【感想】最も危険なアメリカ映画 『國民の創世』から『バック・トゥ・ザ・フューチャー』まで(集英社インターナショナル)

町山智浩 / 集英社インターナショナル
(24件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
3
13
7
0
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ブクログレビュー

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  • daiyuuki24

    daiyuuki24

    暴走するアメリカ民主主義──その「原型」はハリウッド映画の中にあった!
    「トランプ現象」は突然起きたものではない。それは言うなればアメリカ建国のときからの「病巣」であり、それを誰よりも鋭く見抜いていたのが映画人たちだったのだ
    いま、映画を語らせれば右に出る者はいない町山智浩がその蘊奥を尽くして語る「映画から見たアメリカの病理」。その深層に触れたとき、あなたはきっと戦慄するであろう。

    本書の目次より
    人種差別に火を付けた「史上最悪の名画」◆『國民の創生』
    「アメリカの大義」に利用された人々◆『滅びゆく民族』
    ディズニー・アニメが東京大空襲を招いた?◆『空軍力の勝利』
    封印された「戦場の英雄たち」◆『光あれ』
    スプラッシュ・マウンテンは「奴隷制」の世界だった?◆『南部の唄』&『クーンスキン』
    アメリカ・ショー・ビジネス史の汚点とは◆『バンブーズルド』
    黒人教会爆破事件から始まった大行進◆『4リトル・ガールス』
    石油ビジネスがもたらした「狂信」◆『エルマー・ガントリー』&『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
    アメリカン・ドリームに踊らされる人々◆『何がサミーを走らせるのか』
    かくして「民意」は捏造される
    ◆『群衆』
    リバタリアンたちは今日も「アイン・ランド」を読む
    ◆『摩天楼』
    メディアと広告代理店と政治のトライアングル
    ◆『群衆の中の一つの顔』
    今も続くマッカーシズムの呪い
    ◆『影なき狙撃者』
    独裁者は民衆の喝采から生まれる
    ◆『オール・ザ・キングスメン』

    インディの帝王が命懸けで撮った「最も危険な映画」
    ◆『侵入者』
    こうして歴史は改変される
    ◆『フォレスト・ガンプ』&『バック・トゥ・ザ・フューチャー』

    「國民の創生」は、それまで貧乏人向けの見せ物と蔑まれていた映画を文学などと並ぶ芸術として認識させた「技術的」には優れた傑作。だが内容は、現実では家畜のように扱われていた黒人奴隷が酷使されていた農園を地上の楽園のように描いたり、実際は南軍が北軍の砦を攻撃したのがきっかけで南北戦争が起こったのに映画では逆に描いたりなど、事実の歪曲が多い。最も問題なのは、KKKを英雄として描きKKKを再生させるきっかけになったこと。
    「滅びゆく民族」は、アメリカ先住民族が生きる権利を手に入れるために戦争に参加するなどの苦難の歴史を描いたもの。
    スパイク・リー監督の「バンブーズルド」は、アメリカのショービジネスの汚点であるミンストレルショーに正面から切り込んだ問題作。ミンストレルショーは、顔を黒く塗った白人がでたらめな文法の英語を喋りスイカとフライドチキンを貪る無知で滑稽でズルくてスケベな黒人を演じながら黒人音楽を陽気に唄って踊るショーで、黒人への偏見を広げるものと汚点になった。
    「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」は、石油産業が巨大化して工業化社会となったきっかけの石油産業振興と工業化したアメリカについていけない人々が宗教にすがったことから起こった宗教ブームについての映画。
    なんと言っても衝撃的なのは、日本では感動作として知られる「フォレストガンプ」や明るく楽しい人気作として知られる「バック・トゥ・ザ・フューチャー」が、アメリカでは歴史的事実を歪曲した映画として非難されていること。
    「バック・トゥ・ザ・フューチャー」が黒人差別と非難されているのは、ラストのパーティのシーンで主人公マーティが「ジョニーBグッド」を演奏してそれを聴いたチャック・ベリーがロックンロールを発明する、つまり白人が黒人にロックンロールを教えたという展開になっているのが黒人の功績を白人が横取りしていると叩かれた。実際にはマーティがロックンロールを演奏する3ヶ月前に、チャック・ベリーが「メイベリーン」なる曲をチャート入りさせているので、あのシーンは成立しない。
    「フォレストガンプ」が物議を醸したのは、カウンターカルチャーに身を投じるジェーンを徹底的に尻軽女として揶揄していること。極めつけのシーンが、ジェーンがストリップ小屋で「風に吹かれて」を全裸で唄い観客から卑猥な野次を浴びるシーン。問題のシーンでのジェーンをゼメキス監督は、「ジョーン・バエズのイメージ」と語っている。つまりゼメキス監督は、反戦運動家でフォークシンガーのジョーン・バエズをストリッパー扱いして貶めているのだ。その他にも反戦運動家を女に暴力を振るう偽善者として描いたり、ジョン・レノンの名曲「イマジン」をレノンが共産主義に能天気な夢を抱くお花畑左翼の歌のように描いた部分も問題だが、最も問題なのはゼメキス監督が知能指数の低い人の言いなりになる無垢なフォレストガンプをアメリカ人の理想として描いたこと。
    それは、大衆の代表のふりをしながら実際は金持ち優遇策をとり貧富の差を広げるレーガンやブッシュをのさばらせトランプを大統領選挙で当選させた反知性主義につながる危険なもの。
    知られざるアメリカの1面を知ることが出来る映画を網羅した映画解説本です。
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    投稿日:2022.12.13

