【感想】SHOE DOG(シュードッグ)―靴にすべてを。

フィル・ナイト, 大田黒奉之 / 東洋経済新報社
(251件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
97
88
41
6
1
  • 世界は繋がっている

    始まりは神戸1962、徒手空拳、アイデアだけのフィル(バック)・ナイトはタイガーを売らせて欲しいとオニツカ(現アシックス)に飛び込んだ。アディダスが独占する北米のランニングシューズ市場に、安くて品質の良い日本製を持ち込めばいけるんじゃないか!カメラがうまくいったのだから靴だって。とはいえバックは世界一周旅行の途中でもあり、目的の日本の前にはハワイで3カ月近くサーフィンを楽しんだりもしている。

    とにかくオニツカはバックを代理人と認定し前金50ドルでサンプルを送ると約束した。金は振り込まれ12足のシューズが届いたのは1年後だった。1963年のバックは地味に重要なキャリアを積んでいる。会計士の資格を取り収入基盤を手に入れた。のちに妻となるペネロペ・パークスと出会ったのは輸入業のかたわら収入を得るために助手として働いた大学でだ。倍々ゲームで成長を続けるブルーリボン社の弱点はキャッシュフロー、売れて喜ぶのはオニツカでバックたちの商売は回り続けるが危なっかしい。「会計士としての私にはリスクが、起業家としての私には可能性が見えていた。そこで私はその中間をとって、とりあえず進む事にした。」

    バックの重要な資産となったのがオレゴン大コーチでのちにアメリカオリンピックチームのコーチになったビル・バウワーマンだ。タイガーのサンプルを気に入ったバウワーマンは共同経営者に名乗り出た。靴を良くするための多くのアイデアはバウワーマンが出したものだし、彼の弁護士ジャクアはオニツカとの対決では交渉役を務め、ジャクアの義理の兄チャック・ロビンソンは日商岩井との提携、中国進出そして上場と重要な場面でバックにアドバイスをした。

    バックには徐々に仲間が集まってくる。手紙魔のランナーで安月給でも働き続けるナイキの名付け親ジェフ・ジョンソン、トラブルシューターで最後に頼りになる車椅子のボブ・ウッデル、PWcの先輩でのちにナイキで働くヘイズとオニツカの裁判からナイキの仲間になった弁護士ストラッサーなど。そしてのちに対決するオニツカではフジモトがバックの情報源となった。

    1971年ブルーリボンの売り上げは1300万ドルに達したが、銀行は新たな融資を拒否しオニツカは買収を提案してきた。呑まなければ別の代理店に切り替えると。当面はオニツカを繋ぎながら自前のブランドの準備が始まった。ナイキの誕生だ。

    新生ナイキには日商岩井が大きな支援をしている。資金を出しオニツカに変わる日本の靴メーカーを紹介したのが始まりだ。ポートランドオフィスでは世界中の工場をよく知るトム・スメラギがバックを支援し続けた。ニッショーファースト、まず日商岩井に払えその裏でスメラギは金回りに苦しむナイキのためにわざとインボイスの発行を遅らせ実質的なサイトを伸ばしていた。ナイキが不渡りを出した際に融資責任者のアイスマン・イトーに問い詰められるとスメラギは彼らが好きだから助けたと告白する「ナイキは私にとって我が子のようなものです」

    銀行を始めとする債権者達を前にイトーが宣言する。「日商がブルーリボンの借金を返済します。全額」イトーに礼を言うバックへの返事はこうだ。「何とも愚かなことです」「私は愚かなことは好みません、みんな数字ばかりに気をとられすぎです」バックではなく銀行のことだ。二人のサムライがバックを支えていた。

    ナイキのアイコンといえばジョーダン、コービーそしてオニツカではないタイガーが思い浮かぶ。そのタイガーが使ったことで花開いたトップブランドの開発初期を隣の研究室で見ていた。ひょっとしたら自分が担当していた可能性もなくはない。ゴルフシャフトのディアマナだ。当時の社長は皇芳之さんでその弟がトム・スメラギこと孝之氏。世界は繋がっているのだな。
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    投稿日:2019.03.01

