【感想】デービッド・アトキンソン 新・生産性立国論 人口減少で「経済の常識」が根本から変わった

デービッド・アトキンソン / 東洋経済新報社
(44件のレビュー)

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ブクログレビュー

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  • たぁたぁたぁ

    たぁたぁたぁ

    観光立国への根本的改善には王道を改善し極める。その大切さを改めて伝えてもらったと思います。電化製品の衰退も、余計な機能にこだわったせい。全てに共通する日本の課題ですね。

    投稿日:2023.09.07

  • japapizza

    japapizza

     アナリストとして働いていたころから、つくづく「日本は本当に根拠の検証をしない国だ」と思っていました。1990年代から日本政府のさまざまな委員会にかかわり始め、その思いは一層強くなりました。委員会の会議では、物事が感覚的に話されていて、その根拠を検証することも当然ありませんでした。


     1990年代に入ってからの日本経済は、4つの要因によって需要が減っています。
    (1)労働人口の減少による需要減(マクロ要因)
    (2)世代構造の変化による需要の変化(ミクロ要因)
    (3)平均給与の減少による需要減
    (4)福祉制度を充実させるための、政府の設備投資削減による需要減

     日本経済は主にこの4つの要因によってデフレに陥りました。デフレが起こったメカニズムをトレースすると、経営者の罪深さがわかります。デフレは次のようなメカニズムで起きました。
    (1)人口が減っているので、需要が不足
    (2)需要を喚起するために価格を下げる
    (3)人口が減っているので、需要は喚起されない
    (4)価格を下げた分だけ平均給与を下げる
    (5)所得が減るから需要がさらに減る
    (6)所得が減るから税収が減る
    (7)税収が減るのに高齢化によって社会保障費が増える
    (8)社会保障費を払うために、政府は公共工事などの設備投資を大幅に減らす
    (9)企業も需要が戻らないから設備投資を減らす
    (10)需要を喚起するために、経営者は価格をさらに下げる

     この一連の流れの中で、経営者たちが起こしたもっとも大きなミスは、平均給与を下げたことです。これが、日本経済がデフレになった最大の原因です。給与を決めるのは他の誰でもなく経営者なので、経営のミスだと断言します。
     たしかに、経済学の教科書には、価格を下げれば需要が増えると書いてあります。ただし、その論には「経済は正常な状態にある」「人口増加によって潜在的な需要が増えている」という前提が隠れています。価格を下げると需要が増えるという理屈の裏には、消費する人口が減らないという隠れた前提があるのです。
     日本の経営のミスの大本はここです。人口が減っていっている中では、価格を下げてはいけないし、給与も下げてはいけないのです。


     OECDの生産性に関する報告書(The Best versus the Rest: The Global Productivity Slowdown, Divergence Across Firms and the Role of Public Policy)では、以下のような指摘がなされています。
     先進国で最近、生産性成長率が低下している理由は、生産性の悪い企業に対する各国政府の支援と低金利政策により、企業の新陳代謝が低下し、生産性の低い企業が生き延び、経済に占める生産性の低い企業の比率が上がっていることにある。生産性の低いままの企業は低い給料しか支払えないので、継続的に付加価値を高めている企業との差が開くことにより貧富の差が拡大している。
     きわめて示唆に富んだ深い指摘です。1990年代からの日本政府の政策ミスを如実に語っているように思います。
     日本の場合、ミスの本質は単純ではありません。歴代政府の期待に企業が応えてこなかったことがミスの本質で、一方、企業の動きを予想できなかったことが、政府のミスでした。


     私はこの3年間、ずっと日本の生産性問題を研究してきました。さまざまな仮説を検証しては潰して、また仮説を立て検証する、その繰り返しをずっと続けてきました。そして、理屈をそぎ落としていった結果、ついに究極の結論が見えてきた気がします。それはこの鉄則です。

