【感想】「生きている」を見つめる医療 ゲノムでよみとく生命誌講座

中村桂子, 山岸敦 / 講談社現代新書
(2件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • 準

    けっこう前に買った本。
    学生時代は理系科目に興味がなく、社会人になって働き出しても
    科学や医学には、環境からも自分からも、まったく関わらない。
    なのになぜか買った本。

    私という人間。その設計図といえる遺伝子。
    そんな人間の遺伝子の大本であり、源といえるゲノム。
    そんなゲノムとはなんぞや? というところから始まる本書は、
    分かっている事実もあれば、分かっていない事実が混在し、
    なかなかに難読した本だった。


    この本は、「生きている」を見つめる医療、というタイトルだが
    内容としては、「生きている」をとことん見つめる、というものだと思う。

    ゲノムは一体なんなのか? どういう働きをしているのか?
    いつからいつまで存在するのか? どこからどこまでがゲノムの働きなのか?
    私達人間は、ゲノムとどうやって付き合って、生きているのか?

    人間という存在を、ゲノムという存在を切り口にして、
    あれこれと見つめている。分かることも分からないことも、
    そのさまざまな事実を読み進めたと思う。
    そして、その事実をもとに、多少の倫理も記されている。
    ゲノムは命に宿り、命には魂が宿る。それらが一体となって
    宿り生まれ、生き続ける人間には、尊厳と倫理が宿っていく。

    ゲノムは受け継いだ遺伝子をもとに、命となって発揮する。
    その命を全うする人間には、ゲノムと遺伝子から成り立っている。
    もしかしたら、生まれつきの不遇や天賦が、ゲノムと遺伝子によって
    発揮されてしまうかもしれない。しかし、ゲノムと遺伝子は、
    それらを覆す仕組みさえあるかもしれない。

    人は、その抱えるゲノムと遺伝子を切り離すことは、
    出来なくはないが、おそらく難しい。
    そして、縛られているかのごとく、かれらと共存するしかない。
    けれど、かれらはかれらなりの創意工夫のようなものを
    私達に施し、どうにか命を保たせようとしている。

    ゲノムに縛られ、あるいは縛りながらも、人間は生きている。
    かれらから、逃げるも逃げないも自由だが、
    あくまでも、かれらは自分自身でもある。
    そんなことを学んだ本でした。


    人間を考えるにあたって、科学や医学をもって
    とらえてみたり、知ってみたい、という人におすすめの本。
    哲学や思想とは違った出発点で、人間を見つめられますよ。
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    投稿日:2014.04.01

  • とまきち

    とまきち

     生まれてから死ぬまで、ライフステージを考える医療を、ゲノムがどのようにはたらき、生きていることを支えているか、ゲノムのはたらきをどう助けるかとう立場から見る。
     一人の人間のゲノムは生きものの全てとつながっており、長い間続いていく生命の1つとして自分を感じることにより、視野が広がり心が拡がる。
     最後に紹介されている「蟲愛づる姫君」(「堤中納言物語」の中にある物語)はナウシカのモデルにもなっている。毛虫を小箱に入れて眺めているお姫様に周囲の人々は困り果て、“そんな汚いものを”とう侍女にお姫様はきっぱり「時間をかけてゆっくりごらんなさい。これは美しいチョウになるのよ。チョウになったらいのちは短い、はかないものです。生きている本質はこの毛虫の中にある。そう思ってみると本当に可愛い。」この“時間をかけてじっと見つめていると可愛くなる”という気持ちが「愛づる」。そういった目で、命や生きものを眺める目が必要だろう。
    続きを読む

    投稿日:2013.07.29

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