【感想】TRUST 世界最先端の企業はいかに〈信頼〉を攻略したか

レイチェル・ボッツマン, 関 美和 / 日経BP
(13件のレビュー)

総合評価:

平均 3.6
5
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3
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ブクログレビュー

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  • Mkengar

    Mkengar

    ボッツマンは「シェア」という本を書いたことで有名です。この本は、シェアリング・エコノミーの潮流をいち早くキャッチした本でしたが、本書も中身を読むと著者の先見性を感じました。確かに「信頼」という概念自体は古くから存在していますが、デジタル時代では信頼の形が大きく変わっている、いまはその過渡期であるという主張です。昔はコミュニティ内での信頼しかありませんでしたが、ついで国や企業、マスコミなど「制度」に対する信頼が生まれてきた。そして第3の波として「分散化された信頼」がデジタル技術の進展によって生まれているのです。

    本書の面白い点は、「信頼が分散化された」で本が終わっているのではなく、実は一周して集中する、あるいは向きが逆になるような動きもあることを指摘しているところです。例えば中国では社会信用制度ということで国民全員の格付けスコアをつける試みが始まっています。これは信頼の向きが逆になったと言えるでしょう。本来的には、国家がどうやって国民に信頼される存在になれるのかを考えるわけですが(特に選挙で政権が選ばれている国では「国民の信頼を得る」ことが最重要ポイント)、中国で導入されつつある制度では、「国民がどうすれば国に信頼されるようになるか」を考えるようになります。ある人物が、政府が好まない行動をとると、その人の格付けが下がり、日常生活に支障が出るような世界です。これは訳者後書きにも書いてあったように、ジョージ・オーウェル的な世界を想起させますが、個人的には古代中国の科挙制度が国民全体に適用される、というようなイメージも浮かびました。ただし、科挙であれば試験が終わってしまえば高得点を取らなければというプレッシャーは無くなりますが、中国の社会信用制度は終わりがなく死ぬまで息をつく暇がないということでしょう。
    「信頼」の構築の仕方、誰が誰に対して信頼を構築するのか、などが大きく変わりつつある時代だというのは本書を読んで間違いない気がしました。5年後、10年後に振り返ると本書が指摘するポイントの重要性はさらに高まっているのではないでしょうか。
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    投稿日:2023.05.02

  • ねもてぃー

    ねもてぃー

    信頼度がお金に変わり、ビジネスとして成り立つ奇妙な世界が何か解説されている。

    定性的なものを定量にする難しさをなり遂げる一方で、そこまで分析されてしまうのかという気持ち悪さが生まれる世界がやってきそ続きを読む

    投稿日:2022.11.06

  • アパカバール

    アパカバール

    1、信用する相手が変わってきている。広告への信頼がなくなり、口コミなどが信用されるようになってきた。そういえば、Googleの検索を使わず、TwitterやInstagramで情報を取り入れる人が多くなったなあ

    2、使わない機会損失をもったいない精神でシェアすることで大きなビジネスにつなげられる時代になってきたが、その際には”信用”をどのようにマネジメントするかが大事

    3、コントロールされたくない人たちがスタートアップで既存のシステムを作り替えたが、GAFAのように新たなプラットフォームとしてコントロール層に置き換わった。ヒエラルキーがなくなったというよりは新陳代謝が起こっただけ。
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    投稿日:2020.01.25

  • Touchy_sun

    Touchy_sun

    このレビューはネタバレを含みます

    【気になった場所】

    信頼とは
    ・未知のものとの確たる関係
    ・結果の予想であり、物事がうまくいく可能性が高いと期待すること
    →ほとんどすべての行動と人間関係と取引の土台になる

    孔子
    信頼は命よりも大切だ

    日常生活の中で、すでに人間よりもアルゴリスマムに信頼している
    →同時に、多くの人が変化の速さと指一本で手に入る情報量に圧倒されている
    →情報を整理し自分の信念を強めてくれるような小さなメディアに逃げ込む
    →自分の意見や偏見が増幅される
    →根拠のない不安、怒りは増幅し、制度への信頼は崩壊寸前
    →信頼の革命の入り口に立っている
    →分散された信頼へ

    分散された信頼とは
    →レーティングによってあらゆる商売が流行るか廃るかが即座に決まる一方、評価履歴により一つのミスが生涯付きまとう

    テクノロジーによって世界中の人たちが信頼の壁を飛び越えられる

    組織や制度が信頼と人々の信託を維持するには、罰則が必要

    他人とは誰のことか?
    →知らない人のことで、いい人もいれば悪い人もいる、信頼してもいい安全な他人もいる

    人が信頼を構築する行動パターン
    →アイデア、プラットフォームと企業、個人の順に信頼する

    新しいアイデアを信頼させるための問い
    ・それは何か?
    ・自分にとってどんな得になる?
    ・他に誰がやってる?

    信頼することよりも、信頼に値するかを判断することが大事

    信頼性の要素
    ・その人は有能か?
    ・その人は頼りがいがあるか?
    ・その人は正直か?

    ブロックチェーンの仕組み
    ・取引の要請
    ・取引データがブロックになる
    ・ユーザーによって取引が証明される
    ・取引のブロックがチェーンに加えられる
    ・取引が実行される
    ・取引記録が共有される

    ブロックチェーンの分類
    ・資産の譲渡
    ・サプライチェーンの証明
    ・スマートコントラクト デジタルの合意

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    投稿日:2019.06.13

  • やすお

    やすお

    新しい“信頼”のモデルが登場している。太古は、家族や地域の人々の間で構築される「ローカルな信頼」だけだったものが、警察や政府を通じた信頼関係である「制度への信頼」、そして現代のインターネット時代の信頼関係である「分散した信頼」というモデルまできた。分散した信頼では、デートアプリで会ったこともない人に会ったり、uberのドライバー評価を見て見知らぬ人の車に乗ったり、信頼する対象が変化している。それは、人々の意識の変革であったり、企業が信頼されることを第一に考えている企業理念による成功であるので良い。

    本書で怖かったのは、中国で実施している国民の格付けである。ちょっと前ならディストピアSFの定番のような話だが、着々と実現しつつある。政府にすべてを公表し、政府の視点で評価され、スコアが悪いとローンを組めなかったり、就職や進学もできない。人々は自分のスコアを落とさないために、政府への不満は表に出さず、政府に従順になるしかないだろう。個性を殺しかねない信頼のシステムの構築も始まっている。“信頼”というと良い言葉のように思える。実は“信頼”を構築するために、恐ろしいものが潜むのが怖い。最後はブロックチェーンの話がある。
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    投稿日:2019.06.04

  • ytaniwaki

    ytaniwaki

    人と人の信頼から制度的な信頼、さらに分散化された信頼に移行していくという整理の下、豊富な事例が紹介される。情報通信関連で久しぶりに通読した書。あまり話題にならなかった本だが、内容は濃く面白い。

    投稿日:2019.04.27

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