【感想】プラネタリウムの外側

早瀬 耕 / ハヤカワ文庫JA
(53件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
17
22
8
0
0
  • 混線する仮想と現実

    『未必のマクベス』の作者による、5編の短編連作。
    まず、タイトルが秀逸。これだけで購入決定ですよ。
    そして、その中身も期待を裏切らない良作だった。

    仮想と現実、過去と現在、夢と現が混線するその世界観に、酩酊にも似た心地良さ(というと語弊があるか)を感じながら、最後まであっという間に読み切ってしまった。

    『グリフォンズ・ガーデン』もすぐ読もう。
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    投稿日:2018.04.20

ブクログレビュー

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  • ペレンデール

    ペレンデール

    未必のマクベスが良かったので、横展開で手に取りました。世界観や設定は悪く無い。舞台が北大なのも興味深い。

    けど、恋愛小説が個人的に大嫌いなので星は少なめです(出版年と著者の執筆当時の年齢を必ず確認する癖があるので、内容と著者年齢の乖離があるとどうしても受け付けなくなってしまいます)。

    登場人物もあまり魅力的には感じなかった。
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    投稿日:2024.03.25

  • shintak5555

    shintak5555

    このレビューはネタバレを含みます

    読書備忘録758号。
    ★★★★★。ちょっと悲しくなったので5つ。

    サブタイトルにあるように、グリフォンズ・ガーデンの後日譚短編集です。
    知能工学研究所(グリフォンズ・ガーデン)が閉鎖され、有機素子コンピュータは北大工学研究室に移譲された。
    そして型番がイッコ進んでいてIDA-Ⅺとなっている。
    コンピュータを構成するブレード上で会話プログラム(いわゆる自己学習型AI)が動作しているという背景設定で物語が語られる。コンピュータを管理しているのは南雲薫助教授。
    短編が進むに従い時間がちょっとずつ進んでいく形式。

    【有機素子ブレードの中】
    航空会社が運行する3泊4日の寝台特急。下関⇔釧路を走破する旅。この列車に乗り合わせた北上渉と尾内佳奈。
    二人は意気投合して旅を道連れる・・・。
    ただ、渉が時々つぶやく・・・。つまらん、とか、彼が設定してるとか・・・。
    この時点で気づく。どうやらこれはブレードの中の仮想現実の中。
    北大工学研究室のぼくがプログラミングしているようだ。"ぼく"は、助教の南雲薫とAI会話プログラムを使った出会い系サイトを運営しており、年商で億を稼いでいる。バレたら助教をクビになること必至!
    そして、仮想現実の渉はどうやら、自分がプログラムであり、プログラミングした"ぼく"を意識して行動している。"ぼく"はこのブレードだけ処理が暴走仕掛かっているのを気にしている。バグか?
    そして、バグに気が付く!そこは設定していない!

    【月の合わせ鏡】
    "ぼく"は突然死していた・・・。
    プログラミングを没入すると3日徹夜するような不健康な生活が祟り、バグに気が付いた時に心不全に陥ったみたいです。
    通信工学専攻の"ぼく"(前話のぼくではない笑)は鏡に写った世界は現在ではないことにこだわる。光には速度があるので、鏡で反射した世界が目に飛び込んでくる時には時間は進んでいると。過去が写し出されていると。
    この合わせ鏡を無限に繰り返すと・・・。
    "ぼく"は南雲のところを訪れ、ブレードにこの世界を構築する提案をする。南雲のところで契約社員として働いているのは尾内佳奈(笑)。"ぼく"と付き合っている。
    ただ、この短編の本当の物語は南雲がキーボードで会話している"ナチュラル"と呼んでいる会話プログラムの存在。南雲は突然死した唯一無二のパートナーであった"ぼく"をAI生成したのだ。その会話、友人との会話から離れられない南雲薫、過去に雁字搦めとなり前に進めない悲しさが主題だ。

