【感想】BL進化論 ボーイズラブが社会を動かす

溝口 彰子 / 太田出版
(10件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
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ブクログレビュー

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  • amy

    amy

    このレビューはネタバレを含みます

    私はシスジェンダー女性で異性愛者である。
    商業もののBL作品も好きだし、二次創作におけるBL作品も好きだ。
    だから自分の好きなものがどう生まれ、どう変化して今日の私の手元に届いたのかが知りたかった。

    正直、世の中に蔓延る家父長制、ミソジニー、ホモフォビア、女性蔑視に疲れ果てている。
    それらがBLの世界にはあまり出てこない。
    あまり、というだけでまったく出てこないわけではないが、世に出る前に編集などの作者と作品の間に他者が介入する商業BL作品は、先述した疲れ果てる要素から距離を置いていたり、実際に出てきたとしても現実よりもよっぽど優しい。
    BLじゃない、登場人物が異性愛者前提の作品だとまだそれにぶち当たることがけっこう多い。楽しむための映画や読書なんかが一転して自分の心を曇らせるものになってしまうのだ。
    商業BLはその確率が低い。だからこそ安心して手に取れる。楽しめるということがある。
    それらのBL作品のことを「進化系BL」と本書では呼んでいる。

    そのようにBL作品が進化するために何があったのかという点が私には非常に興味深い内容だった。
    実際にゲイである人たちからの目線を気にするようになったからこそ、起こった進化だと本書で書いていて、かなり感動した。
    自分たちが創作したもの、楽しんでいるものが誰かを傷つけているかもしれないと自覚したときに、「何が悪いの?」と開き直るのではなく、新しい方向性を考えてそれを作品に反映していくという姿勢は素敵だと思った。
    よくTwitterでは広告などに使われる表現のあれこれを巡って論争が起きることがあるが、開き直っている人というか、なぜそう言われるのか何がどう当事者を傷つけているのかを突っぱねている人も見かける。
    BL創作者、愛好家の先人たちの誠実な姿勢にはあっぱれとしか言いようがない。

    BLが好きという人はBLで描かれる世界が好き、という人も多いと思う。
    そういう人たちにはぜひ読んでほしい本だった。
    また宙出版からも『BL進化論[対話篇] ボーイズラブが生まれる場所』が2017年に出ているので、こちらも読んでみたい。

    BLの何がそんなに私を虜にするのかがわかったし、BL作品だけではなくゲイ映画等の話も取り上げられておりエンターテイメントにおける同性愛の描かれ方についてとても勉強になった。
    これは2015年出版で、今から8年も前だ。出版当時とまたBLは変化している。
    オメガバースがなぜここまで隆盛を極めているのかについてもぜひ溝口先生に分析していただきたい。

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    投稿日:2023.01.13

  • ゆ

    インターネット上ではたびたび「BLはゲイ差別ではないか」という批判が起こり、その度にBL愛好家たちは「どうすればBLが差別ではなくゲイフレンドリーな社会づくりに与することができるか」を考え、応えようとしてきた。本書にも詳しく書かれている"やおい論争"は1992年のできごとだが、この論争は2000年代、そして現在になってもいたる場面で行われている。読みながら、BLについて批判的に議論を行いたい人は、まずこの本を一読してからBL愛好家たちに話をしてほしいと思ってしまった。続きを読む

    投稿日:2022.02.22

  • umine

    umine

    【公正で普遍的BL論】
    質の高い文化論を読みたい人におすすめの一冊。

    BLを知らない人にもわかるように書かれ、読めばBLのことが一通りわかる。作中の例示作品は商業オリジナルが主だが、二次創作もこの論を適用できる。

    何より卑屈さはなく、愛情を込めてBLを語る本。
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    投稿日:2018.04.06

  • bookclover4936

    bookclover4936

    ''なぜ自分はBLが好きなのか。''

    考察好きなBL愛好家たちはたぶん誰でも自分に対し問いかけるであろう、この命題。
    私も折に触れ考えるので、その解を求めて手に取った。

    本書の著者はレズビアンでBL愛好家。
    どうやらレズビアンのBL愛好家は珍しくないらしい。BLはセクシュアリティの問題と不可分だと私も思うのだけど、やはり自分と切り離された異性同士の関係構築を愛好家たちは見たいと感じるのは共通のようだ。

