羊と鋼の森

宮下奈都 / 文春文庫
(397件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
114
145
82
13
2
  • ピアノ調律の奥深さ

    本屋大賞にもなり,映画化も予定されている作品。

    いなかの高校の体育館のピアノ。それが,その人に魔法をかけられたようにまったく違う音を奏でた瞬間,主人公のその後の人生を一変させてしまう。
    ピアノは鍵盤を押す楽器ではなく,その鋼の弦をフェルト(羊の毛)でできたハンマーで叩く楽器で,その調律によって,まったく違う音色が現れる。

    『よろこびの歌』,『終わらない歌』にもコメントしたように,この作家さんは音楽のそして音の表現力が秀逸。
    この作品でもそれがあってこそ成り立ちます。
    ピアノを持っていても,調律師の存在など気にしませんよね。音を正確に合わせる人,という認識しか私ももっていませんでした。でも,音を『正確』に合わせても和音で生じる音の濁りなど,音楽の授業の楽理でちょっとだけ聞いたようなことが,きらきらした音のイメージとともに浮かび上がってきます。
    本のタイトルからは何の話か分からないですが,とっても良い作品でした。
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    投稿日:2018.02.24

  • 言い得て妙なるタイトル

     このタイトルから調律師のお話と想像する人は、まずいないでしょう。私も、本屋大賞を取らなかったら手にしなかったかもしれません。勿論、読んでみれば、その意味するところがよくわかります。羊と鋼を駆使して構築する世界。一つの技術、一つの芸を追求しその深淵に迫るということは、時には出口のない森に迷い込んだようなものなのでしょうね。
     私自身は調律師と言う仕事は知っていましたし、幼き頃、エレクトーンを習っていたときに、楽器店でチラッと見たことはあります。ただ、最も意識したのは、ピアノではなく、チェンバロのコンサートに初めて行ったときであります。弦をひっかいて音を出すチェンバロは、ピアノ以上に音がずれていくようで、一曲終わる毎に、舞台袖から調律師の方が出てきて、調整をされていました。チェンパロのコンサートですから、大ホールというわけではありませんが、満員の観客の前で仕事をするのは、かなり緊張するだろうなぁ、と思ったことを覚えています。
     さてこの物語は、調律という音の世界に魅せられてしまった青年の成長物語であります。数々のエピソードが語られますが、さほど劇的なものはありません。しかし、全く知らなかった未知の世界のお話であり、趣味で音楽をやっている私にとっては、とても興味深いものでありました。そして、この数々のエピソードに彩りを与えるのが、個性的な調律師仲間であり、また双子の姉妹であります。それに加え、佐藤多佳子さんの解説で初めて気がついたのですが、主人公のファーストネームがどこにも書かれていません。僕という一人称で書かれているにも関わらず、どこか神秘的であり、普通の小説にはない雰囲気を醸し出しているのは、そのせいかもしれません。
     一方、「音の景色がはっきりと浮かぶ。」とか「透き通った、水しぶきみたいな音。」等という、とても魅惑的な表現が、そこかしこに出てきて、作者の感性の豊かさにも驚かされます。
     この小説が映画化され、近々公開されるとのこと。文字で表された魅惑的な世界を、どう映像と音で表現されているか、楽しみであります。
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    投稿日:2018.05.31

  • すがすがしい青春小説

    20代の青年の成長物語。
    途中で壁にぶち当たったり、挫折しそうになりながら、10代後半からの夢を純粋に追い続けていくということから、青春小説と言っていいと思う。主人公の周りの人たちの言動も、人生訓になっているし。
    すがすがしい読後感。
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    投稿日:2018.03.21

  • とても静かな物語だった。

    調律師という職業の深さ、調律にも才能とセンスが現れること、ピアノが羊と鋼でできていること、何もかも新鮮で興味深かった。主人公には果たして才能があったのかなかったのか、ただ、彼は、自分には何もないと、それでもひたすら調律に取りくめるブレない姿勢は、ある意味、とても強くてうらやましい。それはすでに才能だと思う。続きを読む

    投稿日:2018.04.24

  • 『羊と鋼の森』そこには大きな世界が。

    たまに行くコンサート、音楽会、ライブでただの一度も景色や気配、匂いなんて感じたことはない。これは手ごわい、根本から何かが違うな。
    なので外村青年の感じているイメージを通しての、景色や感覚を想像してみる。
    例えば、いくつもの美しいものを発見した時の、静謐であり温かく強さもある表現がいくつも現れて、それはもう。
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    投稿日:2018.05.02

