【感想】松本清張 「隠蔽と暴露」の作家

高橋敏夫 / 集英社新書
(4件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • minerva-48

    minerva-48

    本書の紹介文「戦後最大の隠蔽装置ともいえる「原子力ムラ」にふみこまなかった清張の謎にも迫る。」に惹かれて購入した。松本清張の著書は、今まで数多く読んできたが、核兵器や原子力発電所を扱った小説や著書には遭遇しないからである。唯一発行されていのは、清張にしては異質のSF的小説、核弾頭ミサイルがに東京を目掛けて飛んでくる『神と野獣の日』のみ。この「なぜ、清張が原子力発電所を扱わなかったのか?」については、本書最終章で取り上げられているが、やはり、そこには明確な回答は導かれていない。しかし、少なくとも、日本のみならず国際的な問題として巨大かつ強大な「隠蔽」の仕組みを感じていた清張の足跡はみられる。続きを読む

    投稿日:2023.02.26

  • まほろば

    まほろば

    「隠蔽と暴露」をキーワードに、作品を八つ【戦争・明るい戦後・政界、官界、経済界・普通の日常、勝者の歴史・暗い恋愛・オキュパイドジャパン・神々・原水爆、原子力発電所】にわけて論じた清張論。清張の作品は好きで結構読んだけれど、本書では清張論ゆえ完全ネタバレあり。なので要注意。
    内容は興味深く面白いかといえば、個人的にはNO。大学教授が書かれているから仕方ないが、もっと普通に清張を楽しみたい派。
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    投稿日:2019.05.10

  • さぬきうどん人

    さぬきうどん人

    著者いわく、松本清張のブームが再びやってきたらしい。が、清張作品は昭和だろうと平成だろうと、読まれ続けた。おそらく平成の後でも常に読まれ続けるはず。今さらブームもないだろう、という気がするが、それは置いといて。

    松本清張は社会で隠蔽された事実を追求し、暴露することを生涯のテーマとした。その暴露手段が小説やドキュメンタリーであり、その結果が社会派推理小説の先導者としての地位を築いた。

    清張作品は戦時中や占領下の日本や政財界、官僚社会などの闇や謎を読者に問う。そして、その謎が明らかになるとともに、新しい謎が生まれる。決して、決定的な真実は登場しない。その繰り返しこそが、清張の創作意欲の源だ。

    晩年の清張が興味を持ったのは天皇制と原発問題。現在でもタブーとなっている問題。大御所、松本清張が生きていれば、どんな作品を発表し、世間はどのように受け止めただろうか。
    続きを読む

    投稿日:2018.09.20

  • tosyokan175

    tosyokan175

    今こそ「松本清張力(?)」が必要である!という強い想いが著者を駆動しています。安保法制、特定機密保護法、そして、モリカケスパ、さらにはセクハラ問題に至るまで「公」と言われる領域がおかしな事になっている昨今、いやいや憲法改正も公然の政治日程になっている憲法記念日についに手に取りました。自分にとって清張は、小学生時代の子供の読書から中学生になって大人の読書の入り口を開けてくれた人で、つまり怪人二十面相じゃなくて、普通のおじさんおばさんが大人の事情で犯す事件にびっくりして、それが「日本の黒い霧」まで一気に貪った作家でした。読後には子供読書にある爽快感はなく、どんよりとした割り切れなさや解決されない怒りがあり、それが大人読書の味わいだったのです。だから、いろんな人の清張論をついつい手にするのですが、本書で気づいたのは清張そのものが手法としての「かんぐり」と「邪推」を積極的に使っていたこと。《情勢はたえず転変しておりますから、現在の客観的な分析だけで将来を見通すことはできない。あらゆる将来の可能性を考えて、あらゆる「かんぐり」をし、「邪推」でもなんでもよろしい、そういうものをもって、日本の指導層の将来の計画を見なければならない。「邪推」はなにも恋人のうえだけではない。国家のうえでも大いにこれをやってもらいたい。そして、目には見えないけれども、現在の憲法改悪論者のうしろだてが、アジアの戦力の肩代わりを日本に押しつけようとするアメリカであることをはっきり指摘したい。》1972年のアンセム。「かんぐり」「邪推」を厭わない(そして、間違うことも多々。)パワーが人々の心とシンクロし、彼を国民作家にしたのだと思いますが、45年経って今は「かんぐり」「邪推」がフェイクとして、隠蔽している側から非難される時代になっています。だからこそマグマ大使のように松本清張は召喚されているのでしょうが…彼の方法論が現代性を獲得するには何が必要なのでしょうか?続きを読む

    投稿日:2018.05.05

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