【感想】欲望の民主主義 分断を越える哲学

丸山俊一, NHK「欲望の民主主義」制作班 / 幻冬舎新書
(9件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
3
2
3
0
0

ブクログレビュー

"powered by"

  • QAZ

    QAZ

    NHKの『欲望の民主主義』がとても面白いので、こちらも読んでみましたが、現代の課題を考えるにはとても良い本だと思います。
    民主主義も資本主義も、現代においては主流の政治経済理念ではありますが、これらはあくまでも歴史の流れの中で求められた思想であって、至高のものではありません。そして、現代においては、日本に限ってみても、どちらも行き詰まり、閉塞感を感じている国民が多いと思います。この閉塞感がどこから来ているのかを明らかにしているのが本書です。
    どちらも当初は必要であり、むしろ大事な思想でした。ですが、どちらもそれぞれに課題を抱えているのは当然であり、長く延命した分、行き詰まりから抜け出られなくなっています。
    特に資本主義はその性質上、もはや人類は太刀打ちできないところまできています。なので、もう一方の民主主義をアップデートし、本来の民主政治を取り戻し、維持しながら、資本主義に立ち向かっていくしかありません。
    時代は、ちょうど分岐点にあります。我々の選択が、子どもたちの将来を作るのであれば、正解も誤りも含めながら一人一人が真剣に考えなくてはいけない、そういう時代です。
    続きを読む

    投稿日:2022.09.19

  • tomo112

    tomo112

    本書が出版された2016年、トランプ氏が大統領選挙で当選した年、民主主義は世界的に危機にあった。ポピュリズム政党、政治家が欧州で躍進、日本の都知事選も国際的にはポピュリズムと評される。
    これまでも投票率の低さ、政治への無関心は言われてきたが、昔の無関心は、投票しなくても無難な結果、という空気だった。だが今は、政治への信頼が失われている。選挙で選ばれた者は民意を代表しない、つまり代表制民主主義そのものに疑念が抱かれている。これは時代の変化に民主主義が対応できないのか、それとも民主主義そのものに欠陥があるのか。

    本書は、そんな時代の空気の中、米国とフランスの政治学者、心理学者、哲学者へのインタビューを通じて民主主義への処方箋を模索する。民主主義の原点といえるホッブスのリヴァイアサン、ルソーの社会契約論に立ち戻り、共同体を維持するツールとしての民主主義、平等と平和の理念のための民主主義、哲学としての民主主義、様々な視点から民主主義を説き直す。どの論者にも共通するのは、民主主義は所与のものでなく、一人ひとりの協力が必要という点である。しかし現代のネット社会は、一人ひとりの意見を分断して増幅する。そのため、選挙で選ばれた代表者の議論よりも、変動が早く極端である。そのような意見に政治家が左右されて愚策に走るか、逆手にとってポピュリストとなるか。どちらにしても危機的だ。

    本書の出版後、パンデミックにより再び政治は信頼を失っている。恐怖、脅威は人々を結びつけ、民主主義が再び上手くいく条件となるはずだが、政府よりも国民の方が情報の量とスピードが大きいこと、人の特性である自信過剰のバイアスにより、議員よりも自分たちの方が解決できる、と思ってしまうのだ。

    ヒト、モノ、カネ、情報のグローバル化の中、私たち一人ひとりが民主主義を再定義する必要がある。
    続きを読む

    投稿日:2021.04.19

  • motoy0415

    motoy0415

    ・大統領の役割=何が起きているか分かっている人がいるフリをする役割、というのが腹落ち。

    たかだか10人くらいの組織でさえ、トップは部下が何をしているか把握していない。1億、2億の民のトップが、すべてを見通しているわけがない。

    民主主義が、中産階級の価値を最大にするための組織(集団の力を使って個人の自由を最大化する)であり、それが現状機能しなくなっている。
    続きを読む

    投稿日:2020.07.18

  • ykuro

    ykuro

    アメリカの自国主義、EUの分断等民主主義の混迷、世界の現実を知る本です。
    後退している民主主義はこのままでは、破滅の道、戦争へといってしまうのではないか?危惧を感じる。人間は弱肉強食から逃れられない。
    著者は「民主主義とは何か自分に問い続ける限り」より良くなって行くと言う。
    印象に残った文章
    ⒈ 人々はとにかくすべてを焼き尽くしたかったのだ。
    ⒉ 問題その1ーグローバル化
    ⒊ 問題その2ー代表制民主主義
    ⒋ 問題その3ー分極化
    続きを読む

    投稿日:2020.07.17

  • harinezuminami

    harinezuminami

    ずっと「民主主義」を無条件でとてもいいもののように思っていたけれど、どうもそうではないかもと思って手に取った本。
    民主主義の政治が衆愚政治にならないためには何が必要なのか、とか、ただの民主主義ではなくて「自由」民主主義が大事なんだとか、じゃあ自由ってなんなんだろうか、とか、そういったことを考えるヒントがいろいろあった。

    「ドイツ史上、最も若くして大学の哲学科教授に就任した」マルクス・ガブリエルが「自分があの人だったかもしれない」と認識すること、他人や動物の苦しみを理解する度量が民主主義の基盤だと言っているのが印象に残った。
    続きを読む

    投稿日:2019.12.16

  • kentoriko

    kentoriko

    自由「民主主義」でなければいけないんだな。
    意思決定の速度を遅くして熟考する時間が必要なんだな。

    グローバリゼーションの時代だからこそ、もっと違うものや弱いものを受け入れることが大事な気がします。

    投稿日:2019.03.18

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。