【感想】七帝柔道記

増田俊也 / 角川文庫
(19件のレビュー)

総合評価:

平均 4.4
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  • 色んな意味で想像以上の熱さと面白さだった。

    先月読んだ「北海タイムス物語」が面白かったので著者・増田さんの自伝的小説である本書に辿りついた。まさか50歳過ぎて柔道記を読むとは思いもしなかった。道民にとって頂点とも言える北海道大学に柔道をやるために入学した事実にまず驚く。寝技中心の七帝柔道は想像を絶する苦しい練習の連続でその熱血ぶりに再度驚く。新歓合宿で凱歌や寮歌を練習する場面は何ともいえす懐かしさを感じた。実は私も新入社員研修を受けた大雪青年の家の所歌を今でも覚えている。結局は私も同じ時代を生きてきた人間で同じ温度感を持っているのだなと気付いた。
    なぜこんな辛い練習を続けるのか、別世界の出来事と思って読んでいたが段々と共感できるようになっていった。終盤は続けること逃げないことの大切さが伝わってきて涙が出た。要するに辛いとか苦しいと感じることは相対的なものなのだ。ある程度の年数生きていると過去の苦しみが尺度となって自分を救ってくれる時がある。あの時乗り越えてられたのだからこれ位は大丈夫という感覚だ。色んな意味で想像以上の熱さと面白さだった。残念ながら柔道の技はよくわからないまま終わってしまったがこれからは柔道を見るのが楽しくなりそうだ。
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    投稿日:2017.06.23

ブクログレビュー

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  • tsukasa26

    tsukasa26

    じこう時候の挨拶 日本国土の四分の一は北海道である 井上靖『北の海』 くずれかみ崩上四方固め 差し障り 嘱望されていた 楡の巨木達が初夏の風に揺れていた 私達は粉砕された自分から新たな自分を見つける必要があった。新たな哲学を見出す必要があった。そうしないと、この世界では、生きている価値すらなかった。それほど腕力というのは圧倒的に我々の眼前に突きつけられた命題であった。 再々さいさい 寝技ばかりのルールで排斥されている七帝戦に学生時代の全てを捧げる 卒塔婆 大切なのは、いま目の前にあることに真摯に向き合うことなのだ。自分がいま持っているもので真摯に向き合うことなのだ 練習量がすべてを決定する柔道 岡田有希子が飛び降り自殺を遂げた一九八六年四月 北大裏の喫茶店でクリぜん(クリームぜんざい)を貪り食い続きを読む

    投稿日:2021.06.21

  • フーテン

    フーテン

    さすがに、ここまでの経験はありませんが、私も何かに打ち込んでいた時期は、人生の中で充実している時だったなぁ。キツいけど、気持ちが満たされる。こういう経験は大切だと思います。

    投稿日:2021.02.05

  • mmlibrary

    mmlibrary

    このレビューはネタバレを含みます

    2020/12/20 読了
     講道館柔道とは別ルールの高専柔道の流れを組む七帝柔道があったとは・・(高専柔道・・・旧制高等学校・大学予科・旧制専門学校の柔道大会で行なわれた寝技中心の柔道の略称。)七帝対抗戦は現在もまだ継続しているらしい。猛練習に次ぐ猛練習の様子が凄まじい。柔道部学生の生活は練習一筋で無茶苦茶に見えるが、これを許容している大学や社会はまだ余裕があるということだろうか。

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    投稿日:2020.12.20

  • Saitoh Yuko

    Saitoh Yuko

    柔道のなかでは、ややマイナーな七帝柔道に打ち込む青春譚(旧帝大伝統の寝技メインの柔道です)
    ゴング格闘技が発端で興味を持って買った本でしたが、大学生活の話でもあるので、青春モノとしても良かったです。
    キャンパスライフとなんだか書けない空気ではありますが、血と汗とロマンと若さ、往時の雰囲気が偲ばれる良著。続きを読む