     これからの日本人は、世界中でもっともお金にうるさくならなくてはいけません。それが、これから迎える超高齢化社会で社会保障制度を維持していくための最低条件です。

     これからのリーダーたるものは、とにかく付加価値を求めて、日本人労働者に適正な給料を払えるだけ稼げる商品とサービスを開発することが使命として課されます。今までは、リーダとして果たすべき社会への貢献は、人口の増加に応じて雇用を増やすことでしたが、これからの時代は雇用を増やすことではなく、給料を上げることが社会貢献となります。
     極端な言い方をすれば、日本は世界一お金を稼ぐことにうるさい国になるくらいの覚悟が必要です。それができなければ、途上国に戻るか、社会保障制度をやめるかのいずれかの選択を迫られるようになります。
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    投稿日:2023.01.02

  • rafmon

    rafmon

    主張はデービッド・アトキンソン氏の別著と変わらず、一貫しているために学びは少ない。反復や確認、理解の深化には役立つ。日本のGDPを成長させたのは、日本人の器用さや真面目さ、秀でた技術力が本質的な要因ではない。主因は人口ボーナスによるものだ。人口減少に転じる時、我々がやるべき事とは。生産性向上の阻害要因は、規模が小さく生産性が低い会社の淘汰が進んでいない事や女性活躍が進んでいない事。どうやら日本の精神論的思い込みや文化的背景が理由にありそうだ。

    私個人の体験。本著にも通じて、思わず納得した事。数年前、あるホテルに宿泊した。ホテルからホテルへ、旅を続けるため荷物は多く、移動の疲れもピーク。フロントに辿り着き、荷物を置いてチェックインの手続き。ようやく人心地。笑顔で出迎えるフロントの女性、少し離れた自動チェックイン機をお使い下さいと。その笑顔は逆効果。ため息をつき、タッチパネルと向き合った。

    一事が万事とは言わぬが、デービッド・アトキンソン氏が繰り返し呈する「日本のおもてなしの勘違い」に非常に共感する。個人の意識にも問題があるが、やはり労働力も商品も適正価格に見直し意欲を向上すべきだし、それにより管理の質とインセンティブの原資を上げる事で、改善の声をその意識向上と共に反映していくべきだ。付加価値向上のポジティブな循環を起こさねば。
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    投稿日:2022.11.10

  • eisaku0330

    eisaku0330

    意外に「熱さ」を感じる本でした
    今の日本は「保身第一」現状維持で改革・変化を忌避している
    ⇒シンプルな目標を立ててチャレンジを
    人口減少は改革を強いる 経営者・行政・政治
    日本人は長期的に取り組むのが苦手 ずるずると悪化する続きを読む

    投稿日:2022.11.05

  • orangewind

    orangewind

    デービッド・アトキンソンさんが書いた日本をどのように再生するのかについて書いた本。とてもロジカルで論の要旨としては「最低賃金を上げる」「女性の賃金を上げる」「生産性の低い中小企業を減らす」という感じですが、どれも実現すれば日本の生産性向上に大きく寄与すると感じました。

    一方で、この方は様々なところで反発を受けていますが、その理由が「ロジカルすぎる」ところに有ることもよく分かりました。

    現在の国策的にも「最低賃金は上げている」「男女の年収平均を開示する」という方向性にあるため、あとは「生産性の低い中小企業を減らす」という事が出来れば、日本も良い感じで経済成長していくのでは、と感じました。
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    投稿日:2022.06.15

  • ぺいちゃん

    ぺいちゃん

    人材は良いのに高品質・低賃金という現状。
    接客業で見たら他国では真似が出来ない行き届いたサービスとおもてなし、観光業で見たら素晴らしい伝統と文化財の数々がある。
    じゃあ何が欠けているか?
    付加価値、女性の社会進出、最低賃金の上昇など様々な課題が浮かび上がる。
    そして、生産性を高めるために増えすぎた企業を淘汰する時期に入ってきた。ただ利益を増やすだけの目標を掲げるのではなく、付加価値の創出や持続性のある生産性向上、品質管理も含めた事業を残していくべきだ。
    続きを読む

    投稿日:2022.06.01

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