【感想】制裁

アンデシュ・ルースルンド, ベリエ・ヘルストレム, ヘレンハルメ美穂 / ハヤカワ・ミステリ文庫
(29件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
8
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8
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0
  • 巧みな伏線がすべて衝撃のラストへ

    サスペンスに始まり一見犯罪をめぐる社会派劇だ。しかしながらそれは巧みな伏線が張り巡らされ、
    衝撃の結末に繋がることに読後気づかされる。あまり経験のない傑作。

    投稿日:2017.08.06

  • 傑作です。衝撃も、感動も。そして深い思考を要求される。

    『熊と踊れ』の著者のデヴュー作の新訳ということで……、
    文字どおり「イッキヨミ」でした。今年読んだ本の中で一番の読み応えです。

    幼女ばかりを襲う殺人鬼。
    その幼女の父親がおこした行動……!

    著者はテレビ局に勤務するジャーナリストと刑務所での服役経験のある男性、二人による共著。
    著者たちの議論を下敷きにしているということで、
    司法制度や刑務所の問題をえぐりだす社会派小説。
    書き出しの女児暴行殺害犯から
    娘を失った親の苦しみ。そして暴力の連鎖。

    他人の命を奪うことで、子どもの命を守れるとしたら……。
    けれど、人の生き死にを決める権利を誰にもないはず。
    決して答えはでることはないのだろう問題を投げかけられます。
    テーマは確かに重いのですが、この社会で生きていくうえで誰もが考えなくてはならない問題です。

    ちょっとおまけですが。

    「仕事が自分のすべてになってしまうなんて、ちっぽけで無意味なことだ。なぜって仕事はある日突然終わるのだから。
    そうしたら自分もおわっちまうんだろうな」ここの箇所、結構大事だと思います。
    当たり前ですがこういうことが書ける人だから、こういうリベラルな思想が礎にあるから
    こういうスゴイ小説が書けるのだとしみじみ思いました。
    北欧ミステリー人気を支えているのは、
    世界的にも水準が高いといわれるリベラルな北欧社会の思想なのかもしれません。

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    投稿日:2017.03.02

ブクログレビュー

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  • かしきふくろう

    かしきふくろう

    このレビューはネタバレを含みます

    ガラスの鍵賞受賞とのことだったので、本格推理ものかと思い読み始めたが、想定外のストーリーだった。

    日本は世界でも数少ない死刑制度存置国なので、フレドリックへの反応はスウェーデン以上になるのかなと思った。

    それにしてもスウェーデンの刑務所の自由さ、驚かされる。

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    投稿日:2023.12.16

  • 本屋さんが大好き!

    本屋さんが大好き!

    つらい描写の続く話でした。
    なのに読まずにはいられませんでした。
    この描写は、読みたくないと思う人がいるかも…
    イアン・バンクスの蜂工場が大丈夫だった私でさえ、昼ごはんがつっかえました…

    ただのフィクションではなく、自分自身はどう対峙するか、世間はどう動くのか。
    自分の正義は本当にうまく何かを導けるのか…
    いろいろ考えさせられました。
    そして松本清張的なものを感じました。

    5にするには読み手を選ぶ…でも、スゴい作品でした。4では少ない、4.5くらい。
    シリーズを続けて読みたい…なんとかしたい…と思っています。
    原題はOdjuret 怪物、野獣という意味だそう。
    スカンジナビア語ですよね。
    だれが怪物なのか。

    2017年に購入。
    最初からキツい書き出しに、購入当時は読みにくいなあ、と思っていました。
    最近脳みそが読書になじんできたので、今回はさらさらと読めました。
    内容が内容だけに、おもしろかったという感想にはならない。本当に痛ましい描写の連続でした。
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    投稿日:2023.05.15

