喰い尽くされるアフリカ 欧米の資源略奪システムを中国が乗っ取る日

トム・バージェス, 山田美明 / 集英社学芸単行本
(3件のレビュー)

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  • すいびょう

    すいびょう

    【本書の概要】
    ・中国の資源収奪システムの概要
    中国の「クイーンズ・ウェイ・グループ」がアフリカの天然資源国の支配階級と合弁会社を作る。その合弁会社が中国の国有銀行から融資を受け、天然資源国のインフラ建設にその資金を充てる。合弁会社は天然資源国が中国に売却する石油など資源で得た利益で、中国の国有銀行に借金の返済をする。こうして、合弁会社は融資と返済を仲介するだけで、過分な利益(手数料)を吸い上げ続けるシステムが機能する。

    一方アフリカの政府は、汚職と賄賂により権力の中枢にいる人々だけが富を蓄積するシステムが出来上がっている。権力者たちの目的は既得権益の固辞であるため、国民に福祉サービスを提供するインセンティブがなく、独裁政治と汚職が蔓延している。

    また、世界銀行やIMFがアフリカの経済発展を支えるために資源関連の融資を実行しているが、現実には多くの関係者が汚職のネットワークに取り込まれている。そうしたお金は海外のタックスヘイブンに逃げるため、現地に税金が落ちていない。

    中国企業は現地の雇用も生み出していない。アンゴラは輸出収入における石油収入の割合が100%近いのに、同国民の雇用の1%も生み出せていない。


    【詳細】
    1 資源レントをめぐる多国籍企業の動向

    資源レント:天然資源を含む環境資産に関して発生する、経済的賃貸料のこと。早い話が天然資源から得られる不労所得である。

    アフリカの貴重な天然資源は、アフリカを救うどころか、アフリカに呪いをかけている。
    資源を目当てとした多国籍企業がアフリカの政府に悪条件の契約を吹っ掛け、その利益をむさぼっている。企業は特定の鉱区の採掘権をできるだけいい条件で獲得しようとし、アフリカ政府は、資源企業が自国に払ってくれるレントを獲得できれば、それが富を得るいちばんの近道になる。むろん、国民への還元と言った動機は無く、多くの国が一握りのエリートに財が集中する構造になっている。
    現地国の発展を無視した外国の企業が資源産業に進出し、現地政府のエリートを取り込むことで、支配階級の人間が国民に課税して政府の資金を集める動機がなくなり、国民の利益を無視した政策を取るようになる。教育や福祉、インフラ投資支出が減り、自己の地位を安定させるための軍事予算が増加する。

    また、資源に自国の輸出を頼り切っている国は、資源価格の急落により国の財政が不安定になるというリスクを抱えている。


    2 アンゴラを支配する「フトゥンゴ」
    アンゴラでは、大統領を取り巻く数百の家族「フトゥンゴ」が権力を私物化している。アンゴラがかつて戦争資金を調達する手段であった石油産業は、エリート層に恒常的に利益を生み出し続ける装置に変わった。

    石油産業は、アンゴラの輸出収入のほぼすべてを生み出しているにもかかわらず、アンゴラの全雇用の1%しか提供していない。政府高官が石油企業の株を保有しているなど、アンゴラの権力者が手にした利益は少数者の間で分配されるだけだ。
    アンゴラの富裕層向けの住宅開発やインフラ整備には、中国が携わっている。アフリカの国々に融資する代わりに、天然資源を輸入する権利を見返りとして貰っているのだ。


    3 原油があるのに国民は貧乏な国ナイジェリア
    世界最大級の原油輸出国にもかかわらず、発電所や発電網の整備に割り当てられるべき資金が盗まれているため、ナイジェリアの発電量は北朝鮮の発電量の半分ほどしかない。半日近く停電することなど日常茶飯事だ。
    こうした脆弱なインフラのせいで、ナイジェリアで繊維製品を製造しようとすると高くつくため、中国の偽ブランドが出回り、ナイジェリアの繊維産業は壊滅の危機に瀕している。
    ナイジェリアに代表されるようなアフリカ経済は、(1)公益と個人的利益があいまいになっている(2)グローバル化の暗部を利用して取引が行われる(3)石油産業や鉱業の力に依存し、ごく限定された経済を生み出す という歪みを抱えている。


    4 中国のビジネスのやり方
    中国とのビジネスで重視されているものは「関係」だ。
    これは個人的な繋がり、縁、素朴な礼儀作法のようなもの。恩には恩で返すという互恵関係と考えてもらえばよい。

    中国の企業群「クイーンズ・ウェイ・グループ」は、アンゴラとの合弁企業「チャイナ・ソナンゴル」を設立した。この会社は、アフリカの有力者との「関係」を活かし、フトゥンゴからの金を回収する秘密通路となっている。クイーンズ・ウェイ・グループと提携すれば、オフショア金融の厚い壁が金の流れを見えなくしてくれるのだ。

    ※多国籍企業が租税を回避するプロセス:税率の低い国でなるべく多くの収益を計上し、税率の高い国で計上する収入をなるべく少なくする。そのために、税立の低い国でグループ会社を登記し、財やサービスを自グループ内で売買する。これを「移転価格操作」という。
    2011年に発展途上国から違法に流出した資金は9470億ドルに及び、実際に鉱山や工場がある国の国庫に入るべき税収を奪っている。

    中国のビジネスのやり方は、まず相手の国が欲しがっているもの(医療・教育・インフラなど)に低金利で多額の融資をつけ、支払いを鉱物資源で払わせるというやりかたである。
    このやり方には各先進国から批判が挙がっているが、貧困を目の当たりにすると、中国がこの地に経済発展を促す莫大な投資をしてくれるという話に魅力を感じるのも当然だ。独立前も独立後も欧米諸国はアフリカを商業利用するばかりで、現地のためにはほとんど何もしてくれなかった。そして、中国は実際に約束を果たしているのだから。

