【感想】神は数学者か?──数学の不可思議な歴史

マリオ リヴィオ, 千葉 敏生 / ハヤカワ文庫NF
(9件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
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  • 数学は発明なのか発見なのか

    「数学はなぜこれほど上手く物事を説明できるのか?」それを言い換えたのがこのタイトルの「神は数学者か?」日本人にとってはキャッチーな上手いタイトルだがキリスト教圏などではもう少し刺激的な意味があるのだろう。

    ピタゴラスやプラトンなどの哲学者の時代の影響は長く、中世の大学のカリキュラムは三学すなわち弁証、文法、修辞と四科すなわち幾何学、算術、天文学、音楽からなっていた。なぜにここに音楽がと思わないでもないが、音は振動だし、惑星が奏でたという「天界の音階(ハルモニア)」という話もある。ヨハネス・ケプラーは惑星ごとの作曲までしている。ホルストの交響曲「惑星」はさらに3世紀後のもので平原綾香の「ジュピター」に続く。

    アリストテレス、アルキメデス、ケプラーにガリレオと続く数学はデカルトの座標によってユークリッド幾何学と代数学が結びつく。高校の数学でいうとX2+Y2=a2が円の座標を表すというやつだ。そしてニュートンのプリンピキア(自然哲学の数学的諸原理)でとうとう惑星の動きが万有引力を元にした数学的な計算に非常に良く一致するという最初の頂点に到達する。

    最初の質問に答えるために数学のたどった歴史を現代までおいかけ、非ユークリッド幾何学、統計学、トポロジーや不完全性定理、そしてアインシュタインの重力理論まで続く。これはこれで良い読み物だ。

    アインシュタインが良い例だが理論物理学者は数式で物理学の理論を表し、もしその理論が正しければこういう減少が現れるはずだといくつもの予言をしそれは次々に確認されてきた。大きな重力により光が曲がることは日食のときの星の位置で確認され、速い速度で動く物体は時間の流れが違うことも確認されGPSでは当たり前のように補正がされている。そこで最初の質問に帰ると「なぜ数学はこんなに有効なのか?」という答えのない疑問にぶつかる。数学は発明なのか発見なのか?

    この宇宙で物理法則が破綻なく守られ、その法則が数式で表されるとすると物理法則は数学で表されることになるが、だいたいこういうことは証明できない。例えば超弦理論の場合9次元だか13次元だかは忘れたがそこまで考えると理論がよく一致するという。数学が有効ならば9次元は存在するのか?わかるとは思えない。そう言えば超弦理論の大栗先生もちょろっと登場している。宇宙論には多元宇宙論などもあるがもし神が数学者なら多元宇宙はこの宇宙と同じようにできているのか??

    例えばもし重力の定数がもっと小さければ星間物質は集まらず星は生まれなかった。逆に大きすぎればビッグバンの後重力が勝って宇宙は収縮してしまう。最近の研究では宇宙のはては加速している証拠が得られたという説があり、これは引力ではなく斥力が働いていることになるのだがその原因物質といわれるダークマター<暗黒物質>が何者かも良くわかっていない。数学はこれらも説明することになるのか。ひょっとすると神がいるとしてもやったことはいくつかの素粒子と定数を決めることだけなのかも。

    翻訳の千葉氏は似た様な感想をミジンコを例にだしている。ミジンコそのものが一つの宇宙だとしたら、ミジンコ宇宙の中にはミジンコ素粒子があり・・・・それはさすがにないだろう。

    最後にクイズをひとつ。連続する数字n,m,l,o,pにたいしてn2+m2+l2=o2+p2=?となる数字がある。この答えを見ると数字にはなにかあると思ってしまうかも。
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    投稿日:2019.12.12

  • 世界は数学でできている?

    この世界の出来事は、数学を用いて非常にうまく記述できる。これは単なる偶然なのか、数学の力というのが伝わってきて、非常に興味深かった。
    自分も学生時代は、物理学を勉強していた身であり、物理現象を記述するにあたって、数学が非常に強力なツールであったことを感じていた。まさに、数学は自然を記述する言語であった。しかし、どうしてそうなのかは考えたこともあったが、特に追求することもなかった。
    本書を読んで、そんな学生時代の疑問が思い出された。この宇宙を記述する言語として、数学がこれほど強力なのは神が数学者だからかというような思いも湧いてくる。しかも自然科学だけでなく、人間社会の現象も数学で記述されるのは非常に興味深い。
    古代の幾何学から始まって最新の数学まで、自然や社会との関わりをたくさんの例をあげて解説されている。普段疑問に思っていても、深く考えたことのない内容なので、また何度も読み返して考えたいと思った。
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    投稿日:2020.10.07

ブクログレビュー

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  • coco

    coco

    数式を使わずに、数学とは何かを歴史から掘り起こして説明している。文系頭には最高の数学説明書。数学は発見か発明か、というのが背後にある大きな命題。発見であるということは、もともと自然の中にある規則的なものを数学という形で表すことができることを「発見」したという意味。逆に発明であるということは、ヒトの頭が数学を作り出した、という意味。神は発見か発明か、という問いと同じだ。神が自らの想像で人間を作ったのか、人間が自らの想像で神を発明したのか。
    アルキメデスやピタゴラス、ガリレオ、ニュートン、ラプラスなど、数学が得意でない私でも一応は知っている人々の話を通して、カオスや非ユークリッド幾何学、ひも理論まで分かりやすく記述されていて、素直に面白かった。
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    投稿日:2023.10.06

  • kitakitapon

    kitakitapon

    数学の歴史を簡潔にまとめてくれ、しかも数式が一つも出てこないので分かりやすく思考することができた。私は私達人類だけが見ることのできる世界にのみ通用する発明かな~という気がしてる。

    投稿日:2023.05.15

  • ぶっか

    ぶっか

    数学とは人間が発明したものなのか?それとも「元からある」ものを人間が発見しているのか?
    また、科学的な説明を数学が担えるのはなぜなのか?という点を数学思想史・科学思想史の視点から解説されています。
    常に刺激的でした。数学に詳しくない方でも読めると思います。続きを読む

    投稿日:2023.01.14

  • mirian.87

    mirian.87

    副題通り、数学(数理科学)の不思議な歴史なのだが、原典からの引用文とその出典が豊富でとても役に立つ。

    投稿日:2022.05.09

  • furu1972

    furu1972

    このレビューはネタバレを含みます

    数学史の本、面白い。たくさんの天才達がいて、今の数学があるのだということはわかった。
    あと、1+1=2って経験則なのかーーーー。たしかに当たり前過ぎて証明もむずかしいのかも。
    後半の論理とかはちょっと言葉遊びのようにも聞こえて、難しかった。
    デカルトが座標系を作ったと聞いて、この人はホントにすごい。

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    投稿日:2020.01.04

  • 楽描人カエルン #グラレコ写経

    楽描人カエルン #グラレコ写経

    このレビューはネタバレを含みます

    ”むしろ、彼にとって、世界の数学的性質は、「神は永遠に幾何学する」という事実の表れにすぎないのだ。”(「プラトンの洞窟へ」より)

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    投稿日:2019.11.04

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