【感想】フラットランド たくさんの次元のものがたり

エドウィン・アボット・アボット, 竹内薫, アイドゥン・ブユクタシ / 講談社選書メチエ
(17件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
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  • 思考の飛躍と断絶…。

    斬新だ! 非常に斬新だ!
    しかし、フラットランドの身分制は非常に厳しいなあ…。
    獲得形質も遺伝するようですし…。酷い世界ではありますな…。
    さて、内容としては非常に興味深いです。次元について考えさせられます。また、中世と近代、現代を分ける壁があらわになっていて時代の難しさと近代精神と現代精神の差について思いを馳せる不思議な感覚に襲われます。
    物語も中盤を超えると、フラットランドの住人に対する完璧な存在による福音というキリストの来臨のカリカチュアが現れるわけですが、この出来事への主人公の感激をよそに、ギリシャ神話の賢人のようにはいかず、悲嘆にくれる主人公の運命に悲しみと可笑しさを禁じ得ません。そして、この作品の警句として忘れてはならないのが、完璧な存在でさえ、フラットランドの住人である主人公と同じ既成概念の虜であるという事実です。神は正しい。神の知恵は正しい。よって知恵は正しい。正しい知識を否定することは神の御心に反しているのかもしれません。
    星5つ。
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    投稿日:2017.11.26

  • 主人公は正方形(職業弁護士)

    二次元(フラットランド)の視点から、零次元、一次元、二次元、三次元がそれぞれどう見えるかという思考実験をベースに社会風刺を混ぜて物語風に仕立てた作品。あまり長くはないので気軽に読めるが、分かりやすいかというとそうでもない。考えるな、感じろとしか良いようがない。
    1884年出という時代的隔たりにもかかわらず、思考実験部分には古さを感じない。風刺部分については、まあ、当時の人に向けて書かれているだけあって、ヴィクトリア朝社会一般についての知識がある程度ないと受け取るのが難しいよね、という感じ。一次元(ラインランド Lineland)は当然のようにRheinlandラインラントすなわち当時建艦ブリテンと建艦競争を繰り広げていたドイツを思い起こさせるとか。多分。
    見所は球によって(文字通り)次元の違いを教えられた正方形が逆転を果たせるのか、といったあたり。
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    投稿日:2020.09.05

ブクログレビュー

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  • 浜田

    浜田

    トップスリーに入る、すごく好きな本。
    私が想像できないものもたしかにどこかに存在しているんだと思わされた。

    投稿日:2023.05.09

  • mikimas

    mikimas

    二次元界(フラットランド)に住む四角形が主人公の物語。

    ある日、主人公の四角形氏はほかの次元に行って帰ってくる。数学者である彼は次元の違いを理解する。お話としてはそれだけだが、二次元の世界の歴史や文化、そこに住む図形たちの生活を四角形氏が丁寧に説明してくれ、異世界を描くファンタジー作品として読みごたえがある。
    ほかのファンタジーと一線を画すのが、この世界の「認識」の仕方について多くを割いているところだろう。二次元界の住人は四角形も三角形も円もそのまま見ることはできない。見えるのは線と点である。何角形かで身分の決まるフラットランドで、図形の彼らがどう図形を認識するのかということが説明される。この説明を通して、読者はふと三次元に住む自分の視界は二次元でしかないことに思い至る。そういう仕掛けの本なのだ。

    感覚では捉えられない高次元を四角形氏はアナロジーにより理解した。それを追体験した読者も理性によって、三次元の世界から飛び出すことができるようになるだろう。目の前の世界が広がるような壮大な読書体験ができた。

    また、フラットランドは文化的にかなりのディストピアである。19世紀に書かれた本で、著者が風刺としてそう書いているのか、何の気なしにそういう世界を作ったのかは分かりかねたが、風刺と思って面白く読んだ。
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    投稿日:2022.06.25

  • schuma

    schuma

    フラットランドの二次元人が一次元のラインランドを思考し、三次元のスペースランドを垣間見たお話。
    二次元世界なんて想像したこともなかったが、そこで見られる世界の様子は確かに納得感がある。
    一次元は更に難解ではあった。
    二次元人がひょんなことから三次元世界に踏み込んだ途端、自分の世界の真理を悟り更に奥に潜む世界に想像を巡らす。
    三次元人間の自分は四次元世界を想像することは出来ないが、理解することは出来る。
    別の本だが三次元人間の消化器官は口から1本でつながっているが、二次元人間でその構造は身体を二つに分断してしまうため機能しないことを思い出した。
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    投稿日:2021.10.19

  • phonsan

    phonsan

    Kindle電子書籍版(牧野内大史さん訳)も読んでいて、好きな作品。こちらを古書で見つけて購入。

    3次元人が4次元について考えるにはどうしたらよいか、ということを、2次元人が3次元に触れる話を通して、導こうとしてくれている。

    ・・・と思うのだが、結局、実際にやろうとするとできないのがもどかしい。

    その観点で楽しむとしたら(多くの読者がそうだと思うが)、フラットランドの社会や歴史に関する説明は冗長な気はする。原作が出版された頃のイギリスでは風刺として楽しまれたのかもしれないが、今の日本で読むと、そうでもない。
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    投稿日:2021.05.16

  • しゃち子

    しゃち子

    主人公は二次元世界に生きているため、三次元の存在を知らないし、立体を見ることはできない。その主人公が「三次元の福音」を受けるべき存在として選ばれ、三次元世界を経験する。
    三次元世界で見る平面は、二次元世界の存在から見ると「内部」なんだなぁ、と。二次元世界から見る線も、一次元世界の存在から見ると内部なのも理解できた。
    ということは、四次元世界の存在には私たちの内部が見えちゃうということ、なんだろう。
    二次元の世界にない「上」という方向。三次元の私の世界にないどこかの方向のどこかの空間を知る四次元の存在に想いを馳せた。

    ところで特別収録の「アイドゥン・ブユクタシによる三次元の外へ誘う写真シリーズ≪フラットランド≫」もめちゃくちゃ良かった。ほかの作品も見てみたい。
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    投稿日:2021.03.06

  • ofellabuta

    ofellabuta

    19世紀末の英国で書かれた奇想小説。2次元の平面世界であるフラットランドの数学者である主人公の正方形が前半はフラットランドのその奇妙な世界を解説、後半は3次元世界からやってきた球と遭遇するという話。次元の解説は判りやすく、フラットランドの描写も興味深い。ただ風刺小説としての傾向が強く、フラットランドの世界は持つ辺の数による厳格な階級社会であり、中でも女性は辺を一つしか持たない最下級の存在である直線とされ差別されているという、スィフトを思わせるディストピアとして描かれている。作中、女性はかなり酷い扱いだが翻訳は原作の差別的表現を削除した改訂版とのことなので、オリジナルがどれほどのものなのか気になってしまう。続きを読む

    投稿日:2020.09.11

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