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吉田修一 / 角川文庫 (83件のレビュー)
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総合評価:
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おびのり
いずれも実際に起きた事件を題材とした短編5編。どの作品もラストに曖昧さを残すが現実と創作の差異を読んで想像する。 誰しも犯罪者となる隙間が見える。 「青田のY字路」 北関東連続幼女誘拐殺人事が題材か…。 そのうちの一件「殺人犯はそこにいる」で取り上げられた冤罪事件“足利事件”を意識したかな。 それだけでなく類似犯罪も取材の上かと思う。 少女達の誘拐殺人は許せるものではないが、 犯人であろうと地域住民から追い詰められる男の行先。数々の状況や生い立ちそのものへの不信感。 「曼珠姫午睡」 弁護士の妻英里子の中学の同級生が殺人犯で捕まる。内縁の夫の保険金殺人。目立たなかった少女の中学卒業後の変貌。中学のちょっとした関わりからか、彼女は自分の店名に中学の思い出を源氏名に英里子と名乗っていた。 犯罪とは無縁の英里子がふと踏み外す日常。 後妻業などかな。 「百家楽餓鬼」 バカラ、ギャンブルに堕ちていく御曹司。 今、タイムリーな話題。記憶に残る上場企業創始一族の社長がカジノで多額の借財を重ねた事件。 寝食を忘れて没頭していく様子、本人はすでに思考できない状態が背筋が凍る。 「万屋善次郎」 62歳善次郎が限界集落で5人の高齢者を殺人放火。善良な男が、集落で孤立、高齢者たちからの軋轢で追い込まれていく。 田舎暮らしでの孤立は過酷。余所者、上下関係と理不尽な掟もある。 「白球白蛇伝」 家族の希望を背負いプロ野球選手となった青年。貧しい家庭だったが、家族は才能ある青年に協力を惜しまない。 華やかな活躍は短かったが、一度経験した贅沢を引退した後も続けていく。そこには破滅しかない。 続きを読む
投稿日:2024.03.31
tikuo
娘の家族から電話があり、夕方になるのに子供が帰ってこないという。村の人達と探しに行くが見つからず、用水路に沈んだランドセルだけが残されていた。それから数年、バッタ物売りのフィリピン人女性の養子の息子が…怪しいという噂が絶えず、ある日別の子供が行方不明になった際、フィリピン人の親子の家に押し入るが…。 誘拐、刺殺、撲殺、背任などの犯罪に関わる短編集。しかし、そこは吉田修一である。ミステリ的な謎解きよりも、それぞれの人の生活や心象を描くことがメインである。 中学までのいけ好かなかった同級生が、若い男を使って保険金をかけた老人を殺させる。その犯罪自体にフォーカスが当たるのは一瞬で、同級生ゆう子の中学の頃、20代の頃、結婚していた頃などの話を伝聞で積み上げていくという、ありそうで以外にない展開など、独特の世界観の構築が面白い。 ただ、誰かの視点に収まるまであちらこちらに視点が動いていったり、犯行に焦点を当てすぎないのが逆に文章の核を曖昧にしたりと、読み始めと読み終わりがわかりにくいというのも事実だ。 それぞれの話は実際にあった事件を下敷きにしてお話を広げた『横道世之介』スタイルであるらしく、リアリティが魅力。村八分の恨みから村人を襲うのは、いくつか元ネタを思いつくがどれなのか、いずれにしろもとの事件が強烈過ぎて、あらたに構築しきれていない部分があったのではないか。 面白いんだけど、あんまり人におすすめするって本でもなかったな。続きを読む
投稿日:2023.12.05
N.オリゼー
5つの短編。 だからタイトルに小説集が付くのかな。 どれもスッキリした終わりかたでは無かったです。 他の話とリンクしてもいないので、本当に短編集です。 個人的には一話のモヤモヤを最後まで読んだらスッキ…リするのかもと思って期待して最後まで読んだけど、そんな技も無くてがっかり。 犯罪者側の目線で心理的に書かれていたら、もっと面白いと思えたのかもですが、ほとんどが第三者目線で、多分こうんじゃないか?みたいな書き方で、ワイドショーを観た人達や事件が起こった近隣住民の話を聞いてる感じで物語に深みが感じられなかった。続きを読む
投稿日:2023.11.12
D-Rinn
このレビューはネタバレを含みます
有名映画の原作が多くあるので、大衆寄りの作風かなと想像しちゃうけど文学的な仕上がりがこの著者にはあるし、そこにまんまと魅了される。 主人公たちは想像の範囲内で一癖二癖あり、生きていく環境に翻弄されてまさに罪への陥穽に知らず知らずに嵌まる。決して根っからの悪人ではなく、ただボタンの掛け違いが修復不可能なまでに加速しもう後戻りできない最後の一線を超えていってしまう。 特に「百家楽餓鬼」と「白球白蛇伝」がシビれる。 原因は違えどどちらもお金に関係し、堕落していく。しかし、主人公二人とも最初は真っ当な人間といて歩んでいるはずなのに、周りの環境からの外的影響から歯車が徐々に狂い出し堕落していく。そこに劇画的なターニングポイントなんかなく、いつの間にか気づいたらがんじがらめの袋小路。人の破滅というのはいとも簡単に起こるんだなと戦々恐々です。 他のレビューにもあるように、後味は決して良くない。でもそういった結末にこそ、そこに人間の根底にある感情的な、理性では制御できない本質があるのだと思う。ここまで本作品に引き込まれるのだから、一理あるだろう。
投稿日:2023.09.15
ロッキー
解説にあるように、登場人物たちの人生、生きる空間が丹念に描かれていて、人が罪を犯すまでが、ものすごくリアルに、近所の噂話かのように感じられる。 一人一人が身近に思えるので、事件が起こる瞬間には、ああも…う取り返しがつかないと、とてつもないやるせなさに襲われる。 矛盾だらけで、本当に言いたいことは伝えられない、人間の哀しさみたいなものを感じる。 そんなずっしり重くてしんどい短編集だけれど、読むたびに発見があり、別の登場人物に共感できたりするので、何度も読み返している。 特に印象的なのは『万屋善次郎』『白球白蛇伝』。続きを読む
投稿日:2023.06.04
ふじ
Audibleにて読了。ナレーターが良かった。 短編だが、どの話もスッキリしない感じで、読後感はイマイチなものが多かったが、最終話の「白球白蛇伝」は心打たれた。
投稿日:2023.05.07
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