【感想】わたしの本当の子どもたち

ジョー・ウォルトン, 茂木健 / 東京創元社
(17件のレビュー)

総合評価:

平均 4.4
7
9
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ブクログレビュー

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  • umimugi

    umimugi

    結婚するかしないか、人生の選択で変わりうる人生を、並行して描く。
    結婚しなければ自分の道を進めて幸せだったかもしれないけれど、その結婚でうまれた子供達には出会えない。
    自分でも、ついつい何度も考える事なので、読んでいてせつない。
    そして、どの道筋を選んでも、人は生きて死んでいく。
    自分に置き換えて、入り込んで考えてしまった。
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    投稿日:2021.02.05

  • sana

    sana

    一つの選択で、人生が全く変わったとしたら‥?
    パラレルワールドのような2つの人生を振り返る女性。

    2015年、パトリシアは老人ホームにいて、混乱していました。
    子どもが3人だったのか4人だったのか、自分の人生のいろいろなことが二通り思い浮かぶのです。
    医者には認知症と思われるだけですが。

    1926年生まれのパトリシア。
    大学のときにマークと付き合い始めたことで、人生の岐路ができます。
    パトリシアの愛称はいくつもあり、こちらの世界ではトリッシュのほうが素敵だとそう呼ばれるようになっていました。
    熱烈なラブレターを信じて結婚したトリッシュですが、牧師の息子で堅物のマークは、子どもを作るのは義務と考える古めかしい?男。
    流産を含めた妊娠6回、苦労するトリッシュでしたが~4人の子どもはそれぞれ個性的に育ちます。

    結婚を断った方は、パットと呼ばれています。
    イタリア旅行に行ってガイド本を書いたのをきっかけに評価され、順調に仕事をしていきます。
    植物学者の女性ビイと愛し合い、カメラマンの友人マイケルに精子提供してもらって子どもをもうけます。

    世界の出来事は、どちらも史実とは少し違っています。
    そして、どちらも、良いことばかりではない。
    そのあたり、決して単純ではないけれど、密かに文明批評の針が仕込まれているような。
    一つの選択で道はわかれるが、どちらが正しい、というわけでもない? そこに深みが感じられます。
    きめ細かな描写でどちらもリアリティがあり、2倍楽しめるというか、これほど複雑な話でもパトリシアの気持ちはわかりやすく、切ないものがあります。

    作者は「ドラゴンがいっぱい!」、「ファージング」三部作、「図書館の魔法」で知られるSF作家。
    この作品も評価が高いですね。
    しみじみとした味わいと余韻に、感動しました。
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    投稿日:2018.10.26

  • yuuyom

    yuuyom

    イギリスで1926年に生まれた女性の2015年までの記録なのだが、途中で「もし、あの時、xxしていたら」という分岐点があり、二つの人生が語られる。彼女の人生を通して、近代史、女性問題、環境問題などが見えてくる。読む人によって、色々なことに考えが及ぶ小説だと思う。星雲賞の候補作になっているけれど、星雲賞よりはジェンダーSFの賞を取りそうだ。続きを読む

    投稿日:2018.06.17

  • たまもひ

    たまもひ

    一気読み。ジャンルとしては、歴史改変ものとか幻想ものに入るんだろうけど、そうと意識させないジョー・ウォルトン独特の雰囲気がある。「図書室の魔法」のモリと同様、ここでもパトリシアに肩入れしながら読まずにいられない。

    ある決断を境に、パトリシアの人生は二つに分岐する。二つの世界で彼女自身の人生は大きく異なるが、世界のありようもまたかなり違っている。それは私たちの「現実」と重なる所もあり、違うところもあり、そこに見え隠れする痛烈な文明批判も読みどころの一つだろう。

    しかし、何と言っても読ませるのが、二人のパトリシアの歩みだ。どちらの世界でも、彼女は必死に生きる。過ちを犯したり、悩んだりしながら、子どもを育て、身近な人の幸福や不運、成長や死を経験し、大きな動き(特に戦争)に翻弄されつつ、ままならない人生を生きていく。それは決して特別なものではないが、彼女自身にとってはのっぴきならない、たった一度の人生だ。その感慨が胸に迫ってくる描き方だ。

    二つに分岐していたパトリシアの人生は、ある残酷な形で重なり合うことになる。これは冒頭で暗示されているので、そういうことになるのだろうと思いながら読み進めてはいたものの、実に切なく、つらい。確かにあったはずの人生が、夢まぼろしのようにかすんでいくのを感じるとき、どういう思いが胸に去来するものなのか。想像すると苦しくなる。

    解説で、本書は、個人の選択と世界の運命の関係についての物語でもあるという意味のことが書かれていたが、私はそれは深読みに過ぎるような気がした。バタフライ効果についての言及もあるが、それは物語の骨格となるものではないと思う。そういうことも含め、複雑な感慨を抱かせる、優れた一冊だと思う。
    続きを読む

    投稿日:2018.06.13

  • hekcho

    hekcho

    男のプロポーズに対する返事が波動関数を収束させ、運命が分岐した女の人生を描いた物語。認知症により波動関数が再び発散するところや、描かれる世界史が史実通りではなく、偽史が含まれるのが面白い。また、セクシュアリティが生来固定のものではなく、人生の途中で変わっていくという描写も良かったと思う。
    それにしても、プロポーズ断った方の人生の方が楽しそう。一方プロポーズ受けた方の人生(の特に前半)は、繰り返す妊娠と流産、家庭内で軽んじられる、働くこともできないという地獄。BCならぬ、Before feminism時代の暗黒。
    続きを読む

    投稿日:2018.06.01

  • kozakura

    kozakura

    二通りの女性のそれぞれに過酷な人生が描かれているが、波乱万丈とはいえ普通にありえる人生。それを読ませるリーダビリティは翻訳の良さもあるんだろうな。

    投稿日:2018.05.11

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