【感想】光秀の定理

垣根涼介 / 角川文庫
(98件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
24
45
19
1
0
  • 普通の歴史小説ではありません!

    仏教(仏陀の教え)とは神様信仰では無く自己鍛練である。くらいの軽い前置きしておきます。
    明智光秀に対する先入観をほぐしていきながら、名脇役となる二人の軽快なやり取り(堅苦しい昔言葉がほとんど無いのが読みやすい!)が序盤は続きます。
    光秀が信長に召し抱えられて以降は一気に読み終えました。
    何故に信長を討ったのか?その謎に新たな考察と、現代社会に生きる私達へのメッセージ性が感じられました。特に中間管理職の方や今の自分の立場に悩んでいる方にお薦めします。
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    投稿日:2017.05.31

  • 本能寺の変は必然

    新しい発見や新資料から本能寺の変を書いた話では無い。歴史のもしは無く、起こるべくして起きた事だと痛感。

    投稿日:2018.03.14

  • 時代の移り変わり

    とても読みやすく、また、飽きさせずこの先はどうなるのか!とどんどん読み進められます。
    また、友という良き理解者が人には必要であり、織田を倒した理由が、この本の通りであって欲しいと思わせる纏め方でした
    歴史で語り継がれる内容は、勝者の理屈で纏められる事は事実であり、これが真実なのかもしれません。
    最近面白い本と出会えていなかったのですが、この本は、歴史が苦手でも全く問題なく楽しく読めるので、久しぶりに出会えたおすすめ出来る一冊です。
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    投稿日:2018.08.12

  • 博打(確率論)から始まる、一風変わった歴史物語

     タイトルからして主人公は光秀であり、彼の半生なり、一生が、彼の心情を解き明かしながら語られるものだと思っていました。しかし、作品情報にあるとおり、少々異なったアプローチで書かれたもので、まさに革命的歴史小説と言えるかもしれません。
     歴史好きならば、みんな大好き、本能寺の変。日本史上のミステリーとしては、最大級のものですよね。これまでも数々の小説や、また学術的論文で推測されてきたものです。当然、この小説も、そこにいたるまでの心情が、光秀のコトバで語られるものだと思っていましたけれど、そうではなく、小説の中では、本能寺から秀吉の朝鮮出兵あたりまでは、こんなことがありましたと事実が語られるだけです。TVドラマならば、ナレーションだけで説明したといったところでしょうか。
     そして、陰の主人公である新九郎と破戒僧・愚息が、光秀の追悼の酒盛り?で、様々な思い出と共に、光秀の心情を一晩じっくりと語り合うというスタイルです。ここが、この小説のキモとなるわけですが、これがとても的を射ているように思います。いかに歴史的資料を駆使しようとも、光秀が本当のところ、どう考えていたかなんていうことはわからないわけで、所詮想像するだけです。でも正直、二人が酒盛りで語り合ったように、そんなところだったのかなぁと思いました。とくに私は初めて知ったのですが、側室をもたなかったとも言われるほどの愛妻家であった光秀が、本能寺の変の前に、その愛妻を亡くしていたということです。たぶん、これは結構心にくるでしょう。なんのために艱難辛苦を耐え忍び。。。と考えたのも判らなくもないではありませんか?
     最後に篠田節子の解説がついておりましたが、これもなかなか面白い指摘でした。これまで不遇だったエリートが、新興組織の中で異例の出世をとげ、次第に汚れ仕事を押しつけられて、その結果、特別背任で逮捕されたというサラリーマンが光秀だったと言えなくもないでしょう。
     歴史小説が好きな人は勿論、社会派小説好きにも面白いと思いますよ。そうそう、それと数学好きもね。私も最初は、この小説はどこに行きつくのかと思いましたよ。
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    投稿日:2018.12.31

  • 『本能寺の変』が省略されている明智光秀本

     明智光秀が主人公の歴史小説なのだが、どちらかというと架空の人物である愚息と新九郎の視点で語られるところが多い。愚息とは世の中のしきたりに迎合せず、辻博打で生計を立てている破戒僧の名である。そして彼が信じるのは手垢のついた仏教ではなく、釈迦の直接説法だけだというのだ。

     また若き兵法者である新九郎は、剣の道を志すも金に困り辻斬りに身を落としていた。そんなある日、辻博打をしている愚息と運命的な出会いを果たす。さらに若き日の光秀を辻斬りしようとしたが、新九郎との実力差を認めた光秀が刀を差し出すのを見ていた愚息に光秀の勝ちだと言われてしまう。こんなことが縁となり三人の奇妙な付き合いが始まるのであった。

