【感想】古事記とはなにか 天皇の世界の物語

神野志隆光 / 講談社学術文庫
(1件のレビュー)

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  • キじばと。。

    キじばと。。

    『古事記の達成―その論理と方法』(1983年、東京大学出版会)や『古事記の世界観』(1986年、吉川弘文館)などの著書で『古事記』と『日本書紀』を一体のものとして捉える「記紀神話」という枠組みを批判してきた著者が、『古事記』のテクストに沿って、その一貫した世界観を読み解いている本です。

    著者は、『古事記』と『日本書紀』を一つにすることで、日本民族の神話として「記紀神話」とみなす解釈が、従来の『古事記』についての研究では支配的だったと考えています。こうした解釈の枠組みは、津田左右吉の神代史形成論において明確にされ、さらに多元的な構成要素が体系化され、さらに古代政権におけるイデオロギーのもとで一つに取りまとめられていったという発展段階説として流布していきます。著者は、岡田精司や水林彪の祭儀神話論、あるいは大林太良や吉田敦彦の比較神話学論などにおいてもこうした枠組みが採用されていることを指摘し、批判しています。

    『古事記』は神の世界の物語であり、その枠組みのもとで天皇の支配の正統性を語った一つのテクストとして理解されなければならないと著者は考えます。著者は、『日本書紀』のコスモロジーとの比較などを通して、『古事記』に固有の物語の枠組みを解明することをめざしています。

    著者の「記紀神話」批判の概要については他の著作でも繰り返し述べられていて新鮮さは感じませんでしたが、著者による『古事記』の具体的な解釈がおおむね『古事記』のテクストの順序にしたがって語られており、その一貫した世界観を理解することができるという点でおもしろく読みました。
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    投稿日:2020.01.16

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