【感想】人形 デュ・モーリア傑作集

ダフネ・デュ・モーリア, 務台夏子 / 東京創元社
(8件のレビュー)

総合評価:

平均 3.5
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ブクログレビュー

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  • winder

    winder

    初ダフネ・デュ・モーリア。カタルシスを味わえる話が一切無い短編集。21歳でこんな話を書いていたなんて困ったお嬢ちゃんだよ。時間を開けて他の傑作集も読んでみよう。

    投稿日:2018.12.25

  • nao

    nao

    著者の意地悪い(シニカルな)視線の意識される作品群。濃淡さまざまに不穏の陰影で巧みに彩どられ、暗くぬかるんだ物語世界に浸ることができる。最もこの意地悪さは著者の人間(人間関係)への洞察力を示す(反映させた)ものである。
     牧師ホラウェイを主人公にした二篇『いざ、父なる神に』『天使ら、大天使らとともに』は要職に就く人間の欺瞞にみちたふるまいが的確に描き出されている好篇。ブラックユーモアの味わいの『性格の不一致』、語り口の亀裂から性格の歪(邪悪)が覗く『笠貝』(既読)、表題作『人形』は構成など大仰だけれどこれも好みの作。
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    投稿日:2018.02.04

  • ゆみみゆ

    ゆみみゆ

    勝手にもっと時代がかった古い内容なのかと思っていたので(「レベッカ」「鳥」の原作者だから?)、なかなかに現代っぽい内容で面白かった。

    人の関係が破たんしていく様がなんともリアル。「ウィークエンド」「そして手紙は冷たくなった」とかヒェー分かる分かるって感じ。

    そして「笠貝」。
    いる。こういう人間。
    本人の一人称語りってところが上手いし怖い。
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    投稿日:2017.10.15

  • ゆきやまま

    ゆきやまま

    正直、時間に追われて読んだのでこの評価。図書館で借りたため、次に借りたい人が待っているので。そんなに読みたいんなら買えば~ってことだね。うん、もう一度ゆっくり読みたい。

    初期短編集。以下収録作。
    東風」
    平穏な毎日を送る島民。突然の嵐で漂着した船に乗っていた異国の男たちによって島民はどんどん変わっていき…男たちが去ってももう元には戻れない。
    「人形」
    岸壁の割れ目に押し込まれていた謎の手記。手記の主はある女と運命的な出会いを果たすが、彼女には秘密があり…江戸川乱歩みたいな話がまさかここで読めるとは。
    「いざ、父なる神に」
    これぞデュ・モーリアの真骨頂って感じの作品。上流階級の人々にのみ存在価値を置く牧師、ジェイムズ・ホラウェイ。彼は哀れなメアリーがどうなろうと関係ないのだ。正反対の副牧師が対応していたらどうしただろう。それを書かないのもデュ・モーリア。
    「性格の不一致」
    笑えないかもしれない、結婚すると特によくわかる。しょせん相手は他人なんだと。
    「満たされぬ欲求」
    考えの浅い無職の若者が、同じく幼い妻と新婚旅行に。これはちょっと笑えた。最後も皮肉だけどお互い仕事見つかったし。
    「ピカデリー」
    悪い男につかまって、雪崩式に落ちぶれた道へ進んでいった女の話。ラストの『赤いライトに従って進め』が痛烈に皮肉。
    「飼い猫」
    おそらく姉妹みたいといわれていた母娘が、ひさしぶりに会うと、娘は当然若く美しい少女になっていて。母の恋人の馬鹿な勘違いも笑えるけれど、新年のパーティの場面で娘が全てを理解するのがよかった。
    「メイジー」
    「ピカデリー」の続き。さらに悲惨な感じ。
    「痛みはいつか消える」
    友人の離婚話を哀れみ、自分は帰国する夫の帰りを楽しみに待っていると……これも痛烈。こういうのデュ・モーリア節と呼んでいいだろうか(勝手に)。
    「天使ら、大天使らとともに」
    「いざ、父なる~」の続き。ホラウェイが療養中を任された副牧師が、貧しき人々のために祈り、いつしか美しかったホラウェイの教会が貧民窟に変わってしまう。これは…真の牧師とは副牧師のような人を言うのだろうが、そうは終わらないのが……ホラウェイみたいな男、きっと本当にいたんだろうな。
    「ウィークエンド」
    ラブラブだったバカップルが、ボートの故障(?)で一気に冷める(笑。
    「幸福の谷」
    これは長編「レベッカ」にも通じているらしいが、どちらかと言うと私は「モンテ・ヴェリタ」を思い出した。ラストが暗示的で幸せと言うよりもなんだか不安になる。
    「そして手紙は冷たくなる」
    いわゆる押せ押せだった男の手紙が相手の女性と通じたとたん、だんだん冷たくなっていく…典型的といえば典型的。
    「笠貝」
    この主役の女性、怖い! 相手のため、相手のためって言いながら、全部自分の思う方へ進ませようとしているじゃない。そして彼女に関わった者たちはみんな不幸に…主役の一人称なのに、この女の怖さがものすごく伝わってくる(笑。いや、笑い事じゃない。側にいてほしくないタイプ。
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    投稿日:2017.06.22