  • じゅう

    じゅう

    スウェーデン作家「アンデシュ・ルースルンド」と「ベリエ・ヘルストレム」の共著の長篇ミステリ作品『制裁(原題:Odjuret)』を読みました。

    「ステファン・トゥンベリ」との共著『熊と踊れ』に続き「アンデシュ・ルースルンド」作品です… 北欧ミステリが続いています。

    -----story-------------
    北欧ミステリ最高の警察小説〈グレーンス警部〉シリーズ第一作

    凶悪な殺人犯が護送中に脱走した。
    市警のベテラン「グレーンス警部」は懸命にその行方を追う。
    一方テレビの報道を見た作家「フレドリック」は凄まじい衝撃を受けていた。
    見覚えがある。
    この犯人は今日、愛娘の通う保育園にいた。彼は祈るように我が子のもとへと急ぐが……。
    悲劇は繰り返されてしまうのか?
    北欧ミステリ最高の「ガラスの鍵」賞を受賞した人気シリーズ第1作。
    著者本人による改稿を反映した決定版。
    -----------------------

    本作品はストックホルム市警の「エーヴェルト・グレーンス警部」と「スヴェン・スンドクヴィスト警部補」が活躍するシリーズの第1作… 2004年(平成16年)に発表された作品で「アンデシュ・ルースルンド」と「ベリエ・ヘルストレム」のミステリ作家デビュー作です、、、

    フィクション作品なんですが、ノンフィクション作品だと言われても納得感のあるくらいの現実感と緊迫感を兼ね備えた作品で、しかも、単なるミステリ作品に留まらず、司法制度や刑務所の問題点を鋭くえぐり出す社会派小説に仕上がっており、特に中盤以降は胸を締めつけられるような感覚を覚えながら、ページを捲る指を止めれない… そんな印象深い作品でした。


    4年前に二人の女児を凄惨な手口で暴行・惨殺した罪で服役していた囚人「ベルント・ルンド」が護送中に逃走… 再び幼い少女が犠牲となる可能性があり、ストックホルム市警は総力を挙げて行方を追う、、、

    ベテランの「エーヴェルト・グレーンス警部」も相棒の「スヴェン・スンドクヴィスト警部補」とともに捜査に加わる… そんな中、五歳の娘「マリー」を保育園に送り届けた作家の「フレドリック・ステファンソン」は、保育園の門の前のベンチにどこかで見覚えがある男がじっと座っているのを目撃していた。

    その後、テレビで「ルンド」が逃走した報道を見た「フレドリック」は凄まじい衝撃を受ける… 愛娘の通う保育園の前にいたのは「ルンド」だったのだ、、、

    「フレドリック」は我が子のもとへ急ぐが、悲劇は繰り返されてしまう… 失意のどん底に放り込まれた「フレドリック」だったが、「ルンド」が更なる犯行に及ぶ可能性が高いことを知り、新たな犠牲者が出ることを防ぐため義父の遺品である狩猟用ライフルを手にして、「ルンド」が出没すると思われる保育園へ向かう。

    そして、「フレドリック」はターゲットの幼児を狙う「ルンド」を発見… 保育園を警備していた警察官には一言も声をかけないまま、「フレドリック」はライフルの引鉄を引く、、、

    「フレドリック」の行動は、マスコミによって大々的に喧伝され一部の人々からは英雄視され、世間から注目される、

    娘を失った悲しみをともにする人々、

    理由は何であれ、人殺しは人殺しでしかない、と考える人々、

    社会が始末できなかった人間を始末して、社会を守った、その勇気をたたえる人々、

    復讐を目的とした殺人であったことは明らかだ、だから見せしめのためにも長期刑にすべきだと考える人々、

    あらゆる人々の目が「フレドリック」に向けられる。

    さらに、地方裁判所で正当防衛による無罪判決が下されたことに刺激を受けた大衆は、画一的且つ曖昧な正義への使命感に昂揚・熱狂する。

    性犯罪者への強い憎しみが渦巻く地域で、それぞれが駆り立てられるようにして起こした行動が、思わぬ結果を招く… 国家体制・機能への不信と憤りをもった人々は、警察を無視した性犯罪者狩りを始め、私刑はエスカレート、制御不能となる、、、

    或る瞬間を堺に、異常へと変わる日常… 極めて粗暴な制裁が下層社会までまかり通り、悪夢のような憎しみの連鎖が展開される。

    そんな中、地方裁判所で一旦、無罪の判決を受けた「フレドリック」だったが、検察側の控訴により控訴裁判所で再審が行われ懲役十年の判決を受ける… そして、「フレドリック」は、入所したアスプソース刑務所で幼児性愛者と誤解され、そこにも悲劇が、、、