  • とても爽やかな読後感

    狭い我が家にもピアノがあったんですが、そんな知識はなくとも、ただひたむきで誠実な主人公に共感と感情移入がしやすくすらすら読めました。

    投稿日:2018.06.10

ブクログレビュー

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  • aida0723

    aida0723

    ピアノもクラシック音楽も全く知らないし、これからも近寄ることはなさそうだけどこの物語は面白かった。調律師における「プロフェッショナル 仕事の流儀」だから、あらゆるプロフェッショナルに通じる普遍性を感じたのかもしれない。外村は就職して3年経っても、先輩によく質問をしてそれを愚直にメモを残す。江藤楽器の先輩たちはこれに対してそれぞれが個性的に答えている。オイラも初めて入社した会社で多くのことを教えてもらった。最初に出会った社会人がその人たちで本当に良かったと思う。それくらい社会人一年生にとって先輩の存在、その後の影響は大きい。そして、外村の板鳥、秋野、柳に対する質問は先輩たちが自分たちの仕事を確認する機会になっている。素晴らしい関係だ。
    和音のピアノの練習にも驚かされる。いくら弾いてもぜんぜん疲れない。努力をしている認識ではなく、本当に好きだからいつまでも弾いていたいのだろう。誰のためにでもなく、自分にとって本当に大切で必要なものを見つけられた人たちは幸せだ。この物語の登場人物たちはそういう意味ではすでに「幸運な人間」だ。オイラみたいに特に取り柄がない人間は何をしても才能がないなんて思い込んでしまう。才能なんて言葉を使うのも憚れるけど、クールな秋野がカッコいいことを言っていた。
    「才能がなくたって生きていけるんだよ。だけど、どこかで信じてるんだ。一万時間を越えても見えなかった何かが、二万時間をかければ見えるかもしれない。早くに見えることより、高く大きく見えることの方が大事なんじゃないか」
    会社の鑑定師たちに薦めたい一冊だ。
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    投稿日:2019.06.09

  • めんたるぷりん

    めんたるぷりん

    軽やかで、テンポが良くて、とても読みやすい文章。一文一文が短いため、私の胸の中にすっ、と入ってきた。

    大きな事件が起こるわけではないのに、こんなに面白く感じる小説は、そう多くないのではないか。それでいて主人公の成長がはっきりと見られる。
    小説そのものが、軽やかなピアノ曲のようだった。

    また、作者の擬音語や日本語の表現がとてもきれいだと思った。こつこつ、や、つやつや、など日本語ならではの温かみを感じた。

    私も外村のように、これからの人生を変えてくれる程の何かに出会いたい。
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    投稿日:2019.06.01

  • えぬし

    えぬし

    とても話題になっていたので、期待して読み始めたのですが、
    私にはあまり面白さがわからなかった。
    どのような調律師を、どんな音を目指すのか、主人公が模索し、次第に答えを見つけていく様は興味深かったですが
    結論はそれでいいのか…と私は思ってしまいました。
    続きを読む

    投稿日:2019.06.01

  • みずたま

    みずたま

    小説ってこのくらいのボリュームが正解なのかも。この先、外村くんや双子がどうなるのかは読み手の中に出来上がった世界で生きていくわけですね。調律でどのくらい音が変わるのかは体験したことがないのでわからないけど、弦楽器のギターはその場でチューニングできるのと比べたら1年に1度は少ないのかもしれないね。実家のピアノはおそらく30年くらいほったらかしです。続きを読む

    投稿日:2019.05.30

  • Teddy

    Teddy

    2016年本屋大賞受賞作。映画化もあって文庫化された去年に買って1年ちょっと積読。
    ピアノ調律師の青年の苦悩と成長を描いた作品。
    これを読んだら、30年近く放置されているうちのピアノってそのままでいいのかなっていう気になった。
    でも、こうやって運命的な出会いで自分の天職決められたらいいなとも思った。
    続きを読む

    投稿日:2019.05.29

  • nakaizawa

    nakaizawa

    「羊と鋼の森」宮下奈都著、文春文庫、2018.02.10
    276p¥702C0193(2019.05.27読了)(2019.05.26拝借)(2018.02.25/2刷)

    外村(とむら) 主人公
    鳥宗一郎 江藤楽器、調律師
    柳 調律師
    濱野 柳の彼女
    秋野 調律師
    北川 江藤楽器、事務員
    佐倉和音 双子姉妹の姉
    佐倉由仁 双子姉妹の妹

    【目次】
    羊と鋼の森
    謝辞  著者
    解説  佐藤多佳子

    ☆本屋大賞受賞作(既読)
    「博士の愛した数式」小川洋子著、新潮社、2003.08.30
    「夜のピクニック」恩田陸著、新潮社、2004.07.30
    「一瞬の風になれ(1)」佐藤多佳子著、講談社、2006.08.25
    「一瞬の風になれ(2)」佐藤多佳子著、講談社、2006.09.21
    「一瞬の風になれ(3)」佐藤多佳子著、講談社、2006.10.24
    「ゴールデンスランバー」伊坂幸太郎著、新潮社、2007.11.30
    「告白」湊かなえ著、双葉文庫、2010.04.11
    「天地明察」冲方丁著、角川書店、2009.11.30
    「謎解きはディナーのあとで」東川篤哉著、小学館、2010.09.07
    「舟を編む」三浦しをん著、光文社、2011.09.20
    (「BOOK」データベースより)amazon
    高校生の時、偶然ピアノ調律師の板鳥と出会って以来、調律に魅せられた外村は、念願の調律師として働き始める。ひたすら音と向き合い、人と向き合う外村。個性豊かな先輩たちや双子の姉妹に囲まれながら、調律の森へと深く分け入っていく―。一人の青年が成長する姿を温かく静謐な筆致で描いた感動作。
    続きを読む

    投稿日:2019.05.26

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