    【プラネタリウムの外側】
    工学部の佐伯衣理奈。
    教授の藤野奈緒に会話プログラムを作りたいと相談する。ここで藤野奈緒登場!グリフォンズ・ガーデンで主人公の上司だった女性ですね。どうやら、主人公と結婚して幸せに暮らしている模様・・・。笑
    奈緒は、衣理奈に南雲のところに行けと指示する。
    そして、南雲は不承不承、衣理奈の要望を受けいれてブレードを一つ割り当てる。
    そこにプログラミングしたAIは自殺した友人、川原圭であった。衣理奈と圭は高校時代交際したが別れた。そして大学では恋愛以上の友人関係を構築した。そう、圭は同性愛者だった・・・。圭には気になる男性がいたが、そいつはどうしようもないやつ。告白したい圭を引き留める衣理奈。しかし、圭は告白してしまい、結果、瞬く間に圭が同性愛者であることが学内に広まった。
    そして圭は札幌駅で電車に飛び込んだ・・・。
    圭の自殺を思い留まらせたい!その一心で圭のAIと会話する衣理奈。しかし、なんどやってもプログラムは強制終了してしまう。要するにプログラムの自死。
    このままでは、衣理奈は永遠にこの無限ループから抜け出せなくなる。衣理奈を救うために"ナチュラル"が書き換えた。衣理奈を無限ループから救い出す。同時にそれは過去に雁字搦めになっている南雲を救うためでもあった。
    プラネタリウムという天動説の世界と、その外側である地動説の世界。う~ん!深い!

    【忘却のワクチン】
    経済学部の"ぼく"。高校時代の彼女だった香織のリベンジポルノがネットに拡散された。
    "ぼく"はなんとかそれを消したい。どだいそんなことは無理。いろいろ相談したが、無理と断られる。唯一無理と言わなかったのは工学部の佐伯衣理奈。
    南雲と相談する。南雲はナチュラルと相談する。
    消去の方法はあった。それは人間が記録をコンピュータに依存し、それを元に記憶を保っている構造を逆手に使った驚くべき方法。ウィルス+対処ワクチンによる記録の消去と、人々の記憶の改竄であった。
    これはAIが人間の心に踏み込む禁忌であった・・・。

    【夢であう人々の領分】
    出会い系サイトを運営する南雲と佳奈と衣理奈。
    3人は社員旅行として、釧路から下関の寝台特急を楽しむことにした。しかしそれは別の目的もあった。
    偶然ではなく乗り合わせた奈緒。
    AIがヒトの心の領分に踏み込む禁忌を危惧し、出会い系サイトの閉鎖と、IDA-Ⅺの初期化の命令であった。
    そして初期化。南雲はつぶやく。ここは設定しているか?と。

    素晴らしい幾何学的恋愛小説でした。
    現実と仮想現実がフラクタル構造になっており、工学系の読者の心を鷲掴みにする。それでいて、切ない恋愛小説。なかでも表題作が圧巻。
    ただ、男がモテすぎるのがちょっと嫌ですね!笑

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    投稿日:2023.08.22

  • まる

    まる

    なぜか本棚に飾ったままになってた本。『十二月の辞書』を読んだので、いい機会だと思って読んでみたら、ちゃんと好きだった。
    たぶん知識的なところは半分も(もっと)理解できてないけど、出てくる登場人物が魅力的に見えることだけは間違いない。
    何かを失って、それでも誰かに支えられながら進んでいく姿は美しい。
    あと主人公モテて羨ましい。
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    投稿日:2023.05.29

  • 竹馬

    竹馬

    温かい血の通った幾何学的恋愛小説。めちゃくちゃ面白かった!もっともっとAI化が進んでいったらそれこそ記憶は無くすことは意外に簡単で記録が真実に変わって、何がなんだからわからなくなりそう。もう分からないともならないのかな。悲しいからわたしだってノートに鉛筆で書き留めるし、交換日記なんかもしてやろうかなと思った!続きを読む

    投稿日:2023.05.12

  • uettee

    uettee

    内容については正直、はっきり覚えていないが、AI、コンピューターなど、機械をメインに書かれているので、読んでいる時も、静寂したというか、パソコン等をいじっている時の不可思議な感じを、読みながら感じられる一冊かもしれませんね。読み手によっては神秘性も感じられる作品。続きを読む

    投稿日:2023.03.26

  • 1690419番目の読書家

    1690419番目の読書家

    このレビューはネタバレを含みます

    ドキドキした。
    合わせ鏡の発想、めっちゃ素敵であり怖くもあり、そして凄く納得させられてドキドキした。確かに、光の速度で反射してるから全て全く同じ時を反射している訳ではない。となると数を重ねて反射する内にズレは大きく生じていくはず…
    すごい発想。こういう考え方があるんやな…感動した。
    主人公達は仮想現実にいるのか、コントロールされてるのか?その辺の明確な説明はないが、そうかもね?と思わせて不安にさせられたのが上手い。
    良い本を読んだ感じ。

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    投稿日:2023.01.30

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