【感想】中世を道から読む

齋藤慎一 / 講談社現代新書
(8件のレビュー)

総合評価:

平均 3.5
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  • タイトルが内容を示してないし、つまらない

    これは別に中世の構造を「道」と言う観点から解き明かすとかそういう趣旨の本ではない。
    「「路次不自由」の意味は、と考える本書の課題」とあるように、「遠すぎて自由に通行できない道」「川や峠があって自由に通行できない道」「戦時中の敵地を通れない」の例を延々と並べてるだけ。中世で遠ければ通行に不自由するのは当然のことで、武田と北条が戦っていればそこを通れないのも当然。それを示す書簡を延々と並べて例示する、そこに何の考証もないので時間の無駄。

    あとがきに「編集者にそう言われてみればそうですねと評された」とあるように当たり前で特別に考えるまでもないことが書いてある。
    後は筆者の思い付きで、それを考証すればそれなりの読み物になるはずだと思うけれど、そのまま放置と。せめて持説くらい開陳すればと思うんだけどねぇ。「飛脚とは何者か」なんて本が書けそうな題材なんだけど。
    これを出版した意図こそ読みたい。何が書きたかったのかさっぱりわからない。

    一番面白かったのは、あとがきで「教科書では江戸幕府が五街道を整備したことになっている。東海道の難所、箱根は戦国大名の北条氏によって整備され、東海道自体も北条氏により新道、今の東海道、が開かれた。中山道、甲州街道も江戸幕府以前の整備。江戸幕府の成果としてことさらに取り上げることもない。こういうと職場で叱責を浴び立場を下げる」(評者略)と言うくだり。

    学者の世界って相変わらず「事実ではなく、誰がその説を唱えたか」で評価されてるんだなって改めて認識した。
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    投稿日:2021.12.24

ブクログレビュー

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  • 月猫夕霧

    月猫夕霧

    中世の道路交通について、その困難さを文献から迫ってます。中世は地図が無い、あちらこちらでドンパチやってる、川は氾濫する、雪が降れば通れないし溶ければ川が暴れると、今みたいに気楽に出かけられる状況では無かったようで。特に川は、今はダムで水量を減らしているので渡れそうに見える川も当時は雨が降れば大暴れだったのだから、川幅が広すぎたりするとわたることが難しかったのですね。
    話は中世から飛びますが、江戸時代に川に橋を架けなかったのも、暴れ川に橋を架けるのが大変だったのものあるかも。
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    投稿日:2022.03.02

  • Στέφανος

    Στέφανος

    第1章 路次不自由(古文書は語る;戦国人の時空間;政治・軍事・自然)
    第2章 川を渡り、峠を越える(越すに越されぬ利根の流れよ;舟橋を架ける;峠の鬼、そして地蔵)
    第3章 道は誰のものか(越境可能な存在;通行を左右するもの;道路を管理する人びと)
    第4章 すべての道は鎌倉に通ず?(メインルートは上道;河川交通と陸上交通の結びつき;鎌倉の地位低下、江戸の台頭)

    著者:齋藤慎一(1961-、東京都、日本史)
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    投稿日:2018.11.29

  • tagutti

    tagutti

    <目次>
    はじめに
    第1章  路次不自由
    第2章  川を渡り、峠を越える
    第3章  道は誰のものか
    第4章  すべての道は鎌倉に通ず?

    <内容>
    歴史も視点を変えると違って見えることを証明した本。単純に行きたくないので上杉謙信や北条氏政が手紙でごまかしたのではなく、利根川の渡渉は中世においてはかなり難儀なもので、特に雪解けの時期は難しかったこと。中世後期(享徳の乱以降)の関東は、北関東が政治の中心になったこともあり、道が変わった(具体的に言うと鎌倉時代からの「かまくら道」(鎌倉街道)が機能しなくなっていたことがわかる(鉢形城の研究などから証明される)。なかなか面白かった。続きを読む

    投稿日:2017.07.25

  • reinou

    reinou

    このレビューはネタバレを含みます

    2010年刊。著者は㈶東京都歴史文化財団江戸東京博物館学芸員。中世とあるが、基本的には戦国時代(一部、合戦史が基礎の室町時代の解説有)の関東平野における道の実態を見せ、江戸時代に五街道が整備されたというステレオタイプ的な道開発観を修正・是正する意義を持つ。実際、判らないことが多いそうだし、また、利根川の渡河面は兎も角、川運・海運との関係性は十分な記述とは言い難い。とはいえ、時・場所の対象範囲が狭く明快でかなり楽に読める。引用文献(手紙類が多い)も現代訳での掲載で、判りやすさ・読みやすさは確か。
    自然環境(山岳地帯、洪水や川の氾濫、積雪・豪雪地帯)に加え、大名の支配の強さや、支配領域から見て辺境か否か等、交通発達の多面な要因が垣間見れる。一方、地域分析とは外れるが、中世的な関所の存在理由(単なる通行規制ではなく、通行に要する安全確保などの実費徴収の面)、織田権力の楽市楽座の意味、近世期の関所との異同等、上手く読めば、別のテーマにも思いを馳せることができそうな書である。

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    投稿日:2017.01.23

  • asaitatsuya

    asaitatsuya

    中世の書状の中によく書かれている「路地不自由」の意味を、他の文献や明らかになっている史実などの証拠に基づいて、状況ごとに丁寧に説明している本。実在する多種多様な古文書を例題として、自然地形による制約、天候による制約、政治状況による制約を区別して論じており、とても分かりやすい。また、中世の鎌倉街道の盛衰と変遷を例にとり、「古道といえども時代によって付け変わる」という当たり前のことを理路整然と説明している点も面白い。続きを読む

    投稿日:2015.06.28

  • 扇谷上杉定正

    扇谷上杉定正

    Lv【初心者】~【中級者】鎌倉・室町東国・戦国を知ってるとなお面白い!

    初っ端から俺様の孫・息子・そして家宰の「通路不自由」の言い訳が乱舞する面白構成!
    っていうかお前ら言い訳しすぎだろ!www

    鎌倉・室町・戦国時代の例が巧みにクロスオーバーする。
    後北条氏や上杉謙信もよく登場するな。

    そして!新田義貞が進軍した鎌倉街道上道は、実は戦国時代には寂れてしまっていた!という衝撃の事実。
    原因は……鎌倉府が崩壊、政治の中心が、古河、五十子、そして鉢形城に移ったから。
    そう、俺様たちの享徳の乱や長享の乱のせいなんだよな、というのが良く解るエキサイティングな一冊だ!
    続きを読む

    投稿日:2014.04.03

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