  • tetujin

    tetujin

    このレビューはネタバレを含みます

    ・ダフネ・デュ・モーリア「人形 デュ・モーリア傑作集」(創元推理文庫)の カバーには「幻の初期短篇傑作集」とある。「本書は近年になって発見された『人形』を含む14編を収めた初期短編集である。」(石井千湖「解説」327 頁)「人形」以外は知られた作品なのであらうか。基本的にはおもしろい作品集である。巻頭の「東風」はそんな中では例外であらう。ある時、人知れぬ島に異人がやつてきて島に波乱をもたらす。ありふれた物語である。しかも、物語は予想通りに進む。島の女と異人の一人ができてしまつて悲劇が起きる、正にこの通 りである。これを破綻のない物語とも言へようが、しかしまた、おもしろみに欠ける物語とも言へる。習作的な作品なのであらうか。巻頭がかういふ作品であるのは意外であつた。
    ・表題作「人形」、これにはレベッカといふ若き女性が出てくる。ヒロインであらう。物語はそのレベッカに恋をした男性の、海岸の岩にはさまれて残されてゐた手記の断片からできてゐる。かういふ後日発見された手記を使ふのはラブクラフト一派のよく使ふ手である。この「人形」はそんなに手が込んでゐない。手記は、書き手とレベッカのなれそめから破局までを語るだけである。書き手が、言はばレベッカに一目惚れしてその家にも通ふやうになり、当然、関係を迫ること になるが、レベッカがそれを拒む。その理由が明かされて書き手は……海にでも飛び込んだのであらうかと想像させる手記の発見場所である。このレベッカは長 編「レベッカ」とは関係ないが、タイトルの「人形」のグロテスクさは印象的である。個人的には、おもしろくはあるがやはり今一つ物足りないといふ感じ、習作であるのならば納得できるといふところ、後の長編の萌芽であるのかどうか。たぶん違ふであらう。作者がそのヒロインの名が気に入つてゐたのかもしれないとは思ふ。これに対して「いざ、父なる神に」と「天使ら、大天使らとともに」は宗教者への皮肉の効いた物語である。「アッパー・チェシャム・ストリート、 聖スウィジン教会の牧師、ジェイムズ・ホラウェイ師は云々」と始まるこの2作、牧師の日常が描かれる。それもとびきりの俗物としてである。それゆゑに上流階級とのつきあひが多く、教会での地位も確立してゐる。「いざ」では、そんな中の1人の相談事、妊娠させてしまつた女と別れるのに力を貸す。「天使」で は、下層民を友とする若き副牧師を追放する。どちらも俗物感たつぷりに描く。当時はこんな牧師が多かつたのかどうか。たぶん現代もさう違はないと思ふが、 作者は教会の在り方が気にくはなかつたのであらう。類型的かもしれないがおもしろくはある。巻末の「笠貝」も若き女性が主人公、ヒロインである。このタイトルの貝は、岩盤に密着して離れないで生活を送るカサガイのことであらうか。「笠貝」は、ディリーの語る子供時代から四十近くの現在までの物語である。言ふならば、私、子供の頃から損ばかりしてきたのよといふことである。最後にかうある、「なぜわたしはこんなに不運で、こんなに不幸なんでしょう?(原文改 行)わたしのしていることってなんなんでしょう?」(326頁)尽くしても最後は捨てられるといふのである。そんなグチである。カサガイからすると、実は彼女が相手に執着してしがみついてをり、それゆゑに捨てられたといふことではないのか。多分そうなのであらう。これも皮肉である。結局、初期の作者の関心は主人公とその相手のすれ違ひ、あるいはかみ合はなさといふことにあつたのかもしれない。その意味で、「性格に不一致」なる短篇があるのはおもしろい。正にかみ合はない2人の物語であつた。

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    投稿日:2017.02.25

  • るね

    るね

    デュ・モーリアの初期短編集。14篇収録。
    表題作以外は幻想風、不条理感などはあまりなく、帯書きにある「人々の心に潜む狂気」というほどのものではなく、市井の人々の間に現れる"わかり合えなさ"が描かれているものが多い。
    ラストの「笠貝」の語り手は……狂気というか、かなり歪んだ人格だが、これに似た人間は現実でも決して稀じゃない気が。

    詳しくは此方に。
    http://rene-tennis.blog.so-net.ne.jp/2017-02-13
    続きを読む

    投稿日:2017.02.14

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