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道尾秀介 / 集英社文庫 (38件のレビュー)
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総合評価:
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コータロー
作品全体を通して陰鬱な雰囲気が漂いますが、不快感の強いものではなく、読者にそっと寄り添うような切なさとやりきれなさを感じることができました。 それぞれの章では逃れられない不幸や登場人物の些細な行動を…きっかけとして、大切な存在が失われてしまった家族の話が描かれます。 あと一歩早ければ。あんな言葉をかけなければ。どうすることもできない自分。 そんな起きてしまった誰のせいでもない不幸に苦悩し、悶々とした日々を過ごす登場人物たち。そんな彼らの人生を6つのパラレルワールドを通して見ていくことになります。 この作品をより深く、より難しいものにしているのは、残酷な分岐が必ずしも悪い方向だけに作用していないことでした。 不幸が起きたからこそ、他の世界線ではなんともない関係だった姉の友達に特別な感情を抱くことになったり。 不幸が起きなかったからこそ、遠い未来で別の大切な存在を失うことになったしまったり。 そんな人として生きている以上、いつか訪れることになる等身大の不幸から目を背けず、押し寄せる欠落感と折り合いをつけている登場人物たちは、悲壮感に溢れていつつもどこか気高く、美しかったです。 他人との交流は世界をぐっと広げたり、逆にぎゅっと狭めたり、自分にとてつもない影響を与えているのに、どれだけ影響を受けているかを自分で把握することは難しい。だからこそ日常の中で訪れる小さな選択も、できるだけ悔いのないものにしようと思わせてくれた作品でした。続きを読む
投稿日:2023.11.08
きむ
面白かった。4.5くらいかなぁ 読書YouTuberがおすすめしていたので読んでみました。 短編集で、1章でなくなってた人物が、第2章では死ぬきっかけとなった事象を回避して生き残っ手いたならばという…パラレルワールドのような世界観で各章進んていく 事前のあらすじ説明を知らずに読んでたらたぶん混乱してただろう(笑) 人は誰でもあの時こうすればよかった、そうしなきゃよかったという行動が誰しもあるかと思う、それが家族を失う行動であったら尚更である。 ある章では病気や事故等によりその人物はなくなっている話で展開されているが、次の章ではその人物がその危機を脱して生きていたならば?という話で物語が進んでいく。 あのときの行動をとらずにいたならば大切な人を守れたかもという自責にかられあのとき戻れるならと思う登場人物もいるが、 「逆に大切な家族はなくすものの、悲しみを乗り越え、新しい人との出会いも当然あると思う。 その人たちとの新たな関係や思い出が構築されていけばいくほど、この人達との関係をすべてなくしてまであの瞬間に戻ろうとは思わない この人達を忘れたくはないという」描写もあり 色々考えさせられる作品だった。 続きを読む
投稿日:2023.03.01
塔子
『光媒の花』と同じくリンクしていく連作短編集。各章共通する登場人物達なのだけれど、全く違う道を歩んでいるお話。生と死と、昏く重みある先に、光を見出すような最終章のまとめかたが相変わらず凄い。 あの時あ…あしていれば、そんな生きていく上で思わずにはいられない幾つもの「もしも」。分岐の世界の中にも更なる「もしも」に捉えられていく。 最終章に到達するまでとんでもなく各章、やりきれない思いが胸を打つ。苦しく、悲しく、後悔と絶望、罪として責めるほどの喪失。 この思わず頭を抱え唸りたくなるような悲劇の書かれ方が道尾先生作品だーっとなる。そこにきちんと温かさも存在する。でも重い。でも一筋の光がある。まるっとスッキリではない、これからどうなっていくのだろうと考えてしまう締めが何とも言語化難しい余韻に浸されます。 やっぱり大好きな作家さん。全作読みたい。続きを読む
投稿日:2023.02.22
koringo