  • longirostris

    longirostris

    一日で全部読み切った。町山さんのこういう観点での映画評論は歯切れが良過ぎて、ちょっと危うい感じもするんだけど、やっぱり面白い。

    投稿日:2022.03.06

  • AB型の女

    AB型の女

    知らないことがたくさんあった。町山さんの言う通り、映画は背景を知っている方がもっと面白く見れると思う。もっと勉強しよう…。
    読み終えるのにすごく時間がかかってしまった。内容がボリューミーなので、ついていけず寝落ち。の繰り返し。
    次にここで取り上げられていた映画を観るときに、自分にどんな気付きがあるかワクワクする!
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    投稿日:2021.10.16

  • イケダケンジ

    イケダケンジ

    巨匠グリフィスの「國民の創生」は、映画史に残る傑作と評価されながら、KKKと黒人のリンチを復活させた罪に問われている。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「フォレスト・ガンプ」の楽しさの裏側には、1960年代の反戦運動や公民権運動に対する強烈な敵意が隠されている…。
    スリリングな映画批評。アメリカ保守の無意識が見事に描き出される。トランプ大統領の誕生は必然だった。そう実感できる。
    続きを読む

    投稿日:2021.05.25

  • cecilia

    cecilia

    このレビューはネタバレを含みます

    KKKは白装束の由来まで醜悪だった..。ポピュリズムの落とし穴。ヒュー・ロング、アイン・ランド。黒幕にいるのは誰か。表にいるのは操られている人形に過ぎないのか。ロバート・ゼメキスは懐古主義で白人至上主義かつ反知性主義と知り、結構衝撃。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2021.01.01

  • volksdorfjp

    volksdorfjp

    最初は面白く、ぐんぐん読んでいたが後半ダレテきた。著者、内容というより題材の時代背景を知らないのでのめり込めなかったのかもしれない。しかし映像、メディアの恐ろしさを再度認識した。『バック トゥー ザ フューチャー』『フォレスト ガンプ』の解析には驚き! 「フォレスト ガンプ』を見た時の違和感の原因がわかったように思う。 紹介されている映画を観る機会がないのが残念! 【軍産共同体】は、いまだに続いている…。続きを読む

    投稿日:2020.06.06

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