【感想】三国志読本

宮城谷昌光 / 文春文庫
(3件のレビュー)

総合評価:

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  • hanemitsuru

    hanemitsuru

    文春文庫で「三国志」全12巻の刊行を終えたことを機に出版された、三国志や中国史に関する論考と対談を一冊にまとめたもの。

    収録内容は、目次を要約すると
    ・「歴史小説」観を聞くロングインタビュー
    ・三国志とそれを正史で語ることに関する自作解説
    ・歴史小説を語る対談
      水上勉
      井上ひさし
      宮部みゆき
      吉川晃司
      江夏豊
      五木寛之
    ・中国古代史に関するエッセイと対談
      白川静
      平岩外四
      藤原正彦
      秋山駿
      マイケル・レドモンド
    ・項羽と劉邦を語るエッセイ
    となっています。

    ファンブック、それも宮城谷昌光版の三国志を読んだファン向けであることは一目瞭然です。

    それがわかっていながらも宮城谷昌光の本を読んだことがない自分が手を出したのは、もちろん宮部みゆきとの対談が目当てです。
    でも、三国志は吉川英治版と横山光輝版とコーエーのシミュレーションでたっぷり楽しみましたし、宮城谷昌光は本屋さんの棚では大体宮部みゆきのそばにあるし(関係ないw)、いずれその著作の「正史に基づいているのが売り」の三国志も読んでみたいと思っています。

    そんなこともあって、お目当ての宮部みゆきとの対談以外の部分も楽しめるんじゃないか、と思い読み始めたわけです。

    三国志がテーマになっているところは、インタビューにせよ解説にせよ対談にせよ、楽しく読むことができました。
    これは、自分が三国志の登場人物のうち好きな者を書き出すと夏侯惇、典韋、許褚…と、どうやら曹操陣営の武将に肩入れしているのが理由の一つでしょう。
    「三国志演義」が元になっている他の三国志では、劉備と関羽張飛が主役で、曹操は敵役ポジションですが、宮城谷昌光はまず曹操の祖父曹騰から語り始め、その後も曹操と劉備の扱いが公平です。
    そんなところに親しみを感じ、読み進むにつれ「黄巾の乱」の黄色の意味などの豆知識を挟みつつも後漢末期から晋成立までの間を俯瞰する眼差しで書かれた宮城谷版三国志は、いつかは読みたい本リストのかなり上のほうにリストアップされることになりました。

    ただ、それ以外の古代中国を語っている部分は馴染みがなくて(よく知られていると思われる項羽と劉邦ですら、知っているのは名前だけです)やっぱり予習不足を痛感しました。せめて話題になっている人がどういう風に言われている人なのかくらいは知らないと(例えば『信長って「うつけ」って言われているけど実は』って話は前提になっている通説を知らないと楽しめませんよね)読んでいても字面を追っているだけで内容が頭に入ってきません。

    肝心の対談について。
    楽しみだった宮部みゆきとの対談はちょっとおとなしめでした。それでも仕事場や仕事の進め方についての話が聞けて興味深く読むことができました。ワープロと会話する宮部みゆき、今は何を使っているんでしょうか。

    ただ、特に作家や評論家などの出版関係者以外の人との対談は、対談として成立していないような気がします。
    江夏豊とか吉川晃司とかと対談をしていて、こちらも読むのが楽しみだったのですが、彼らはその道では超一流の人だけど、宮城谷昌光との関係は作家と一ファンです。作家とその一ファンの対談なのですから、どうしても作品をベタ褒めする内容になってしまっていて、そんな対談を自分のようにファン未遂の人が読むとどうしても引いてしまうことになります。

    ということで、やっぱり宮城谷版「三国志」を先に読んでおくことが大事でした。余裕があるなら、三国志と直木賞受賞作の夏姫春秋 くらいを先に読んでからこちらを読んだほうがよかったと思います。

    いずれこれらを読んだときに再読します。
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    投稿日:2020.04.03

  • abba-rainbow

    abba-rainbow

    正月休みに読もうと図書館で借りた本だが、結局正月には読めず明けての読了となった。読みたい本を幾つか物色していたなかで、書棚にドカンとオーラを放つ本を見つけたのがこれだ。

    金色っぽい表紙や、「三国志読本」の躍る文字に惹きつけられたのかもしれない。選んで大正解!とても面白かった!

    宮城谷氏が「三国志」を「文藝春秋」で連載されていたのが2001年5月~2013年7月ということで、本書が出たのが2014年5月とあったから、本当に超大作の完成直後の熱冷めやらぬ時期に編集された本ということで、企画も面白いし、内容も最高と感じた。

    3部の構成となっていて、トップは「三国志」を書き終えた宮城谷氏へのロングインタビューから始まる。続いて、連載開始時のインタビュー記事と続く。

    この「三国志」は構想10年、執筆12年の合わせて22年もの時間をかけた大作であったと知り、作家の一つの仕事のスケールに驚いた。これは宮城谷氏だからかもしれないが。

    当初、氏の「三国志」が出た時、第一巻で挫折した記憶がある。自分には、吉川「三国志」のイメージがあり、あの男のロマンの世界に再びのめり込みたいと期待していたが、なかなか熱くのめり込めなかったからだ。その理由が、本書を読んでわかった。

    吉川英治氏や柴田錬三郎氏の「三国志」は「三国志演義」をベースとして書かれているが、「三国志演義」そのものが、劉備玄徳を主役とし、曹操を悪役と仕立て上げた勧善懲悪色の濃いフィクションであるのに対し、宮城谷氏は、これまで誰も手を付けようとしなかった「正史」に基づく「三国志」に挑まれたのだった。

    時代小説の「三国志」ではなく、歴史小説として初の「三国志」に莫大な時間を費やし完成された。従って、著者の思いをしらず挫折した自身を大きく反省し、この宮城谷「三国志」を遅ればせながら再トライしたいと決意した。

    しかしながら、本書の2部、3部で繰り広げられる歴史対談を読んでいると、もう手が付けられないくらい読みたい本が増えてしまった。

    この対談もまた、人選も興味深いし、内容も半端なく面白い。切れ目なく最後まで楽しめた。

    第2部の対談者は、水上勉、井上ひさし、宮部みゆき、吉川晃司、江夏豊、五木寛之の6人。作家の4人は違和感ないとしても、吉川晃司、江夏豊の人選はインパクトある。そして内容がまた面白かった!もちろん、作家どうしの対談はどれも、果てしなく続くのではないかというくらい話題が豊富。

    第3部の対談者は、白川静(漢字の権威)、平岩外四(経団連名誉会長)、藤原正彦(数学者)、秋山駿(評論家)、マイケル・レドモンド(囲碁チャンピオン)とこの顔ぶれを見ただけでもユニークすぎる人選だ。

    対談者は、それぞれ著者に対しても、著作に対しも非常に好感、というより尊敬に近いものをもっており、対談を読んでいて心地よい。白川静氏の対談などは、まるで師弟対談のようにさえ感じられた。

    この本を読むと、中国古代から読みたくなるのは確実。そして、中国古代を読むには、宮城谷氏の著作、、、という気分になってきてしまう。
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    投稿日:2019.01.12

  • 文藝春秋公式

    文藝春秋公式

    【宮城谷昌光ワールドの最適の教科書】「三国志」をはじめ、中国歴史小説を書き続けてきた著者が、自らの創作の秘密を語り尽くした一冊。白川静、水上勉らとの対談も収録。

    投稿日:2017.05.18

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