高丘親王航海記

澁澤龍彦 / 文春文庫
(15件のレビュー)

総合評価:

平均 4.4
6
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ブクログレビュー

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  • chokusuna

    chokusuna

    このレビューはネタバレを含みます

    近藤ようこのマンガ版を読んだのを機に、何年かぶりに再読したくなり。/天皇家に生まれ、一時は皇太子とされるも、政変で廃太子となり、仏門に入り、そして最晩年に、幼少期にかわいがってくれた藤原薬子に導かれるように天竺をめざすことにした高丘親王。随伴の僧侶二名に、つきしたがう秋丸(のちに春丸)、後宮に案内されたり、ジュゴンがつきしたがったり、オオアリクイと対話したり、姫と親しくなり天竺に行く方法を示唆されたり。アナクロニズム、アンチポデス、時空も、地理も、夢と現実も、たゆたうように溶け合って自在に行き来する、いや自在にというよりは流されるようにあっちへ行き、こっちへ行きし、最後は象徴的な天竺行きを果たす、といったところまでが描かれ。

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    投稿日:2021.12.18

  • りょう

    りょう

     天竺を目指す旅の中で親王の体験する夢とも現実とも知れない、まさに夢現の世界が展開する。自分が見る夢といえば何かに追われたり、ひどく焦ったり、ブレーキをいくら踏んでも車が停まらないような寝覚めの悪い夢ばかりで、毎晩のように幻想的な夢を見る親王が羨ましい。男はいくつになっても薬子のような女性に憧憬を抱くものだと思う。私も薬子のような存在に出会っていればバクが喜んでる食べるような夢を見られたのだろうか。
     本作は澁澤龍彦の遺作であり、主人公の親王には、当時癌を患い、闘病しながら書いた作者の姿が多分に反映されている。果たして作者は本人なりの天竺にたどり着くことができたのだろうか。
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    投稿日:2021.12.11

  • ぽんきち

    ぽんきち

    澁澤龍彦の遺作。

    高丘(高岳)親王は実在の人物で、平城帝の第三皇子。
    平城帝が譲位した後の嵯峨帝の皇太子であったが、「薬子の変」により廃太子され、出家した人物である。
    薬子は平城帝の愛妾である。元々は薬子の娘が平城帝(当時は東宮)に召されて宮中に上がることになったが、まだ幼い娘の後見のような形で母の薬子が同行する。ところが東宮は母の方に夢中になって寵愛してしまう。もちろん、薬子には夫がいるのに、である。父・桓武帝は醜聞に怒り、薬子は追放。だが、桓武帝の死に伴って、平城帝は再び(今度は尚侍として)薬子を呼び戻す。
    後、嵯峨帝に譲位して上皇となるも、都を平城京に戻して、政権を再び掌握しようとする。その陰には寵愛されていた薬子とその兄の動きもあり、そのため「薬子の変」と名付けられてはいる。が、おそらく薬子一派だけではなく、多くの人のさまざまな思惑が絡んでのことだろう。「薬子の変」と名付けて、上皇の女狂いのせいで片付けてしまうのが落としどころとしてはちょうどよかったのだと思われる。
    いずれにしろ、上皇方は敗北。薬子は尚侍の職を解かれて、後、自殺。兄は左遷されて、後、射殺。上皇は出家。皇太子であった高丘親王も廃太子となった。

    ・・・というような前段は本書では軽く触れられるのみ。
    物語では高丘親王はもう老人である。
    出家し、空海の弟子として修業したのも遠い昔のこと。
    老人になってから唐に渡った親王は、さらに天竺を目指す。通説では、唐では仏教が衰退しており、優れた師が見つからなかったため、仏法の真理を求める親王は渡天を決意する、となっているが、澁澤はこの説をよしとしない。唐での滞在期間が短すぎるのである。おそらく、親王にとって、最初から唐は目的地ではなく、経由地に過ぎなかった。天竺へのあこがれから、まずは唐に行き、天竺への手づるを探し求めたのだろう、という。
    その背景には、母のようでもあり、それでいて妖艶でもあった、薬子の想い出があったのではないか、というのがこの幻想譚の始まりである。

    そう、これは幻想譚というべきものだ。
    親王は老境に至ってもどこか少年のようで、従者らは彼を「みこ」と呼ぶ。
    彼らは、海路、天竺を目指す。
    その途上で、さまざま異形のもの・不思議な出来事に遭遇する。
    言葉を話す儒艮(ジュゴン)。
    人の夢を食う獏。
    上半身が人、下半身が鳥の女たち。
    死期の近い人は水面に姿が映らぬ湖。
    のどに詰まった真珠。
    生気を吸い取り、人をミイラに変えてしまう花。
    迦陵頻伽の鳥。

    親王の命は長くはないことが旅の途上でわかる。
    病に倒れ、それでも天竺を目指す親王が最後に取った手段とは。
    無残なようで、実はこれほど幸福なことはないのかもしれない。

    仏教も絡ませながら、どこか妖艶な香りも漂う。
    母なるものへの思慕。年上の女へのあこがれ。
    それらすべてが浄化され、鳥の舞い踊る中、この世ならぬ世界へと向かうのだ。

    これが絶筆となった澁澤もまた、脳裏で彼の「天竺」にたどり着いたのだろうか。
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    投稿日:2021.10.18

  • ボマルツォ

    ボマルツォ

    読み終わって数年経ちますが、この不思議な世界は、澁澤龍彦の頭の中をのぞいているかのような、軽いめまいをおぼえるほどです。高岳親王航海記を読んだ後に、ウンベルトエーコのバウドリーノを読むのもオススメ。

    投稿日:2021.10.09

  • comma

    comma

    澁澤龍彦は、中学の図書室で出会ってからの
    長いおつきあい。

    澁澤の作品の入門には、刺激的?かもしれないけどぜひ神秘・不思議・怪奇好きな人は、読んでもらいたいな。


    投稿日:2021.09.11

  • myjstyle

    myjstyle

    平城帝の皇太子高丘親王が落飾後に天竺を目指す物語。夢想や追憶の描写が多く、異国趣味や洗練されたエロスが香り漂っています。航海記というよりは航海綺譚ですね。 妖婦薬子への幼き頃よりの性的憧れを繰り返し回想させ、求法の旅には似つかわしくない秋丸(転生後は春丸)を随行させる設定をしています。御子に自身を重ねているようですから、ここには作者が囚われてしまった女性の持つ魔性を感じました。 文章は難解でも衒学的でもなく、軽みがあり、美しい夢に誘う書きぶりです。絶筆とのことですが、歳の重ね方に憧憬を覚えました。続きを読む

    投稿日:2021.04.07

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