     このほかにも光秀の妻煕子の聡明さや、光秀が世話になっている細川藤孝のしたたかさ、そして織田信長の残虐さの中に同居する器の大きさなどを分かり易く描いている。それだけならよくある歴史小説との差別化は果たせないのだが、本作では愚息の辻博打で使われている「3つの定理と確率論」が大きく関わってくる。そこが実に興味深いというか、他の歴史小説にはあり得ない構成となっているのだ。

     さらに面白いのが、光秀を描いておきながら、あの『本能寺の変』の描写が一切省略されているのである。ただなぜ光秀が、その暴挙に走ったのかという謎解きだけは、光秀が没した15年後に、愚息と新九郎の酒の肴として語られる。まさにそれが『光秀の定理』であり、まるでミステリー小説の結末を探り当てるように一気にむさぼり読んでしまうだろう。
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    投稿日:2021.01.12

ブクログレビュー

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  • pa-yan

    pa-yan

    信長の原理も気になっていましたが、
    上下巻ということもあり、
    まずは先に発刊されていたこちらをと手に取りました。

    結果…とても面白かったです。
    なんですか、これは…!

    読み進めていく中で、
    「最後の最後まで面白いじゃないか…!嬉泣」
    という一言が思わず。苦笑

    最初は、愚息と新九郎がメインで、
    光秀はいつ登場して活躍するんだろうかと思っていたら。

    光秀の人柄、周囲の人物、時代背景、
    途中から光秀がどんどん走り始めます。
    だけど、やはり愚息と新九郎が魅力的で。
    その二人と光秀の友情というか、縁というか。

    最後の最後まで全部が楽しかったです。
    信長目線の「信長の原理」も読まなくてはです。
    続きを読む

    投稿日:2023.10.29

  • marimoju

    marimoju

    大河ドラマで明智光秀の印象が変わりさらに知ってみたくなり手に取った。
    主人公は光秀ではなく、のちに友人となる架空の僧侶と浪人の二人。
    モンティ・ホールを使った確率、統計あり青春娯楽ありで歴史小説にしては変わり種で面白く読めた。
    最後の藤孝再登場シーンにハラハラされられた。
    キャラクターの生き方に優しさを感じさせる。暗くなく読後感良し。
    初めての作家。他の作品も読んでみたい。
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    投稿日:2023.10.14

  • ひろ

    ひろ

    明智光秀がメインではない。
    愚息という世捨て人の坊主と、剣術の達人である新九郎、このコンビがメインです。(架空の人物かな?)
    私は戦国の歴史はとんと疎いので史実をおって正確な感想は言えないが面白い一冊でした。
    長良川の争いで明智家が離散したあとから朝倉家、のちに信長に仕え、かの有名な本能寺の変まで。
    歴史小説は本の中での言動にどこまで感情移入してよいかわからないけれど光秀の苦労心労はこの時代では特に辛かったであろう。
    それはともかく、とにかく愚息の考え方、身分の上下に関係なく我の通すのがかっこよかった。
    本当にそこまで曲げられない信念があってもこの時代大変そうに思えるけれども。






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    投稿日:2023.07.03

  • プッチ

    プッチ

    時代を変えた謀反人ともされた明智光秀は一体どんな人物だったのか。自分の信念から独自の世界観を持った坊主と技を極める兵法者から見た光秀とその時代を描き出した小説はなかなか面白いストーリーだった。
    愚息という名前もとぼけていて妙だが、そんな奴らが時代を冷静に見ていたなってありそうな、なさそうな。人を食った描き方ならやはり垣根涼介らしい。続きを読む

    投稿日:2023.06.04

  • area8800

    area8800

    とても面白い
    途中からはあっという間に読んだ
    詰まるところ本能寺の変は謎であり
    信長が天下人であったなら
    と思いを馳せる

    投稿日:2023.05.03

  • kunkun666

    kunkun666

    このレビューはネタバレを含みます

    光秀の話、と思ったら、その架空の友達、愚息と新九郎の話だった(!)。
    面白かったんだけど、その架空の友達にもやもやする。結構この2人が深く入り込んでて、私はノンフィクション寄りの話が読みたかったのに、フィクション寄りの話になってた。
    それは置いておいて、確率の定理は面白かった。4つのうち1つを当てる、最初1つにかけて残り2つを排除したら、単純に考えると確率は1/2になるけれど、本当は掛けてない方の1つには排除した2つの確率も合わさるから3/4になる。面白い。これが兵法にも通じる。そして日常生活にも通じるのかもしれない。常に目の前にあることだけではなく、全体、過去のつながりも計算に入れないと正しく判断できない。物事をその時代の倫理観だけで判断しても意味がない。
    光秀は、明智一族復興のため尽力したけれど、それを楽しんではいなかったのではないか。そういった考え方がこの作者の面白いところだなと思った。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2022.12.31

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