    投稿日:2020.12.18

  • kuma0504

    kuma0504

    中学・高校6年間柔道をやっていた。団体でも個人でも優勝経験が無い弱小の柔道選手だった。けれども、七帝柔道の魅力と辛さには共感する。

    柔道は過酷な競技だ。乱取り練習というものがある。私は体力が無かったから4分間を5本やっていただけで、立ちながら意識が飛んだことがよくあった。試合で絞められて気がつくと前後の記憶を無くしたこともある。あの頃から1センチも身長は伸びていないが、この数十年間ずっとプラス5キロー20キロの間を彷徨っていて、決して中量級のベスト体重に戻ろうとしない。あの頃は、毎日ご飯を三杯食べながら、全然体重は増えなかった。それだけの練習量だった。繰り返すが、私は弱小の柔道選手だった。(試合形式の乱取りが如何に過酷かは、オリンピック中継で、いつも選手のスタミナ切れが言及さることでも想像出来るはずだ)

    北大柔道部は、立ち乱取りより数倍苦しい6分の寝技乱取り等、様々な乱取りを延々と繰り返す。最後に300回の腕立て伏せで閉める。これを「通常の」練習としている。更には合宿が年に7回以上ある。地獄の北海道警察出稽古。あ、あり得ない過酷さだ。そんな過酷な練習をしても、増田俊也が入った時点で北大は2年連続最下位だった。七帝柔道は、15人戦の抜き勝負、一本勝ちのみ、先鋒から三将までの13人が6分、副将と大将は8分、寝技への引き込みあり、膠着の「待て」なし、場外なし。我々が知るポイント制のオリンピック柔道とは異次元のものである。

    これは寝技に特化した「練習量がすべてを決定する柔道」の世界を描いたものである。私は柔道は強くなれなかった。オリンピック柔道には、練習量と共に「センス(才能とも言う)」が必要だった。けれども、高専柔道の流れを汲む七帝柔道は、寝技だけを極め、やればやるだけ強くなるのである。

    私の高校の古文の先生に、戦前に六高(岡大)で柔道選手だったという方がいた。ものすごい小柄で、どう見ても弱そうな方だったが、国体で優勝した巨漢の高校柔道コーチが尊敬していた。その方の凄さを理解したのは、高専柔道を描いた、井上靖「北の海」を読んで以降だった。

    まるで戦前のような練習をこなしながら、実際はつい最近の86-87年の話である。何が彼らをそうさせるのか。私だけの経験で言えば、何十回と負けても、一回だけタイミングがあって強敵に勝てたことがあった。あの勝利が、これまでの人生で何度私を助けたことか。しかし、「まぐれの一勝」は、人生を丸ごと変えるほどに自分を助けてはくれないのも事実だ。増田俊也は、それとは別次元の練習をしていた。

    この自伝的小説で、自分の本名で出ている増田俊也が、「柔道をするために北大にきました」と宣言するのも、共感はする。共感はするし頭ではわかるけど、私なら決して出来ないし、やりたくない世界でもある。延々と練習の描写が続き、一年目の七帝戦は読むのが苦しくて目を背けた(読むのを中断した)。

    おそらく、全て事実なのだろう。あのベタベタな新入生歓迎行事も事実なのだろう。もう少し感動の展開を用意するべき、七帝戦の試合の結果も事実なのだろう。

    「こんなので、何かを掴めるなんていう、著者の主張は理解できんね」
    多くの読者が、本音半分ではそう思っているのは目に見えるようだ。学生時代の全てを練習に費し、マスコミにも登場しないし、就職にも有利にならない。私もよくわからない。けれども、わかる気がする。決して著者に阿(おもね)って言っているわけではない。

    残念ながら、こんなにも長編なのに、増田俊也は、何も成し遂げることなく途中で小説は終わっている。ように見える。史上唯一の七帝戦を描いたこの小説は、大きなことを成し遂げているが、主人公の増田俊也は未だ何も成し遂げてはいない。連載が中断して10年、続編が描かれる気配もない。北大柔道部らしい、と言えばその通りではある。
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    投稿日:2020.08.05

  • kurozanny

    kurozanny

    面白かった。バンカラな文化が残る汗臭い舞台。主人公は壮絶なまでに辛い練習を延々と繰り返す。プロになるわけではなく、有名になれるわけでもないのに、何で人生を捧げるのか。
    しかし読み進めていくうちに、しっくり来てしまう。そこは凡人が努力で天才に肉薄する世界だ。そして、試練に耐えた自負が凡人を英雄に変えるのだと。最初は憧れから、後には七帝柔道への愛によって、主人公は練習に耐えている。最初のうちは理解不能だったが、やがて彼らの克己心に無条件の敬意を感じずにはいられなく、彼らの青春が羨ましくなってしまう。そんな、不思議な魅力のある作品だった。続きを読む

    投稿日:2020.07.13

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