【感想】真ん中の子どもたち

温又柔 / 集英社文芸単行本
(17件のレビュー)

総合評価:

平均 3.3
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9
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ブクログレビュー

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  • あり

    あり

    「そのことばは、私たちのような子どもを侮蔑するためにある。でも、そのことがどうして私たちを貶めることになるの?」というフレーズにじーんとする。
    言語と個人の関係性はもっと自由でいい、というのにもあかるくひらけた気持ち。
    温又柔さんの本を読むと、自分の中の「○○人」の解像度がまた一つ上がる。
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    投稿日:2024.03.03

  • じゅんこ

    じゅんこ

    複数の国の親を持つ子どもたち(といっても主人公が20歳頃の話が中心だが)が、留学先で同じような境遇の仲間と出会い、自分のアイデンティティに対峙する物語。「真ん中の子どもたち」というタイトルは「子どもが真ん中」という意味合いかと思って読み始めたが、そうではなかった。「国境のこっち・あっち」ではなく、自分を「真ん中」に据えた子どもというニュアンスだろう。
    上海を舞台にした話で、要所要所に出てくる「におい」が印象的だった。
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    投稿日:2023.01.16

  • imaht2

    imaht2

    アイデンティティと言語の問題、について考える。
    日本人の父と台湾人の母をもつ琴子、台湾人の父と日本人の母をもつ嘉玲、日本に帰化した中国人の両親をもつ舜哉。日本で暮らし、中国語を学ぶために上海の語学学校に短期留学する3人の一ヶ月。
    アイデンティティにも思考言語にも葛藤をおぼえず生きてきたので、こういう複雑さが興味深かったし、葛藤そのものが青春だな…と懐かしい感じもしたし。
    で、そもそも、日本人とは、何をもって日本人というのだろう?
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    投稿日:2022.06.02

  • harinezuminami

    harinezuminami

    日本人の父と台湾人の母を持つ主人公が、母の言葉である「中国語」を学びに上海に留学。
    日本人に見えるけれど中国語を話せる、とか、母が台湾人ならもっと上手く中国語が話せるのではないかとか、帰化した中国人の両親を持つ子どもの母語は日本語が、とか…ナニジンでナニゴが喋れるかという絶妙なややこしさを軽やかに描き出して見せているなと思った。
    日本人の母と台湾人の父を持ち、日本語を話すように育てられたリーリーや、正確な?中国語を「普通語」として教えようとしている上海の漢語学校教師、関西弁と中国語を話すシュンヤ。
    シュンヤが「言語と個人の関係は、もっと自由なはず」と言う、これがテーマかな。
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    投稿日:2020.10.04

  • root3

    root3

    もう少し掘り下げて欲しかったけど~3歳で台湾から日本に来た琴子は母の言葉を習いたくて上海への短期留学を決める。父は台湾の民俗研究者で日本人だ。上海へ行くと、台湾出身は出自を否定され、発音は矯正される羽目になる。同じ思いを抱えるのは、父親が台湾人の玲玲と両親が台湾出身で日本に帰化した龍舜哉だ。自分は偽日本人なのか、台湾語でも使われているアイノコというのがピンとくる。舜哉との関係はこの留学期間だけだけど、日本にいるボーイフレンドの彗は物足りない。帰国の日が近づいて二十歳の誕生日を迎える~ルーツがあちこちにある台湾に中国語を習いに来る学生達を世話するために台湾に渡る・という落ちは弱いなぁ続きを読む

    投稿日:2019.09.26

  • lonesinker

    lonesinker

    作者じしんの分身と思われる主人公の天原琴子、ミーミーは、日本人の父と台湾人の母をもつ日本育ち。
    幼いころから親しんできた、しかし日本語に囲まれて育つうちにいつか遠のいてしまった母の言葉を習得したい。そう思って留学した先の中国・上海で、彼女は、ここで教え込まれる「正しい中国語」がじぶんの求める「母の言葉」ではなかったことに気づく。ここちよく自分を受け入れてくれる母語の代わりに彼女が見出したのは、ここでも「訛りのある」言葉を話す中途半端な存在として扱われる自分自身だった。
    小説は、ミーミーが同じ中国語学校に通う日本からの(必ずしも「日本人」ではない)留学生仲間――なかでも、台湾人の父親と日本人の母親を持ち、台湾語の中で育ってきたリンリンと、両親ともに台湾系だが日本国籍をもつ龍舜哉――と交流するなかで、日本人でも中国人でも台湾人でもない、いずれかの「正しさ」にも属することのできない自分たちのありよう、それを表す言葉をみつけていく過程を描き出していく。
    小説としての完成度という面では、やや若書きという感じがするのは否めない。特に悩みを抱えて煩悶するミーミーやリンリンに対し、そうした葛藤を頭一つ抜け出したような舜哉との性愛に主人公が救いを見出すような展開にはやや疑問も感じる。
    しかしおそらくまだ完成されていない若い作家だからこそ、芥川賞選考委員による「日本人にとっては対岸の火事」発言に対してあのように怒ることができたのだろうし、その怒りは、小説を読むこと、自分と違うひとびとの声を聞き理解しようとすることについて、人々の間に議論が生まれるきっかけをつくることができた。そのことも含めてきわめて同時代的文学的な実践であったと思う。作者がこれからさらに優れた作品を生み出すことを期待したい。
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    投稿日:2018.06.16

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