【感想】西郷隆盛と明治維新

坂野潤治 / 講談社現代新書
(11件のレビュー)

総合評価:

平均 3.2
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ブクログレビュー

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  • tokyobay

    tokyobay

    「攘夷」にあまり関心を持たない「国民議会」論者としての西郷を描く。特定の人物を取り上げるのは著者にしては珍しく、異色作にも思えるが、幕末から戦前昭和の80年の間に活躍した政治家の中で最も尊敬するのが西郷との事。近現代の大家である著者のこういう発言には少々イガイ感がある。内容的には新しいとまでは言えないが、通説というか俗説を修正する論考にはなっているように思える。
    ただし、やはり西南戦争は著者にとっても不可解らしく、歯切れが悪い。「大儀」が存在しない反乱ではあったが、それなりの勝算はあったと。ただし、川村純義と樺山資紀の裏切りに期待していたというのはあまりにも他力本願であり、時節を読み誤ったとしか言いようがない。
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    投稿日:2020.06.06

  • 波瀬龍

    波瀬龍

    【要約】
    ・西郷隆盛と言えば征韓論。しかし、彼は決して征韓論を支持していたわけではなかった。征韓論を声高に主張したのは板垣退助で、西郷隆盛は海軍の朝鮮挑発を卑劣な振る舞いだとして非難していた。だからと言って西郷が非戦論者だったというわけではないが、やるんだったら相手は中国という意識を持っていた。朝鮮には特使を派遣して交渉しようと考えていたのを、岩倉具視に歪曲されて天皇に上奏され、征韓論者的な立場に仕立て上げられてしまった。

     征韓論者ではなかった西郷が、なぜ最後に挙兵することになったのか、それこそが本書の重大トピックであると冒頭で著者によって宣言されている。しかし、彼の勝算への目配せまで検証しながら、肝心の動機の部分については、自身の力量不足として突き詰められないと告白して終わりになってしまっているのは、やはり消化不良感が残る。

    【ノート】
    ・幕末から明治にかけての薩長土肥、そして朝廷と幕府の重要人物の動きを書簡などからの引用を数多く見ながら著者と一緒に紐解いていく西郷隆盛の動きは予想以上に面白かった。

    ・西郷隆盛はもちろん、勝海舟、木戸孝允、岩倉具視などの書簡などからの原文引用が多い。読み慣れないので最初は一字一句ちゃんと追っていかないと意味が分からないので億劫だったが、慣れていくと当時の雰囲気が分かって面白くなってきた。

    ・著者は、何度か本文中で明言している通り、西郷隆盛萌えである。だから、例えば嶋津久光や大久保利通、岩倉具視の描き方は、西郷擁護の観点から描かれているが、逆からの見方もあるはずだ。

    ・未読の松岡正剛「日本という方法」の出だしは西郷さんから始まる。「『なぜ西郷隆盛が征韓論を唱えたのかの説明がつかないかぎり、日本の近現代史は何も解けないですよ』といったことを口走りました。(P7)」とのことだが、この時と今の松岡正剛さんの考えは、本書の見立てと通じているのだろうか。

    ・図書館の講談社アラートで知った。
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    投稿日:2018.10.28

  • jijiimba

    jijiimba

    歴史学者の坂野潤治さんの本。
    西郷隆盛の生涯を史書をもとに描く。

    特に新しい発見も納得もなかったな。
    それ以上でもそれ以下でもない。
    それでいて史書の現代訳がないのでわかりにくい。

    投稿日:2013.12.27

  • コロちゃん

    コロちゃん

     本書を読んで、かつて司馬遼太郎は「翔ぶが如く」という小説のあとがきで、西郷隆盛という人物について「日本にはこの様な人物の類型がなくわかりにくい」という趣旨のことをつづっていたことを思い起こす。
     本書は、そのような「幕末から明治維新」という混迷と動乱のわかりにくい時期を、現代の政治の知識から考察している興味深い本であると思った。
     「尊王攘夷」という当時の政治スローガンを、「尊王」「攘夷」「開国」という思想内容にまで踏み込んで、当時の各藩におけるそれぞれの政治勢力の動向と変転を詳細に考察する本書の内容は、実にわかりやすい。
     混迷の時代には、常に「保守派」「革新派」と分かれて争うのは歴史の常であるが、当時は「幕府」や「各藩」がそれぞれ内部で多くの「派閥」が、くんずほぐれつの争闘を繰り広げていた。
     この混迷の時代の「西郷隆盛」を「攘夷なき尊王論者」と捉える本書は、説得力があるとともに時代状況も詳細に知ることができる。
     「安政の大獄」についても「開国派による開国派の弾圧」との視点は興味深い。
     なるほどこのようにみると理解しやすいが、この時代に現代の視点からのこのような分析が通用するのかとの思いも抱く。
     また本書は「西郷隆盛は征韓論者などではではなかった」とし、西南戦争についても「一時的な自力優勝の可能性は十分あった」と考察しているが、この内容は一般的な知見とは落差がある。
     以前「勝海舟」の詳細な本で「勝海舟は晩年になってから西郷隆盛は征韓論者ではないと語りだした」とあったが、当時の関係者の残した文書記録をより深く読み込めばまだまだ新しい知見が得られるのかもしれない。
     事実のみをつづる歴史書は、「教科書」のようで読んでもつまらないが、本書はいろいろ読者の思考を刺激する良書であると思った。
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    投稿日:2013.07.23

  • kawafm

    kawafm

    西郷隆盛=征韓論という「虚像」が大いなる誤解に基づくものである、というポイントは理解できた。右翼にも左翼にもその「虚像」が利用されがちな人物だけに、彼らを論破する武器としても有用だ。最期に西南戦争に至ったのも、著者自身その目的は不明としながら、最終的にそうなってしまった理由は推測できる気がした。続きを読む

    投稿日:2013.07.11

  • 「おやっさん」

    「おやっさん」

    勝てば官軍。

    権力を握った側は、自身の出自を正当化しなければ、統治できない。

    所謂、征韓論なるものに敗れた西郷は、賊軍として処遇せざるを得ない。

    しかしながら、史実は史実として厳粛に残存する。

    西郷にまつわる史実を丁寧に読み解けば、新たな仮説を立てることができる。

    日本近代史の第一人者が近代国家に導いた人物の実像を解き明かしてくれた。

    若い時から慣れ親しんだ司馬史観を離れるてみるのも楽しいものである(笑)。
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    投稿日:2013.06.28

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