【感想】風土記

吉野裕編 / 平凡社ライブラリー
(4件のレビュー)

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  • 横

    平凡社ライブラリー 328 風土記 訳:吉野 裕

    どうも風土記を編纂するタイミングは2つあったようである。
    また、もともと、普の平西将軍であった周処の著作「風土記」がモデルになっているようだ

    感じるに、地誌には等しく地図がほしいところですが、望むべくもありません。
    内容はすべて現代語訳であって、日本の風土記の文献を集約しています。

    和銅6年(713)に、62国3島を対象に地誌を編纂するように、全国に通達があったようなのであるが、しっかりとした記録にはのこっていない。
    次に天平4年(733)に節度使の創設にともなって諸地方へ風土記を作成するように指示があった。
    風土記はどうやら、詳細版とダイジェスト版の2つがあったようです。九州では3部作られて、1部は中央政府へ贈られて、2部は、大宰府に保管されたようである。
    現在、本の体として存在しているのは5国であるが、豊前と肥前の内容はほぼ似ている
    鎌倉時代までには、頻繁に風土記からの引用が各書にあり、本書では、逸文としてその内容を網羅している。

    そういう意味では、日本中の風土記を、断片を含めて集約したお買い得な本なのである。

    古事記(712年)、日本書紀(720年)の内容に相違があるは、その間に編纂された風土記からのアップデートがあったのではと示唆する。
    日本書紀にあって、古事記にない記述は、風土記からの転用もしくは、自分の先祖の出自を説明するために風土記に記載した記事を、豪族たちは正史に載せるように中央政府に迫ったきらいがあります。

    楽しむなら、因幡の白兎とか、天女の羽衣伝説とかを、かいつまんでよむのがいいとおもいます。地名だけのページは、地元でなければはっきり言って苦痛です。

    風土記の特徴は以下です。

    ・冒頭にその国の概要がかかれています。
    ・郡の一覧、神社(当時は役所のことであったろう)、駅家の一覧がでている。
    ・各郡の記載に、天皇が来てどうしたとか、ちょっとした挿話がはいっていて、その郡や地名の由来を説明している
    ・地誌として、川や池、島や海岸などの解説がでている。

    常陸を例にとると、
    倭武天皇(やまとたけるのすめらみこと)が天皇として記載されています。
    斯貴瑞垣宮に大八洲をお治めになった天皇、美万貴天皇(崇神)
    難波の長柄の豊前の大宮に天の下をお治めになった天皇(孝徳)
    石村玉穂宮に大八洲をお治めになられた天皇(継体)
    大足日子天皇(景行)
    息長帯日売皇后(神功皇后)
    など、天皇の名前はやたらながい。他の風土記も同様です。諡で天皇名を表現する制度がなかったのでしょうか。

    ■常陸 ダイジェスト版?
    もともと、相模の国以遠は、あずまの国といっていて、その中心が常陸であったといっています。
    郡の説明を順繰りしています。

    ■播磨 ダイジェスト版?
    常陸と同様に郡の説明を順繰りしています。そして巡幸や、土地神の藩士をしています。

    ■出雲 詳細版
    異色の構成で、郡の概要などを冒頭で終えて、国神である大神大穴持命の国引きの話が、次は大国魂命の話となります。
    その後は、郡と県の詳細な説明になります。挿話の多く長大な風土記です。そして、「出雲国造神賀詞」という和文が付載されています。

    ■豊後 ダイジェスト版
    ダイジェスト版でしょうか。国の概要と各郡の省略文からなっています。あまり面白くない。

    ■肥前 ダイジェスト版
    こちらもダイジェスト版でしょうか。郡の説明はやや詳しいですが、出雲には遠く及びません。

    ■逸文
    小話は次のようなものです。

    山城 玉依日売の出産と丹塗り矢の話
       宇治の橋姫
    摂津 妾の姫と夢判断
       御前の浜と、応神天皇の誕生
    伊勢 安佐賀(あさか)の杜 倭姫命と、荒ぶる神
    駿河 三保の松原、羽衣の神女
       てこの呼坂 田子の浦を舞台とした恋
    近江 伊香の小江 天女と天の羽衣
    陸奥 土蜘蛛(アイヌ?)との闘い
    丹後 奈具の杜 天女と羽衣
       天の橋立
       浦島太郎
    因幡 因幡の白兎
    備後 海の神とその恩返し
    伊予 温泉(道後温泉のことでしょうか。日本書紀にも出ている日本最古の温泉とききます)

