【感想】<自己愛>と<依存>の精神分析

和田秀樹 / PHP新書
(14件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • キじばと。。

    キじばと。。

    著者が上智大学で心理学の初学者に向けておこなった講義をもとにした、コフートの心理学の解説書です。

    フロイトに始まる「自我心理学」では、ふつう対象に向かうはずのリビドーが自分に向いてしまった状態を「自己愛」(narcissism)と呼びます。こうした立場では、口唇期、肛門期、性器期という「自体愛」の段階を経て、「自我」が成立する自己愛の時期に至り、最終的には「対象愛」という成熟した段階に至るという発達理論のなかに、「自己愛」が位置づけられています。

    一方コフートは、「自己愛」そのものが成熟して、相手の気持ちに共感することができるような「より高度な自己愛」へと発展すると考えます。フロイト以降の伝統的な精神分析の世界では、「自己愛」や「依存」は自我の弱さに由来するものとして、否定的にとらえられていたのに対し、コフートは他者との共感を成熟したあり方にもたらすことが人間の発達のゴールだと主張し、患者に対する共感を中核にした治療理論を構築しました。

    またコフートは、対象リビドーではなく自己愛リビドーが備給された、強く共感を覚えるような対象のことを「自己対象」(selfobject)と呼んで重視しています。「自己対象」は、「鏡自己対象」「理想化自己対象」「双子自己対象」の三つの種類に分けられ、こうした自己対象が人間の真理の基本的なニーズであって、それを満たしあうような仕方で人びとはおたがいに共感しながら生きていますと論じました。

    本書では、こうしたコフートの心理学の根底にある人間観を、わかりやすく解き明かしており、興味深く読みました。
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    投稿日:2018.02.15

  • もおりい

    もおりい

    個人的な趣味の範囲で精神分析関係の本は嫌いではないし、営業職である私にとっていろんなパターンの相手と接する場面においてこの手の本は参考になる場合が多い。

    フロイトやユングという名前は比較的聞いたことがあるものの、本書はコフートという人の入門書的位置付けであるも、コフートについては聞いたことが無い人が多いかも知れない。

    もちろん専門家ではないので詳しい理論については理解しようとも思わないけれども、大切なことは相手の気持ちになってみたらどう感じるだろうかということ。
    ただ、相手の気持ち入り込みすぎて流されてしまっては客観的な判断はし難くなってしまうこと。

    もともと人間は一人では生きてはいけず周りに頼りながら生きていくものだというようなコフートのスタンスはとても人間的であり、共感できる。

    いささか内容が素人には難解で、専門的な感じが否めないが、再読すれば比較的理解出来るかもしれない。
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    投稿日:2013.11.03

  • bookharuru07

    bookharuru07

    このレビューはネタバレを含みます

    【充実度】50%
    少し専門的すぎて読み疲れてしまった。。;
    【内容】
    今アメリカの精神分析学で旬な”コフート”の理論を説明。
    コフートの理論はアメリカだけでなく、日本の”甘え”文化に通じるところがある。

    【キラポイント】
    成熟した自己愛は、give&takeの関係。相手が支えてくれることで、自分の成長するという依存心が自己愛を健全に発達させる。そこで道徳観や不安に強い人間になりうるとコフートは唱えている。

    【感想】
    自己愛が強すぎてなんてだめなあたしなんだ、とおもって手に取った本でした。そんなに責めなくてもいいんだって心が軽くなりました。社会にいると、ほめることや与えることが多く、自分が褒められたりすることが少なくなりました。。。期待してもいいんだ、そう考えれば、少し穏やかに過ごせそう^^そんな1冊でした

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    投稿日:2013.10.18

  • skyrock

    skyrock

    何よりコフート心理学の特徴だと感じたのが、依存を承認していること。精神分析では発達の段階として、まず自体愛、自己愛、対象愛という順序で成長していくというのが前提なのだが、コフートは精神分析医で精神分析の創始者のフロイトの娘のアンナ・フロイトに師事していたのにも関わらず、コフートはその精神分析の発達段階とは違い、自体愛、自己愛、成熟した自己愛という段階が必要だと言っている。これらでいう自己愛とは、他者と関わる時、自分を評価して欲しいとか愛して欲しいという思いが強く、相手がどんな気持ちとか、何を考えているかという「共感」ができず、対象関係なのに、自分のことばかりに意識が向いている状態で、相手に「依存」している状態である。

    フロイトはこれを対象関係ではないと認識して、これを脱却して対象愛に向かわなければいけないと言っているのだが、コフートは「人は依存しないと生きていけない」と言いお互いが成熟した依存をして共感しあう相互依存なら「ギブアンドテイク」で必要だと言っています。そしてそうしてエネルギーを補給してくれ、共感を感じる対象のことを、自分の一部のように感じる対象という意味で「自己対象」と呼びます。

    そしてこの自己対象には三つの種類があり、一つが自分は大切にされている、価値のある人間だと感じさせてくれる対象を「鏡自己対象」。自分がどのように生きていけばいいのか分からない時に、生きていく方向性を与えてくれるような対象を「理想化自己対象」。自分はみんなと同じ人間なんだ、みんな一緒なんだと感じさせてくれる対象を「双子自己対象」と呼びます。これらの自己対象を上手くみつけ、お互いにギブアンドテイクな関係を作っていくことこそ、コフート心理学の特徴であり、目指すところのようです。
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    投稿日:2013.08.08

  • kakapo1233

    kakapo1233

    このレビューはネタバレを含みます

     コフートは、人間というものは、病気をしたり、年を取ってくればどうしても自分のことばかり顧みて、他人に気がいかないのは当然であり、最終的に自己愛的になるのはあたりまえだと言っているのです。人間は、年を取ったり体が弱ってきたり病気をしたら、人に頼りなさいと主張し、人間というのは相互依存してもいいという結論を出していったのだと思います。

     そしてコフートは、人間とは依存的な生き物だという結論を出しました。ですから治療室でも自立を目的にしなかったのです。自己がしっかりしてくるということは、決して自立できるようになるということではなく、周りの人間をじょうずに自己対象として利用できるようになることだと言っているのです。

     上手に依存できるということもひとつの能力なのです。それはむしろ、人間にとっては成長なんだとコフートは考えているのです。

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    投稿日:2013.05.06

  • ドラソル

    ドラソル

    日本ではフロイトやユングなどと比べて無名のコフートという心理学者についての心理分析を扱った一冊。

    著者の専門分野なので説得力はある反面、内容が細かすぎて、心理学の専門家でないと付いていけない感が。

    投稿日:2012.09.17

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