【感想】サマー・アポカリプス

笠井潔 / 東京創元社
(38件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
14
7
12
2
0

ブクログレビュー

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  • オーク

    オーク

    笠井潔「サマーアポカリプス」読了。小説も面白かったが、奥泉光の解説がなかなか興味深かったので備忘のためメモ。なぜ笠井潔が探偵小説を書くに至ったかの分析。チャンドラーにも通じるものがあると個人的には思う

    「元来小説は主題や思想に格別の関心をもたない。小説とは多くの細部からなる一個の構造物であり、小説は細部以外のものを何一つ必要としない。・・・主題性を強引に持ち込み際立たせようとすれば、小説の構築性そのものを崩壊させてしまう。とはいえ思想や主題は小説にとって価値がなくとも、人間には大切なものであるから、作家は失敗の危険を冒してでも敢えて主題性にこだわらざるを得ない。」
    「単に様式性に無自覚なだけで、自分が束縛されている事実に気づかないが故に自分が自由だと信じているだけである。」
    「平凡にとことん留まることで個性を、制度にあくまで内在することで解放を、様式を徹底的に追求することで様式の破壊を求めたのだ。」  
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    投稿日:2022.04.21

  • 酔歩

    酔歩

    矢吹駆シリーズ、2作目。

    カタリ派の秘宝云々の辺りは二階堂黎人のようなケレン味オカルト話かと思わせられたが、それらはもっと壮大なスケールの哲学論争に包絡される。
    トリックの必然性、重厚な謎解き、それらもまた大流の一要素に過ぎない。

    (未発表作も含め)あと8作もこのシリーズの作品が残されてるなんて!素晴らしい。
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    投稿日:2019.05.29

  • block

    block

    自らを悪と規定しつつも、根底では人間への信頼を捨てきれない矢吹駆
    彼は罪を犯し、母国日本を逃亡した身でありながら
    解脱を果たすために赴いたチベットの奥地で、導師に命じられるまま
    現世の悪を見極めようと、再び下界へ降りてくる
    一方、女教師シモーヌ・リュミエールは
    革命の成功が新たな悪を生み出すという現実に打ちのめされながら
    それでも神のつかさどる善性を信じると言い
    世界を我が手で修正しようとする矛盾には気づかぬまま
    南仏の反原発運動に携わっていた

    前作でラルース家の連続殺人事件を解決した矢吹駆だったが
    その際、犯行グループの心の弱さを無慈悲にえぐったことに関して
    彼らと親しかったナディア・モガールを泣かせてしまう
    そしてシモーヌ・リュミエールも泣いていた
    やはり犯人たちと面識のあったシモーヌは
    彼らを走らせたやむにやまれぬものの悲しさについても知っていたから
    自由意志とその責任にこだわる矢吹の厳しさを傲慢と見なして
    非難するしかなかったのだ
    しかし彼女のそれは、神の威光を借りて他者を抑圧する考えでもあり
    周囲に言わせればやはり傲慢ということになるのだろう
    そういう意味でシモーヌと自分が似ていることに
    もちろん聡明な矢吹駆は気づいていたに違いないが
    しかしそういった無意識の傲慢さが
    新たな悪を招き寄せることについてはどうだったろうか
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    投稿日:2019.04.12

  • sho3dai

    sho3dai

    思想部分に触れないとこの物語は語れないと思うが、その思想部分の提示が物語として読むことが出来ず楽しめなかった。やってことはシンプルで、そのシンプルさを出しつつ主人公の思考を出していくかという小説なのかな。続きを読む

    投稿日:2018.06.14

  • dai-4

    dai-4

    前作から続く予備知識があれば、また、原発に対する思想論争に造詣が深ければ、もっと楽しめたかもしれないです。理由あって以前から読みたかった作家なんですが、ヴァンパイアのイメージが強くて、ちょっと手が出せず… 本作を読んで、少なくとも“そういう”系の作家では決してない、ってことは分かりました。でも掘り下げて生きたいかといわれると… いわゆる本格系ミステリだと思うんですが、ちょっと突拍子もない部分とか、何か奇を衒った部分がないと、大満足!ってところまではいかないようです、自分。よほどの余力が出てくれば、シリーズ他作品にも手を出してみます。続きを読む

    投稿日:2016.03.30

  • hige0519

    hige0519

    前作「バイバイ、エンジェル」は薀蓄が哲学的で非常に難解でしたが、本作は前作ほどではなく、且つ情景描写が多くなっているので、若干取っ付き易くなっていると思います。確かにカケルと女教師シモーヌの思想対決は骨が折れますが、物語の本筋と密接に絡んでいるので不思議と引き込まれます。
    ストーリーは、ヨハネ黙示録の見立て殺人、二度殺される死体、密室殺人、アリバイ崩し、キリスト教異端カタリ派の秘宝伝説など、これでもかと言うくらい本格ガジェットのが詰め込まれています。トリックはそれほど凝ったものではありませんが巧さを感じますし、見立てた理由も納得のいくものになっています。途中で語り手のナディアとバルベス警部の推理が披露され二転三転して行く展開もスリリングで秀逸。オールタイムベストに名を連ねるのも頷ける超大作です。
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    投稿日:2015.12.18

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