【感想】星のあひびき

丸谷才一 / 集英社文庫
(1件のレビュー)

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  • koba-book2011

    koba-book2011

    理由抜きで好きなもの、というのがあります。
    自分なりの理由は何かしらかあるんでしょうが、客観的に説明はできない(する必要も無いし)、まあ、好み、趣味です。個人的に「東日本○○を愛する会」を作りたくなるような、そういうちょっとメジャーでは無い好み、フェチというか情熱+好みというか。
    その「○○」に何が入るのか。人によって色々、楽しいものです。できれば「読書」とか「沖縄料理」とか「中島みゆき」とか「お寺巡り」といったざっくりした言葉より、「関西引っ越し以降の谷崎」とか「島らっきょうとゴーヤーチャンプル」とか「”生きていてもいいですか”の2曲目の”泣きたい夜に”」とか「奈良時代以前の仏像」などなどと具体なほうが、その「理屈抜き」具合が伝わります。
    僕は「手拭い」「ひきわり納豆」「志ん朝」「棒瓦」「メグレ、マーロウ、司馬遼、漱石」「天神橋筋商店街の奴寿し」「小津、ウディ・アレン、イーストウッド、寅さん」「リバプールFC」などなどが○○に入る気がします。そして「旧仮名遣い」もそこに並びます。
    旧仮名に魅せられたきっかけは岩波の漱石全集の数冊と、中央公論の谷崎全集の「細雪」なんですが、旧仮名で現代の文章を読む(良質な文章を)、という楽しみで言うと、丸谷才一さんに尽きます(でも2012年に他界してしまったので残念)。もし、他に「こういう旧仮名の遣い手がいますよ」という情報があれば、是非。
    (「個人的に作りたい東日本○○を愛する会」という妄想を、より細分化して、「1957-1967あたりの若尾文子」とか「州崎パラダイス赤信号で小沢昭一が歌う唄」とかを考え出すと、楽しいですが収拾が付かなくなります)



    「星のあひびき」2010年集英社。
    丸谷才一(1925-2012)さんの、書評を中心としたエッセイ?評論?集。極上。

    丸谷才一の語る、長編小説と短編小説。私小説。日本近代文学の光と影。
    丸谷才一の語る、夏目漱石の創作と、その元ネタの英文学。
    丸谷才一の語る、「ロング・グッバイ」について。

    そして、なんと言っても書評の数々。
    丸谷さんは、とにかく「書評」という読み物の地位を上げたかったようですが、この本を読むとナルホド納得。書評を買って読む、というのはなんだか倒錯的な感じがしますが(笑)、その価値がある。
    その本を読んでいなくても面白い。(読んでいればなお面白い)
    その本を(基本的には)読んでみたくなる。
    そしてその本についてだけでなく、そこから何かしらずれて、溢れる、「書評の書き手」の思いが伝わる。

    素晴らしい、というか、僕はほんとに大好きでした。旧仮名だし。
    特に、20世紀と源氏物語についての冒頭の評論は、ほんとに目が覚めるような傑作だと思います。
    読書会の課題図書でもありました。

    丸谷さんのエッセイとか評論とかは、旧仮名のものも多いですし、本当に今後の余生?の楽しみにしたいと思います。
    長編小説が、もう新作を読めないというのが、残念でなりません…。
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    投稿日:2018.06.10

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