    著者はBLの歴史をひもときながら様々な考察をされてるんだけど、「究極のカップル神話」って概念が個人的にしっくりきた。
    BL愛好家って、色んなタイプがいると思うんだけど、私自身の嗜好パターンに当てはめて考えると、BLにおいて必ずしも「セックスシーン」を必要としない人間である(むしろ邪魔と感じる場合も)。
    それよりも「相手も自分と同じ男なのになぜ」とか「今は両想いだけど一緒にいるとあいつの将来が・・・」とか悩み葛藤しながら関係を探る登場人物たちが見たい。
    これってセクシュアリティとかじゃなくて障害があるけどそれを乗り越えてただ一人を愛する「究極のカップル(=関係性)」が見たいんだよなあきっと。そういう意味では自分の中に「ホモフォビア」がなくはないのかも。と本書を読んで発見した。
    あと「ヴァーチャル・セックス」って概念が面白かった。私はオンオフ含め他のBL愛好家たちとコミュニケーションはしてないけど、結局ネット上やSNSで関係に対する「萌え」を吐き出してはいるわけで、それってコミュニケーションに対する欲望であり、嗜好や妄想の交換(=ヴァーチャル・セックス)を求めてるってことよなあ、と。

    あと、''男性キャラがBL愛好家女性にとって「他者」ではなく「自身」であることは限りなく自然化されている''(引用)にすごく納得できるものがあった(私はやはりBL愛好家なのだなあと改めて感じた)。

    近年、BLがBL愛好家の枠にとどまらず普及し、市民権を得始めているのは(私自身はそう感じる)、著者が述べるようなジャンルが成熟し''進化形BL''(=現実よりもゲイ・フレンドリーな世界観や、女性性、男性性のあり方を問うようなBL作品)が数多く出てきてるからなのかもなあ。
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    投稿日:2018.01.08

  • 三条司

    三条司

    アインシュタインの有名な「常識とは18歳までに身につけた偏見のことをいう」という言葉を、何度も読書中に思い出しました。
    ある時代では「普通」だったものが、数世紀経ってあるいは数十年だって「普通」ではなくなることがあると知っているはずなのに、いつのまにか、昔からあるものはすべてこれからもあるはずだと思っている感覚が怖いなと思いました。
    家父長制度やミソジニー、ホモフォビアに男尊女卑。
    そういうものに真っ向から勝負を挑むと、「だから女は」「女のくせに」なんてことになりがちです。
    そういうことではないんだけどなあ、とニュースだったりを見て思っていたところ、ふと、BLの中には、私がこうだったらいいなと思う平和的で愛に溢れた世界があるし、恋愛観がある。それはなぜだろう?どうしてBLじゃないとダメなんだろう?と思ったのが、この本に出会うきっかけでした。

    どこぞのレビューで「本の紹介がわかりづらい」とありましたが、これはBLの本を紹介する本ではなくて、BLという有機体(この言い方・考え方が好きです)を分析・評論したものです。
    何度も、そうだったのか!と膝を打ち、何度も、そこまで考えていなかったけど、そうかもしれない!と目からウロコを落としました。

    気持ち良い、好きだ、を原動力にして、好きなキャラたちがどうすればもっと素敵な人生を送れるかと考えた(つまり愛を注いだ)結果、BLという世界が現実世界の先取りをし始めた、という説はとても納得がいくものであり、同時に鳥肌が立つくらい感動するものでした。

    ただ好きで読むだけでも、きっと問題はないのだと思います。でも、一度でも、「どうして私が好きな世界はBLに多くあるのだろう?」と疑問に思ったひとは、この本で視界が開けるのを感じると思います。

    余談ですが、カバーの二人が、カバーを外すと老人?カップルになっていて、涙しました。これが愛でなくてなんだというのでしょう?と思って……。
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    投稿日:2016.09.17

  • かのん

    かのん

    BLを好む理由について一度でも考えたことのある人はこの本を読むべき!!

    BLって、ジェンダーフリーな社会のパイオニアなんじゃないかな?!って。

    投稿日:2016.01.23

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