【感想】母の記憶に

ケン・リュウ, 古沢嘉通 / 新☆ハヤカワ・SF・シリーズ
(24件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
5
10
4
0
0
  • その佇まいの美しさは、もはや奇跡。

    前作『紙の動物園』で衝撃を受けたケン・リュウの短編集第二弾。
    表題作「母の記憶に」の柔らかな筆致と卓越した抒情性に
    拝み倒したくなるような感動を受けました。

    素晴らしいです。

    繊細すぎるとさえ思える美しい佇まい。
    もはや奇跡、とすら感じました。
    すごいです。
    続きを読む

    投稿日:2017.04.30

ブクログレビュー

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  • 一条浩司(ダギナ)

    一条浩司(ダギナ)

    中国系アメリカ人作家ケン・リュウの日本における第二短編集。SFに留まらない多彩な魅力に富む全16編を収録。

    「烏蘇里羆」「草を結びて環を銜えん」「重荷は常に汝とともに」「母の記憶に」「存在」「シミュラクラ」「レギュラー」「ループのなかで」「状態変化」「パーフェクト・マッチ」「カサンドラ」「残されし者」「上級読者のための比較認知科学絵本」「訴訟師と猿の王」「万味調和」「『輸送年報』より「長距離貨物輸送飛行船」(〈パシフィック・マンスリー〉誌二〇〇九年五月号掲載)」を収録。

    SF、ファンタジー、歴史ものなどいくつかの要素が混合されているタイトルが多く、その多様な作品群はすべてを一括りに語れないものの、どれもが深い余韻を残すところがこの作家の特徴といえるだろうか。親子愛がからむことが多いのも特質のひとつ。

    表題作「母の記憶に」は短いながらSF作家としての作風が明確に現れている印象深い作品で、本書の肝といえる。
    「パーフェクト・マッチ」はSNS時代のディストピアを描いた古典的とも現代的ともいえるSF。というか、現代が昔のSFに追いついたというべきか。AIにすべてを決めてもらう世界は身近に迫っており、コントロールされた情報によって自分を失っていく危うさ、超管理社会に向かう現代世界への反抗が描かれている。この短編を読むと、現代の我々が、生きる奴隷として家畜化していく流れにあることがわかり空恐ろしくなる。
    「残されし者」はシンギュラリティ後の、「意識のアップロード」が実現した世界が描かれる。そこで起こる衝突にはすでにリアリティを感じるし、これから人類が直面する現実的な問題として非常に考えさせられる、というか考えていかなくてはいけない内容が示されている。

    いっぽうで「烏蘇里羆」や「『輸送年報』より「長距離貨物輸送飛行船」(〈パシフィック・マンスリー〉誌二〇〇九年五月号掲載)」のような歴史改変SFぽい不思議な作品も楽しめる。逆に「草を結びて環を銜えん」は重く心を揺さぶられる。本当にこの作家は多彩だ。SFというイメージにしばられず、ぜひ一度手にとってみてほしい短編集。
    続きを読む

    投稿日:2023.12.17

  • QAZ

    QAZ

    やはりケン・リュウ、いいですね。短編集ですが、どれもニヤリとさせられる作品ばかりで、違うテイストの物語をたくさん楽しめるお得な一冊です。

    投稿日:2023.09.02

  • norimm

    norimm

    一編一編がおそろしく練られた、まるで宝石箱のような短編集。取り上げる題材や時代は実に多彩でバラエティに富んでいるが、メッセージは根底では統一されている。それは“融合”。多様性の意義と実践が叫ばれる現代においてその輝きはさらに増して見える。特に「万味調和」は珠玉。続きを読む

    投稿日:2021.11.20

  • おさるのかごや

    おさるのかごや

    中編の「万味調和」は関羽の伝説をアメリカ移民の中国人が語る話で、どこがSF?と思ってしまいますが、語っているのが関羽のそっくりさんとなると... 3冊めの短編集も読んでみようと思います。

    投稿日:2021.11.18

  • らばぴか

    らばぴか

    粒揃いの短編集。ケン・リュウの短編小説には何とも言えない余韻があり、次の話に取り掛かるまで浸る時間を要することが多い。悲しい結末の話も多いけれど、人物やその思想へのスポットの当て方には作者の温かみが感じられる。「草を結びて環を銜えん」「シミュラクラ」「訴訟師と猿の王」がかなり良かった。ミステリ要素を孕んだ「レギュラー」はこんな話も書けるのかと驚かされる。続きを読む

    投稿日:2021.07.28

  • afro108

    afro108

     ケン・リュウの短編集第二弾。いわゆるSFっぽい話というよりも様々な小説のタイプにSFの要素を加えた話が多くて著者の懐の深さがよく分かった。特に驚いたのは「レギュラー」という話でいわゆる探偵ハードボイルド。そこへ眼による記録と人間の感情抑制というテーマを絡めていて映画化されていないのが不思議なくらい。NETFLIXのBlack mirrorで映像化して欲しい。意外系でいえば「万味調和」
    も同じ「SF」なんだけどもScience Fictionではなくてサンフランシスコが舞台の群像劇となっている。しかも三国志の関羽を下敷きにしているところもユニークだった。
     意外性あるものも含みつつ王道系も多く収録。シンギュラリティや意識のアップロードなど最近のトレンドの話もあってSF読みたい欲が満たされた。「ループの中で」では近代化した戦争における倫理感をテクノロジーでどう取り扱うのか?というセンシティブなテーマで好きだった。テクノロジーで人間の負担を減らしていくのは当然必要なことだけど因数分解して解決していくことは痛みを伴う。以下のラインが刺さった。

    コンピュータは正確さを要求するものであり、あいまいな直感を明確に表現しなければならない。それはつまり、人間の精神のあいまいさのなかにずっと隠されてきた醜悪さに直面せざるをえないということだった。

    同じような系統の話でいえば「シミュラクラ」は人が現実と向き合えなくて仮想の思い出に耽溺してしまう切なさと親子関係を絡めていてそちらも好みだった。もう1作あるので時間を置いてSF欲が高まってから読みたい。
    続きを読む

    投稿日:2020.10.26

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