    一方で、中国政府はアフリカの発展を口にしながらも、旧勢力と同じように、支配層との個人的な絆を結ぶことに熱心な面もあるのは疑いようのない事実だ。

    実際に契約を行ったアフリカの多くの国が、中国にしたいようにさせている。すると中国は、石油や鉱物資源の代金を支払うだけで、現地の労働力を使用することはない。アフリカの政府も事業の上前をはねるだけであり、持続可能な開発は念頭にないのが現状だ。

    アフリカに生まれた新たな帝国を支配するのは、もはや国家ではない。何ら国民に責任を負わず、影の政府を通じて国土を支配するアフリカの政治家、彼らを世界の資源経済と結びつける仲介者、企業秘密を盾に汚職を行う東西の多国籍企業、この三者の連合勢力がアフリカを支配している。


    【感想】
    アフリカの資源を多国籍企業が食い荒らし、一帯には貧困によるテロと児童労働が蔓延する。映画「ブラッド・ダイアモンド」のベースとなった世界観そのままであるため、読んでいて思わず既視感を覚えてしまった。

    中国が発展途上国との債務関係で問題を抱えていることは、一帯一路構想で取り上げられた「債務のワナ」により広く知られている。一帯一路と資源レントに共通しているのは、債務の返済を港の運営権や鉱床の採掘権、原油やダイアモンドといった「現物」で担保させている点だ。
    資金の貸し付けには信用が必要になるが、発展途上国は内政の不安定さと汚職から信用スコアが低くならざるを得ない。そんな他国でさえためらう国(軍事政権)にも中国は融資し、返済を「資源」という取りっぱぐれない現物で回収する。

    とはいえ、中国の試みを欧米各国が表立って批判できるだろうか。
    イギリスやフランスやポルトガルがアフリカを植民地にしていたころは、各国は現地の経済発展など頭に無く、植民地貿易のための草刈り場として利用するだけだった。アフリカの汚職・隠匿政治はかつての帝国が作り出した収奪システムの残滓であり、それは大戦が終わった後も、誰からも責任を取られずにアフリカ大陸に残り続けた。荒廃した自国を復興するには、もはや自らの力だけでは不可能な状況である。
    そんな破綻国家に対してもインフラの整備を請け負うのが中国である。例えその行動原理が偽善によるものだとしても、彼らを咎める権利のある国は無いだろう。

    余談だが、「アフリカの国が何故収奪的政治システムから成長しないのか?」という疑問に関しては、「ダロン・アセモグル/国家はなぜ衰退するのか」を参考に読むのがおススメだ。
    「先進国と後進国の格差が生じるのは、地理や文化ではなく政治や制度の問題である」と論じており、アフリカ大陸に潜む社会的問題点を明確に説明している。
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    投稿日:2021.01.20

  • tubame

    tubame

    ディカプリオ主演、ズウィック監督の映画『ブラッド・ダイヤモンド』が好きな人であれば誰でも興味を持って読める内容だろう。(この映画はあらゆる点で最高の作品で本当に皆におすすめしたい。)
    もし日本の地下に石油やダイヤモンドが存在したら、日本人としては嬉しいと思うだろう。しかしアフリカ諸国では実際に石油や鉱物資源が豊富にあるのに国民は豊かになれず、逆に貧困にあえぎ虐殺の危険にさらされている。
    こうした状態のさまざまな国の具体例を挙げて、著者が端的に言うところの「資源の呪い」に陥ったアフリカの今が描かれている。そしてその状況はグローバル経済によって我々と結びついている。単純に欧米や中国が悪い、というような話では無いと思う。
    あと、この本をまとめあげた著者の執念みたいなものをとても感じた。たいへんな力作であり、スリリングな小説のように面白く読めた。
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    投稿日:2020.03.19

  • かぎらく

    かぎらく

    製造業がアフリカの生産高を占める割合。それがまさか現代になって低下したというから驚きだ。しかもそれは未だに改善されず10%前後。

    資源産業が国の中心を占めているという「オランダ病」が災いして、アフリカ諸国は「資源の呪い」にかかっているから、このような事態に陥っている。

    「政府が天然資源から得る収入は、いわば不労所得である。この種の収入は「資源レント」と呼ばれ、国家を支配する人々が勝手に使える資金を大量に生み出すだけでなく、場合によっては統治者と国民との社会契約すら破綻させてしまう。国民に課税して政府の資金を集める必要がなくなるため、国民の同意すら取り付ける必要すらなくなるからだ。
    天然資源で利益を上げている政府は、政府の利益になることに国の収入を費やす。そのため、教育支出は減り、軍事予算がふくらむ。また、資源産業には汚職がつきものであり、権力者たちはその座を手放そうとはしなくなる。その結果、独裁政 治が生まれる」


    徐京華に端を発するクィーズウェイグループのことを、具体的かつ深刻な例として書ききっている点が鮮やかだ。

    資源を搾取されるという意味では帝国時代と変わりないが、その構造が複雑化しているという様相は、まさにネグリとハートの言う〈帝国〉だ。

    「アフリカに生まれた新たな帝国を支配するの は、もはや国家ではない。何ら国民に責任を負わず、影の政府を通じて国土を支配するアフリカの政治家、彼らを世界の資源経済と結びつける仲介者、企業秘密を盾に汚職を行なう東西の多国籍企業。これらの3つの勢力がアフリカを支配している。」
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    投稿日:2016.12.25

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