【感想】質的社会調査の方法――他者の合理性の理解社会学

岸政彦, 石岡丈昇, 丸山里美 / 有斐閣ストゥディア
(10件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • nakahisashi

    nakahisashi

    質的社会調査、社会学の入門書である。大学院に在籍しながら、「調査」の仕方を勉強してこなかった自分にとって、とても良い入門書となった。
    ただそこにあるのは、ノウハウではない。「他者の合理性の理解社会学」と副題がついたことからも想像できるように、著者3名の経験に基づいて調査を通して同社会と関わるか、が書かれていて、教科書にありがちな無味乾燥さはない。読み物としても抜群に面白い。

    あとがきに「『社会調査』である限りは、人びととのコミュニケーションの中で鍛えられ、試され、厳しく批判される」とある。この一節がこの本全体を貫く思想になっていると思う。
    論文のテーマを再構築していこうとする中、非常に有意義な本であったが、それにはとどまらない、さまざまなことを考えさせられた。
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    投稿日:2023.04.01

  • gakudaiprof

    gakudaiprof

    有斐閣なのでフィールドワークの教科書という位置づけであるが、研究者のインタビューの関わりがとても丁寧に具体的に書いてあるので、フィールドワークについて書かれた教科書の中で最も面白い本の一つである。
     質的調査の領域の説明をすべて網羅しているわけではないが、フィールドワークをどのようにすればいいのだろうかということについては、学部生から修士の院生、博士論文を書こうとしている院生まで全ての学生に役立つと思われる。続きを読む

    投稿日:2023.03.09

  • 昔南京にいた女

    昔南京にいた女

    とっても面白かった、知的興奮をありがとう。
    最も興奮したのは、自分が仕事やプライベートで楽しくやっている街歩きやフィールドワークが、実は無意識に社会学的方法をだいぶ実践できていること。
    何も習ってないのに自分でできすぎててビビッた。天性のフィールドワーカー なんですか!?

    大学院に行きたい気持ちもなおさら高まった。
    それからもちろん色々気づきもあった。
    以下備忘録。


    ☆社会学=私たちとは縁のない人びとの。一見 すると不合理な行為の背後にある 「他者の合理性」を誰にでも分かる かたちで記述し、説明し、解釈すること

    ☆社会は、複数の、お互い矛盾する「ゲーム」で 構成されている。それらが同時に進行して いる。社会学は、自分が参加しているゲームや 社会の主流派となっているもの以外の「もう ひとつのゲーム」の存在を明らかにする。

    思ったこと。「何者としてフィールドワークでふるまちか」と いう点、散かかれてるけど自分のばあい「記者」or「きょう みあって学びたい人」のどっちかを時によって自由に選 択してる。し、今までそれで不都合だった時ない。と思っている。ただP60の「フィールドにより対象との関係性 がちがった」というのは興味深い。もう少し自分でも意 識してみてもいいかも。

    社会学者は、記者よりも「取材の暴力性」ということに 圧倒的に真摯に謙虚にむきあってると思う。自分ももっと ←誰の、何のための取材か」「応じてくれた人の親切 心にどう報いることができるか」をきちんと考えよう。

    ・データ整理から疑問がうかびあがる」「矛盾の 存在にきづく」「おもしろいところ、半年徴的な ところをピックアップし、フィールドワークの焦点 をしぼる」「その際に、データはもちろん、先行 研究の中に位置づけることで問いを見い出す」
    ⇒それらの作業を通して、 結論に合わせて問いを作る。

    ☆「人々」ではなく、「人々の対峙する世界を知る」 「人々」を知るだと、人々の視点ではなくそれを分析 する分析者の視点で考えることになってしまう。「人々の対峙する世界」を知ることは、対象者を受動的な容器としてではなく、能動的な働きかけを行う 主体としてとらえることができる。(倉敷水島地区の女フィールドワークby中野卓の例)

    ☆人々の行為の背景にある様々な事情、経緯、構造的 条件や制約を記述し、その行為がどのようなプロセスで 選択されたかを理解する。それは無理解が生む 「自己責任論」の解体につながる。

    ☆生活史法=語り手が何を語ったか」「どう語ったか」、その語りを、統計データや履史的資料などをもとに「歴史構造」の中にいちづける。そしてその社会問題についての新しい理論を作る
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    投稿日:2022.06.12

  • ほんとほんと

    ほんとほんと

    社会学の調査について丁寧に書かれている。
    フレームとその間の肉付けが、冷静と情熱の間を行き来しながら説明されているように思えた。
    最後にあるブックガイドと索引が、さらに深みを与えてくれる。

    投稿日:2021.12.10

  • ウカ

    ウカ

    社会調査の方法だけでなく、社会学全般についてわかりやすく書かれていて良かった。もっと早くにこの本を読むべきだったと後悔。

    以下、読書メモ
    面白いの軸の話
    自分と他人
    ゴシップ的面白さと社会学学的面白
    →バージョンアップができるか否か

    メモの重要性
    出来事のメモ(雑記メモ
    出来事から浮かんだ社会学的発想(論点メモ
    日記(気分を書く

    人ではなく、人の捉え方を見る
    「時間的予見」の問題としての貧困

    論文執筆
    理論を使う
    枝葉を切り落とす、一言にまとめる
    調べたことを書いても論文にはならない
    調べたことから何を考え、何を調べ直したのか

    「他者の合理性」
    枠組みを問い直し、対象を論じ直す
      ↕️
    「自己の不合理性」
    自らの行いが不合理である点を知り直し、通俗的なものの見方を問い直す

    「他者の不合理性」
    調べる前からわかっていることしか書かれていない

    調査の暴力性

    個人の生活史に耳を傾ける(語り)
    テーマである社会問題の背景知識を得る(歴史と構造)
    その社会問題についての新しい見方を獲得する(理論)
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    投稿日:2021.12.02

  • ganko165cm

    ganko165cm

    オーラルヒストリーの大事なところはそれが事実かどうかではなく、話した本人にとって心理的に本当だったということ。
    他者の合理性を会話を通して理解する。
    映画なども有効?
    事実を聞くことと、語りを聞くこと
    どのようにその会話、生活史ができてきたかを分析する。
    調査は暴力である、その暴力性に向き合い、可能な限り常に問い続ける必要がある。

    語り、歴史と構造、理論の3つの間での往復が大切。

    経験の全体を解釈する。

    理論的先入観。
    続きを読む

    投稿日:2021.06.05

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