    目次

    凡例
    常陸国風土記
    播磨国風土記
    出雲国風土記
    豊後国風土記
    肥前国風土記
    風土記逸文
     山城国
     大和国
     摂津国
     伊賀国
     伊勢国
     志摩国
     尾張国
     駿河国
     伊豆国
     甲斐国
     相模国
     下総国・上総国
     常陸国
     近江国
     美濃国
     飛騨国
     信濃国
     陸奥国
     若狭国
     越前国
     越後国
     丹後国
     因幡国
     伯耆国
     石見国
     播磨国
     美作国
     備前国
     備中国
     備後国
     紀伊国
     淡路国
     阿波国
     讃岐国
     伊予国
     土佐国
     筑前国
     筑後国
     豊前国
     豊後国
     肥前国
     肥後国
     日向国
     大隅国
     薩摩国
     壱岐国
     所属不明

    解説
    風土記地名対照表

    ISBN:9784582763287
    出版社:平凡社
    判型:A6変
    ページ数:520ページ
    定価:1500円(本体)
    発行年月日:2000年02月15日初版第1刷
    発行年月日:2017年06月19日初版第7刷
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    投稿日:2023.09.15

  • shokuzaisetto

    shokuzaisetto

    常陸、出雲など現存五風土記のほか逸文の現代語訳集。一口に風土記と言っても、常陸・播磨が土俗的(といっても天皇に関する話はやはり多い)なのに対し、出雲・豊後・肥前は地誌書の性格が強く、列挙的であるという違いを知った。訳者によると、前者が和銅時代に編纂されたのに対し、後者は天平時代であり、この間の変化を決定づけたものが、遣唐使による地誌の新知見の流入とのことである。作成されていたかもしれない和銅時代の出雲国風土記を読んでみたいと思うのは、私だけではないだろう。

    逸文のなかでは、天橋立や浦島伝説などを記した丹後国風土記がもっとも面白かった。
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    投稿日:2020.09.25

  • yuu1960

    yuu1960

    古代史の本を読んでいると風土記に言及している個所に行き当たることがあったので、いつか読もうと買っておいた本。長いこと積読してた。

    解説から読んだ方がいいと思う。和銅6(713)年に撰新の勅があったが、完成を見なかった事情がある。まとまったものが散逸したんじゃなかったのね。時期的に日本書紀の編纂と同時進行だったというのも以外。

    以下、散文的に感想を述べる。
    「常陸国風土記」
    土地の名の由来が多いが、当てにならない話が多い。解説によれば大王の国見、国誉めに因ったものとのこと。たまに筑波山に集う男女の習俗や土地の豊かさを述べる読んで嬉しい文書に当たる。
    「播磨国風土記」
    出雲が古代に播磨まで勢力を伸ばしてという証拠に風土記が挙げられる。葦原志許呼命と天日槍命の競い合いがそれとのこと。しかし、それなら播磨の国は半島からの訪来神、天日槍命の勢力下にあったということになるし、葦原志許呼命をオオナムチと無批判に同一視するのもどうかと思う。
    「出雲国風土記」
    初っ端に記紀にない国引き神話が述べられている。記紀にある神話がまったく収録されていない。佐太大神の名も記紀にないが、加賀の岩窟で誕生したこの神を解説はオオナムチに比定している。出雲に行くと必ずしもオオナムチだけが偉いわけでもないので、これも違うんじゃないかなと思う。
    意外なのは、アジスキタカヒコネの名が繰り返しでてくること。奈良は葛城の下鴨神社の祭神。カモ氏は遷都前に京都に移住し、アジスキキタカヒコネを忘れて、賀茂分雷大神を祀るようになる。カモ氏は出雲出身と云われることもあるけれど、個人的には信じていない。謎だらけだ。

    その他、風土記逸文には丹後の浦島太郎の原型の話があった。
    全体的に土地の名前の所縁や国勢調査部分が多く、物語は思ったより少なかった。
    続きを読む

    投稿日:2020.07.27

  • mickeymeguj

    mickeymeguj

    「常陸国風土記」「播磨国風土記」「出雲国風土記」「豊後国風土記」「肥前国風土記」と、各地の風土記の断片全てを収録。69年刊の再刊。

    投稿日:2019.09.08

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