【感想】ナルニア国物語7 最後の戦い

C・S・ルイス, 土屋京子 / 光文社古典新訳文庫
(7件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • quatorze

    quatorze

    このレビューはネタバレを含みます

    ナルニアの終焉と、もうひとつの始まり。

    時はティリアン王の時代、大ザルによる偽アスランの出現は、大国カロールメンの侵攻を招き、ドワーフの不信も加えて、ティリアンを勝ち目のない最後の戦いへと導く。呼ばれたジルとユースティス、夢の中に現れた7名の王と女王、そして厩の中にあったものとは——。

    読んだことはなくとも、ナルニア国は最終巻で崩壊し、呼ばれた子どもたちが現実世界としては死ぬのだと知っていた。それは有名な作品であるためにネタバレは避けられなかっただけで、今回読んでみて、やはりネタバレを知っているだけでは意味がなかった。

    『銀の椅子』でもわかっていたようにアスランの国とは死後の世界である。ティリアンたちはナルニア国での戦いにおいて、ピーターたちはイギリスでの鉄道事故において、亡くなったのでアスランの国に集まり、再会する。ナルニア国の最後の戦いはまるで聖書の最後の審判であり、世の終わりにやってくる神の国がアスランの国と重なる。先にナルニア物語に現れるキリスト教的なモチーフの話を聞いてしまっている身として、そのような理解は仕方ないかもしれない。

    しかし愛すべきリーピチープをはじめ、今までの登場人物の名前が次々と並ぶくだりは嬉しいものだ。もう一度皆に会える感動的な大団円である。現実世界において死んでしまっているけど。でもいつか自分も影の国を離れて本物の世界へ行ける、そこでは皆に会えると思ったら。それは幸せだと言えるだろう。死への恐怖がすべて拭いさられるわけではないけど。

    ところで解説でも触れられていたが、現実世界としては1人残されてしまったスーザンはその後どうしたのだろう。ストッキングや口紅に夢中になっている、なんと年頃の女の子なのかと。願うなら自分では忘れていたとしてもかつての女王のように強く生きていってほしいし、いつか年老いてからでもナルニアのことを思い出して、アスランの国に来て、皆と再会してほしい。

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    投稿日:2023.10.29

  • Minmo

    Minmo

    このレビューはネタバレを含みます

    ナルニア国物語の最終巻。とうとうここまできた。

    冒頭、“ナルニア最後の日々”という書き出しから始まり、それまでの一連の物語と異なって、序盤はどこか不穏な、ぞわぞわする空気が漂う。リリアン王の時代からすでに200年以上が経過し、ナルニアの住民の中にはアスランを信じない者たちも少なからずいるようになった。その心の隙間をぬって、大ザルのシフトが隣国のカロルーメンと組んで偽アスランを擁立。ナルニア王ティリアンは果敢に立ち向かうが…。

    今回は、一人を除き、これまでの登場人物がフルで登場する。まさかユースティスがここまで成長するとは、初登場時からは想像もできなかった。ナルニアの創造から始まった物語は、ナルニアの「崩壊」で幕を閉じる。物語の背景にあるのは、キリスト教的終末論であることは明らかだろう。黙示録ではラッパを吹き鳴らす天使たちが登場するが、ナルニアでは時の翁が角笛を吹き鳴らし、世界を終末へと導くのである。

    ルイスによるナルニアの終末の描写はとても視覚的である。これを子どもの頃に読んでいたら、良くも悪くも軽いトラウマになっていたのではないかと思う。それほどに異質で、かつ圧倒される。ただ、だからこそ、変な知識のバイアスがない子どもの頃にこの本を読んでおきたかったと思う。この最終巻によって、ナルニアは確実に他の多くの類書と一線を画す物語となった。

    Kindleで安く電子版の合本が買えるので、思わず原著を入手した。これは子どもの頃にはできないことだろう。折に触れ読み返して長く楽しみたいと思う。

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    投稿日:2022.01.15

  • なつく

    なつく

    ナルニア国最終話。私は『魔術師とおい』から読んだから、てっきりジェイディスとアスラン側の戦いかと思っていたんだけど、そうではなかった。
    ずっと読んできたナルニアがなくなってしまうのは、とても寂しかったけど、極めてキリスト教的な話だな、と思いながら読了した。続きを読む

    投稿日:2021.08.06

  • yuko-romarin

    yuko-romarin

    最後の戦いというタイトルからスターウォーズみたいなものを想像していたけど、違った。
    もっと地味で、むしろ「黙示録」を彷彿させる。

    投稿日:2020.01.28

  • midnightwakeupper

    midnightwakeupper

    井辻朱美の解説はネタバレ
    リリアン王から二百年も経つとナルニアの空気も濁ってきて、(20世紀の執筆当時と同じく)“救世主の再来”と思われた獅子があとで「なんであんなに従順に恐ろしいことをしたのだろう」Tyrantだったりする。王と一角獣が殺人をしたのは良くなかったが劫初から植わっていた〈国の守りの木〉を伐ることは、国家反逆罪に当たる。引き返しで名乗り出たのは最悪だった。“保護者”たるべきルーンウィットはあっさり殺され、地球からの二人が事情がわからないのは同じ。
    偽アスランは早くに正体がバレるが、
    熱望するアスランは姿を見せない。
    魔神は実在した。位相転換した世界で〈ナルニアの友〉はMentorとなり
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    投稿日:2018.11.09

  • Στέφανος

    Στέφανος

    原書名:THE SILVER CHAIR

    〈大釜池〉のほとりで
    王の早計
    大ザルの天下
    その夜に起こったこと
    王に助け現る
    一夜の大仕事
    ドワーフの本性
    ワシがもたらした知らせ
    〈厩の丘〉の大集会
    誰か厩にはいる者は?
    急転直下
    厩の中へ
    かたくななドワーフたち
    ナルニア、夜となる
    もっと高く、もっと中へ!
    影の国に別れをつげて

    著者:C・S・ルイス(Lewis, Clive Staples, 1898-1963、北アイルランド、小説家)
    訳者:土屋京子(1956-、愛知県、翻訳家)
    解説:山尾悠子(1955-、岡山市、小説家)
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    投稿日:2018.10.30

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