  • 巡り合えて良かった一冊です。

    ナイキの創業者であるフィル・ナイト氏の自伝。
    しかし、単なる立志伝中の記録という訳ではない、勇気と感動を与えてくれる物語だ。
    一貫して自立することと、品質に妥協を許ぬ姿勢を貫き、国家に対してもファイティングポーズを取り続ける。
    ナイト氏はビジネスマントとしてだけではなく、一人の人間として尊敬出来る人物だ。
    意志ある所に道は開けるという言葉がピッタリはまる。
    巡り合えて良かった一冊です。
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    投稿日:2018.07.06

  • 熱をおびた“bad face”(ダメ男)たち

    エアマックス、フットスケープ、ワッフルトレーナー…
    学生時代に“ハイテク&ローテク”スニーカーブームを通過し、暇があればNIKEのレザーコルテッツやSwooshマークをスケッチしていた私ですが、
    NIKEの経営や創業者については殆ど知らないことばかりでした。

    成功の裏に秘められたエピソードを知り、NIKEブランドを築き上げた人間の熱量に驚きながら本書を一気読み。創業者フィル・ナイトのビジネスと熱量の原点が「オニツカ」(現asics)のスニーカーに魅せられたことであったり、そのオニツカシューズの販売代理店としてビジネスをスタートしていたりと、まだ「戦後」の影を引きずる日本との関わりが非常に多いです。

    また、スタンフォードでMBAを修めた優秀な方らしい冷静な状況把握がありながら、行動は「超熱量偏向型」。常識外れの成長戦略が仇となり、度重なる経営危機に苛まれる、あるいは“bad face”(ダメ男)と自称し宿敵アディダスへの素直すぎる本音を吐露してみたり(名作「コルテッツ」命名の由来は秀逸)と、愚直さやハラハラが楽しめます。

    「みんなに言いたい。自分を信じろ。」 を始めとする熱いメッセージも散りばめられた良作だと思います。
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    投稿日:2017.11.18

ブクログレビュー

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  • ymkkmy

    ymkkmy

    事業を模索し始めた1962年から株式上場を果たした1980年の18年間の紆余曲折(と言う言葉では表しきれないが)を読み、ビジネスとは戦さなのだと心底感じました。そして、人との出会いの運の大切さも。
    大企業へと成し遂げた成功者であるにも関わらず、自身の軌跡を懐古しながら、「全てをやり直せたら」と後悔を感じるというところに人間味を感じました。

    ビジネスとは、若者へ伝えたい想い、成功者からのメッセージは、起業家を目指す若い人達の心に響くのではないかと思う。読み応えのある1冊。
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    投稿日:2024.03.18

  • chariots0

    chariots0

    ずっと読みたいなと思っていた本。ナイキ創業者フィル・ナイトの半生を描きながら、ナイキの誕生から成功までが綴られた本。500ページ以上と読み応えが凄まじく、正直もう少しコンパクトに纏まっていたら良かったなと。。
    まさかあのナイキが、日本のシューズ(オニツカ社、現アシックス)のアメリカでの販売代理店としてキャリアをスタートさせていたとは意外だった。
    様々な人との出会い、信じては裏切られ、何度も危機に陥りながら、取り返しのつかないような嘘をついてごまかしながらも、最終的には運も手伝ってかなんとかそんな困難も切り抜けて、ホッと一息できるかと思ったらまた別の困難が来て…と本当に壮絶な人生だなと。
    そんな中でも印象的だったのが、フィル・ナイトのどんな時でも自分の信念に従ってただ前を向いてひたすら進んでいく姿。そして常に成功を疑わず自分を信じて努力を惜しまない姿。こういう姿勢が運をも呼び込むのだろうなと。
    久々に気の引き締まる本を読めた。日々どんな小さなことでも成長できる人間でありたいものですね。
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    投稿日:2024.02.03

  • やっさん

    やっさん

    NB派ですがw

    ってな事で、フィル・ナイトの『SHOE DOG』

    NIKEの創始者のフィル・ナイトの自伝録。

    NIKE創業前はオニツカタイガーのシューズを売っていたとか、オニツカに裏切られたとか、現在に至るまでの道のりを熱く綴っております

    まあ、靴に一生を捧げたSHOE DOGじゃね

    岡山のbigriverことフィルナイト様のサインまで頂いて恐縮です
    ありがとうございました

    2019年37冊目
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    投稿日:2024.01.22