    犯人逮捕後の、殺人者をどう裁くかという罪と罰の命題に焦点があてられた作品でしたね… 犯人逮捕で一件落着ではなく、社会的な影響も含めて、罪に値する罰に何が相応しいかということを考えさせられた作品でした。

    原題の『Odjuret』って、直訳すると『怪物』 『野獣』という意味なんだそうです‥ 一見、怪物は凶悪犯で更生の見込みのない殺人者「ベルント・ルンド」であることは明らかなのですが、、、

    物語が進むにつれて、怪物は他の人々にもとりついているように見えるんですよね… 他人の命を奪うことで、子どもの命を守れるとしたら、そうすべきなのか? 人の生命の価値を、同じ人間が決めてしまうことは、果たして許されるのか? それが許されるとき、怪物が生まれるのではないか? 考えても、考えても、答えの出ない難しい命題だと感じました。


    読んでいて苦しくなる… 胸を締めつけられるような感覚が離れない作品でしたが、、、

    それでも、「アンデシュ・ルースルンド」と「ベリエ・ヘルストレム」の作品を次も読みたいと思います。




    以下、主な登場人物です。

    「フレドリック・ステファンソン」
     作家

    「マリー」
     フレドリックの娘

    「アグネス」
     フレドリックの元妻。マリーの母親

    「ミカエラ・スヴァルツ」
     フレドリックの恋人。保育園職員

    「ダヴィッド・ルンドグレーン」
     マリーの友人

    「レベッカ」
     フレドリックの知人。牧師

    「ベルント・ルンド」
     アスプソース刑務所に服役中の連続殺人犯

    「レナート・オスカーション」
     アスプソース刑務所の性犯罪者専用区画長

    「スティーグ・リンドグレーン(リルマーセン)」
     アスプソース刑務所の一般区画の囚人

    「ヒルディング・オルデウス」
     アスプソース刑務所の一般区画の囚人

    「ヨッフム・ラング」
     アスプソース刑務所の一般区画の囚人

    「ドラガン」
     アスプソース刑務所の一般区画の囚人

    「スコーネ」
     アスプソース刑務所の一般区画の囚人

    「ホーカン・アクセルソン」
     性犯罪者

    「ラーシュ・オーゲスタム」
     検察官

    「クリスティーナ・ビヨルンソン」
     弁護士

    「シャーロット・ヴァン・バルヴァス」
     判事

    「ルードヴィッグ・エルフォシュ」
     法医学者

    「ベングト・セーデルルンド」
     タルバッカ村の建設業者

    「ヨーラン」
     ベングトの隣人

    「エーヴェルト・グレーンス」
     ストックホルム市警警部

    「スヴェン・スンドクヴィスト」
     ストックホルム市警警部補
     
    続きを読む

    投稿日:2023.03.11

  • 家計法廷

    家計法廷

    このレビューはネタバレを含みます

    アンデシュ・ルースルンドのグレーンス警部シリーズ第1作。初読。

    冒頭の残酷描写から始まり、ただただ胸糞悪い展開が続く。読んでいて辛かった。。。鬱々としたストーリーではここ最近では一番かも。これぞ北欧小説だなぁと。

    冒頭に脱獄する犯罪者がとんでもない化け物(原題も「怪物」のようなニュアンスらしい)。あまりにも理解できない、意思の疎通もできない、どうしようもない怪物。その犯罪者に狙われた娘と、その父親の顛末が描かれる。。。と思いきや。中盤以降、全く予想もしていなかった展開に。憎しみの連鎖というか、悪い方向に転がり落ちていくってこういうことだよなと。読み終えて、邦題の「制裁」に納得。

    あまりの報われなさと意外な展開は非常に良かった。が、グレーンス警部が全く活躍しない笑。デビュー作らしいので、シリーズ化する考えがなかったのかも。ミステリ要素もほぼないため、その点だけ気になった。

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    投稿日:2023.02.25

  • Gen.

    Gen.

    こう終わるのかって・・考えさせられるなー。
    自分的にはどうなるんやろうって飽きずに読み進み読了。
    グレーンス警部次回以降に活躍があるのか興味津々。

    投稿日:2021.01.29

  • hito

    hito

    私刑の連鎖が生む悲劇。
    どこかで間違いか勘違いが起こりそうな予感はしていたがそこか。。。誰と間違えた??

    投稿日:2020.09.15

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