【感想】室町繚乱 義満と世阿弥と吉野の姫君

阿部暁子 / 集英社文庫
(18件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
5
7
1
0
0
  • 楠木正儀の生き様

    「義満と世阿弥と吉野の姫君」このサブタイトルは要らないんじゃない。というか作中でそれ以上に活躍するのが楠木正儀と観阿弥 (特に後半) 、本作ではこの二人が実は従兄弟という説を採用しています。

    人公の内親王「椿宮透子」様は創作かな。南朝の亡き後村上天皇の末子で今上帝の妹にあたる数え13歳の姫君という設定です。表紙は長い黒髪をバッサリ切って男装し吉野の行宮を抜け出すところ。黒髪と衣装が高く売れて旅の資金にしようとしたもののいきなり置引きに金品を奪われ、なんとか京都にたどり着いて道を尋ねたら女子供を攫って売買する人売りで、という漫画のような始まりですが、しっかりとした考察のうえに成立する物語の絶妙な展開がすばらしく、また登場人物たち (鬼夜叉、義満、正儀、宗良親王ら) のセリフ一言一句が心に響きます。 (これうまく実写映画化したら大作になるんじゃないかなと思います。)

    南北朝の無益な対立を和睦で終結しようとしながらも志かなわず病に倒れた後村上天皇。後村上天皇亡きあと南北朝統一の実現のため自身は汚名をかぶって生きる楠木正儀。「ありがとう、正儀」報われぬ楠木正儀をねぎらうために一遍の小説が誕生したのかもしれません。 (Wikipediaの楠木正儀の解説もすごいなあ。)
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    投稿日:2019.09.06

ブクログレビュー

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  • なー

    なー

    後村上帝崩御後、細川頼之を介して、楠木正儀が北朝方へ出奔…までは史実通り。そこへ(妾腹とはいえ)後村上帝の皇女が、吉野から北朝の支配する京都まで乗り込んで来る…にはアングリしたけど。

    まあでも、「ザ・王者」の足利義満はこんなモンとして、「しなやかで動じない美形枠」の観阿弥と「クソ真面目な忠義者」正儀は対照的な従兄弟同士で、まだまだ幼い鬼夜叉時代の世阿弥は健気。
    更に(個人的に)中々馴染めない細川頼之と斯波義将が、それぞれ義満の「パパ枠」と「幼馴染枠」…みたいな分かりやすいキャラクタを貰ってて、随分と助かった。

    確かに、戦国の世の足音が近づいてきていたこの時代に、その到来を百年遅らせたのは足利義満その人かも。尤も後に続いた孫息子たちがアレじゃあねえ。

    宗良親王のような、少年期から老年期まで全国で足利と戦い続けた皇子の存在を知ることができて良かった。
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    投稿日:2024.03.04

  • コルベット

    コルベット

    魂魄は室町の世に咲く
    賑やかなる京の町へ。

    風吹かば道端の柳から
    枝垂れがそよぎ、

    築地からのぞく純白の
    橘が香を散らす─

    さかしくはねっ返りの
    姫君が、

    市井の人情に触れ己の
    世間知らずを恥じ入る
    その姿に

    柳が枝垂れの繊細が故
    の美しさが。

    そして、再び顔を上げ
    歩き出すその姿に

    甘やかなるも清々しい
    橘の香しさが。

    それらが重なり合って
    醸しだすこの読後感は、

    世知辛い現世に投じる
    一服の清涼剤です。
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    投稿日:2024.02.24

  • sitibu

    sitibu

    初めて足利義満が出てくる小説読んだかもしれない。南朝の姫宮が北朝に行って、成長する物語でした。南北朝時代はたしかに波乱だったかもしれませんが、登場人物の観阿弥、世阿弥などなど、文化的に華やかな時代ですよね。
    破天荒な姫宮が言いたいことぽんぽん言ってくれて面白かったです
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    投稿日:2023.12.06

  • マミ

    マミ

    室町時代、南北朝の争乱をテーマにドラマチックに
    書いた時代小説。

    時は、室町幕府、三代将軍、足利義満の時代。
    南朝の皇女・透子は、ただ一人乳母、唐乃を連れ、密かに吉野の行宮を抜け出し、南朝を裏切り、北朝へ寝返った、楠木正儀に翻意を迫るため、京へ向かった。

    京に着いた早々、人買いに拉致されてしまった二人。

    その二人を救出したのは、仇敵、足利義満と、猿楽師の鬼夜叉(後の世阿弥を名乗る美少年)だった。

    後醍醐帝の遺志。志半ばで死んでいった同士達の思い。それらを背負い、40年間募らせた憎悪を捨てられない宗良親王。
    不毛な戦いであるからこそ一刻も早く終わらせて、これから先、100年を見据えた政をするべきとする義満の主張。

    噛み合わない主張に、巻き込まれる、透子。

    肩肘張らない内容で、でも、感動的で、ページを捲る手が止まらなかった。

    歴史的には、遭遇していないと言うが
    義満と言えば一休さん。
    一休さんのお話に出てくる義満とは、全然違った。
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    投稿日:2023.09.12

  • haruka2006

    haruka2006

    中学生の娘のためにジャケ買いしたのに、本人よりも私がハマり、後半は泣きながら一気読みしてしまいました。
    自分の受験生の頃の微かな記憶をたどりながら、南北朝時代がこんなに面白いとは…。また主人公をはじめ、吉満、鬼夜叉、正儀などキャラ立てが秀逸。

    どなたかが書いていましたが、コバルト文庫、氷室冴子の名作を思い出させる文章で、非常に読みやすいです。そして泣ける(笑)

    続編があるなら読みたい、室町時代をもう少し深掘りして学び直したい、久々にそう思えました。この作者の他の本も読んでみよう…!




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    投稿日:2021.01.30

  • 三田主水

    三田主水

    http://denki.txt-nifty.com/mitamond/2018/03/post-34c2.html

    投稿日:2020.02.29

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