつだって恋の渦中にいるし、「アガサ叔母」は逃げ出したくなるような縁談ばかり持ってくる。

    どの作品も面白かったのですが、イチバン印象に残ったのは『ジーブズの春』ですね。

    好天に恵まれた春の午後、バーティーの恋多き幼なじみ「ビンゴ」にまたしても想いを寄せる女の子が現れた… 相手はロンドン・ピカデリーのしみったれたパン食堂のウェイトレス「メイベル」、、、

    伯父「ミスター・リトル」からの援助で生活している「ビンゴ」は、いかにも「ミスター・リトル」が反対しそうな彼女との結婚が上手く行くよう、「ジーヴス」に手を貸して欲しいと頼む… 「ジーヴス」のアドバイス通り、巷で流行っている「ロージー・M・バンクス」のロマンス小説を読み聞かせることで「ミスター・リトル」の警戒心を解いた「ビンゴ」は、「メイベル」との結婚を了承を得るため、「ロージー・M・バンクス」の正体は「バーティー」だと大嘘を付いていた。

    この計画は成功し、「ビンゴ」は「ミスター・リトル」から「メイベル」との結婚について許しを得るが、価値観の変わった「ミスター・リトル」は自宅で雇っている料理人で「ジーヴス」が婚約していた「ミス・ワトソン」と結婚しようとしてしまう… まさか、「ジーヴス」がここまで計算していたとは、、、

    恐れ入ったし、ちょっとブラックなオチでしたね。


    以下、主な登場人物です。

    「バーティー・ウースター」
     暇を持て余す伯爵位継承予定者。
     ジーヴスは彼にとって一種の先導者であり、哲学者であり、友人である。
     思慮は浅いが、親族や友人のためにためらいなく一肌脱ぐなど、情誼に厚い気持ちのよい人物。

    「ジーヴス」
     バーティーに仕える従者。
     あらゆることに精通しており、主人のバーティーのみならず、その親族や友人たちをその頭脳で助けてきた。
     保守的で、バーティーが買ってくる前衛的なファッションには大抵強硬な態度で反対する。
     ロージー・M・バンクスのファン。

    「ビンゴ・リトル(リチャード・リトル)」
     小中高大学まで一緒に通った、バーティーの幼なじみ。
     何かにつけてバーティーに「お前は俺の友達だろう?」と頼み事をする。
     伯父からの潤沢な小遣いで陽気に暮らしている。春になると誰かしらに恋をするうえ、猛烈に惚れっぽい。

    「モティマー・リトル(ビトルシャム卿)」
     ビンゴの伯父。「脚すっきりしなやかリトルの湿布薬」で蓄財し、先頃引退したばかり。
     作中ではビンゴ・リトルと区別するために「老リトル」と表記されるが、後に結婚し、国王から貴族に列せられ、ビトルシャム卿となる。

    「アガサ・グレッグソン」
     バーティーの叔母。バーティーが子どもの頃から彼を低能呼ばわりし、人生を空費していると指摘し続けている。
     バーティーが最も恐れる人物。身長179cm。

    「ロージー・M・バンクス」
     巷で話題のロマンス小説の作者。
     ビンゴが伯父についた嘘のせいで、ビトルシャム卿はバーティーをバンクスだと思い込んでいた。
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    投稿日:2023.03.13

  • ぽんたろう

    ぽんたろう

    面白かった。タイトルからてっきりミステリだと思ってたら、ユーモア小説だった。
    ピーター卿とバンターとか、黒後家蜘蛛の会のヘンリーみたいな、そんな話かと思いきや全然違った笑

    「賢い従僕と間抜けな主人」型の物語ということで、パーティーのお間抜けぶりがあまりにも。でも、バカな子ほど可愛いというか、むしろもっとおバカなビンゴもいて、いやはやバンターも大変ね。というか、(コントロールしやすい)主人のことは気に入っているとしても、あれこれ手を回してくれるの、もはやお母さんね…。

    この物語を当時皇后という立場の人が取っておいて、上皇后という立場になって読んでいるのかと思うと、なるほどというか、なんというか、こんなこと書いちゃあなんだけれども、なんとも言えないおかしみがある。

    『バーティーくんの変心』みたいな、ジーヴズの立場からの作品をもっと読みたいな。面白かった。

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    投稿日:2023.01.28

  • M IYABI

    M IYABI

    英国における主人と従僕の関係はその時代によっては厳格で絶対なるもの、ではあるが陰では知性ゼロ精神的には取るに足らないと言い放ち、主人であるウースターを思いのまま操るジーブス。何だか今一つのウースターの為に先手先手で動き窮地を逃れているようにみえるが結局のところジーブスが勝手いいように采配。基本ファッションセンスで対立し、ウースターが折れる。
    面白いのか?微妙である。
    続きを読む

    投稿日:2022.10.18

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