  • Take

    Take

    下手なビジネス小説なんかよりも遥かに面白い。新規事業の9割が失敗すると言われる世の中、改めてその難しさや起業における困難から始まる。
    ビジネスパートナーの裏切り、葛藤、競合、政府とのバトル等…
    仕事に全てを注ぎ込んできた男による魂の一冊、自分の仕事に誇りを持てているか?改めて自分に問い掛けたい続きを読む

    投稿日:2024.01.16

  • massayan

    massayan

    本感想メモ

    創業者の行動一つ一つに共感できるかはさておき、動き続けることが成功・勝ちのベースにあることを強く感じた。全体通じて度重なる困難に対して行動し続ける姿勢から、やる気を分け与えてもらえた本だった。

    ・人生は成長だ。成長がなければ死ぬしかない。

    ・天職とはどういうものかわからずとも、探すのだ。天職を追い求めることによって、疲労にも耐えられ、失意をも燃料とし、これまで感じられなかった高揚感を得られる。
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    投稿日:2024.01.08

  • まさ

    まさ

    このレビューはネタバレを含みます

    フィルナイト、オニツカタイガーのアメリカ販売から始まった
    米国での販売権を得るために、存在しない会社ブルーリボンスポーツの代表だと、ハッタリをかましながらも、毎年売り上げを倍増させていく。親にお金を借り、銀行にお金を借り、とにかくずっと自転車操業。バランスシートの純資産が0の状態でも、売上拡大を第一として走り続ける。勝つことが全て。
    最初は利益が出ないため、自分は公認会計士として働く。米国での独占販売を邪魔するライバルも現れる。フィルはオニツカ社内に味方(スパイ)を置く、社員の訴えを無視する、資料を盗み見るなど、人格者かと言うとそうでもない点が、感情移入しづらい。
    一方でオニツカのやり方も誉められたものではなく、納期遅延、販売権争いなど、最終的には法廷闘争になる。オニツカはナイキを切り、ナイキは自社ブランドを立ち上げて生き延びることを選択する。オニツカからの独立宣言。
    その後もナイキには資金繰りがずっと付きまとう。銀行に見限られ、売上はあってもキャッシュが足らず、不渡で倒産危機を迎える。日商岩井が助け舟を出してくれる、日商はナイキのことが好きだった、成功すると信じていたから、支払いを遅らせたり、借金を肩代わりしたりした。
    シュードッグとは靴好き、靴に全てをかける人。


    ・馬鹿げたアイデアだと言う連中にはそう言わせておけ、走り続けろ、目標に到達するまで、何があっても立ち止まるな。今がどこなのかも考えず、走り続けろ。

    ・みんな転職する、どこに行っても同じ。公認会計士とMBAの資格があれば、確固たる収入基盤ができるので、どこに転職しても一定以上の給与レベルが維持できる。

    ・走ることを信じていた。みんなが毎日数km走れば、もっと世の中はよくなる、このシューズを履けば走りはもっと良くなる、という信念があったからできた。

    ・競争のコツは忘れること、自分の限界や痛みや苦しみも忘れて、「もう走れない」という自分のうちなる叫びや甘えも忘れる。忘れなければ、それと向き合うことになってしまい、耐えられない。

    ・自分の息子が働いている会社を信用できなかったら、誰を信用できるっていうの?

    ・オニツカとの契約は切れたが、これは独立宣言でもある。もう他社のブランドを売らなくていい、誰かのために働かなくてもいい。これからの成功や失敗は私たち自身の責任、自らのアイデアとブランドにかかっている。

    ・経営者が何をしても、他役員から反発が出ないのは、経営者自身がそんなに報酬をもらっていないことを知っているから。自分達は十分もらっている、と感じてくれている。

    ・競争に勝つことは比較的簡単なこと、自分に勝つことはゴールラインの無い挑戦。

    ・金を稼ぐことがビジネスの目的ではない。人が生きるために血液は必要だが、血液を作るために生きている訳では無いのと同じ。より高い次元に到達するために必要なプロセスであり、その先にある使命に向かって奮闘するのが人生。

    ・天職を追い求めて欲しい。天職であれば、疲労も失意も気にならない。

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    投稿日:2023.12.20

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