あの行動をとらなければ、あの時ほんの少し違ったら、別の世界になる。 これは家族を失う喪失の物語だ。 だが次の章になると家族の中の生者と死者が入れ替わり、残された家族の人生が全く違ったものになる。その時…、家族の別の一面が明らかになる。 そしてある家族の喪失の物語が別の家族の物語へと繋がっていく。 なんて哀しくて不思議な物語だろう。 中表紙にある挿し絵のように、一輪の百合を角度を変えた鏡で写していくと、少しづつ違った百合の姿を写しながら無限に広がっていく。目眩を感じる世界。幻想的で怖く、美しい。 続きを読む
投稿日:2023.01.23
じゅう
「道尾秀介」の連作小説『鏡の花』を読みました。 「道尾秀介」作品は今年2月に読んだ『貘の檻』以来ですね。 -----story------------- もしも大切な人がいなかったら、どんな人生を…送るのか? 身近な誰かが欠けてしまったパラレルな六つの世界が呼応し合い、眩しく美しい光を放つ。 緻密な構成が輝く、著者渾身の意欲作。 少年が解き明かそうとする姉の秘密、曼珠沙華が物語る夫の過去、製鏡所の娘が願う亡き人との再会…。 「大切なものが喪われた、もう一つの世界」を生きる人々。 それぞれの世界がやがて繋がり合い、強く美しい光で、彼らと読者を包み込む。 生きることの真実を鮮やかに描き出すことに成功した、今までにない物語の形。 ベストセラー『光媒の花』に連なり、著者の新しい挑戦が輝く連作小説。 (解説/「杉江松恋」) ----------------------- ほんの小さな行為で、世界は変わってしまった… それでも、、、 身近な人の死と、その死に関する、ほんの小さな行為により心の傷を負ったまま生きる人々… 切ない気持ちを綴った連作小説でした。 ■第一章 やさしい風の道 ■第二章 つめたい夏の針 ■第三章 きえない花の声 ■第四章 たゆたう海の月 ■第五章 かそけき星の影 ■第六章 鏡の花 ■解説 杉江松恋 登場人物や住んでいる場所等が、ちょっとずつ重なり合っているけど、亡くなった人物やその理由は異なっている物語、、、 自分が生まれる1年前に姉「翔子」が亡くなっていた、8歳の少年「章也」は、ある一軒家を目指す、そこには「瀬下」という老人が独りで住んでいた… 少年が抱える切ない空想を描いた『やさしい風の道』、 高1の「翔子」は、親友「真絵美」の弟「直弥」と付き合い始めた、7年前に死んだ弟「章也」は、生きていれば「直弥」と同じ中学2年だった… 姉弟の哀しみを知る月の兎を描いた『つめたい夏の針』、 「瀬下栄恵」は、息子「俊樹」が小学校1年生だった18年前に、夫を水の事故で亡くした… 夫は、どうして海に行ったのか?夫と同じ職場に勤めていた「木島結乃」の関係は?曼珠沙華が語る夫の過去を描いた『きえない花の声』、 引っ越しをした「瀬下」と「栄恵」が住んだ家は今年の春、小さい女の子がベランダから落ちて亡くなったという、ほどなくして、息子「俊樹」が崖から転落して亡くなった… 老夫婦に届いた 風に逆らって悠々と飛翔する二匹の蝶が描かれた絵葉書に秘められた思いを描いた『たゆたう海の月』、 「真絵美」と「直弥」の両親は亡くなっており、「飯先葎」は「瀬下俊樹」と結婚していた、「葎」の母である「結乃」は昔の血液病が再発… 母の子を思う気持ちや、「真絵美」らの両親が亡くなった火事の原因を描いた『かそけき星の影』、 「翔子」と「章也」姉弟、「真絵美」と「直弥」姉弟の4人と、「葎」・「俊樹」夫婦と2歳になる「創介」、「瀬下夫妻」と「飯先夫妻」の7人が大広間の真ん中にイチョウの木が立つ民宿「菱花」で出会う… そこには顔に祖父の製鏡所での事故でできた無残な火傷の痕が残る小学2年の「美代」という女の子がいた、、、 「美代」に謝ったまま死んだ祖父への悔恨の想いを抱えた「美代」は、鏡の向こうの世界にいくため家を出る… 製鏡所の娘が願う亡き人との再会を描いた『やさしい風の道』、 ほんの小さな行為で、世界は変わってしまうんだよなぁ… ということが強く印象に残る作品でしたね、、、 でも、最後には、この6つの物語が、どうつながり合っているのか説明が欲しかった… 読解力が足りないんでしょうが、ちょっとモヤモヤ感が残る作品でした。続きを読む
投稿日:2023.01.22
taka
光媒の花と同じように、それぞれの短編 がパラレル的な繋がりを持つ構成。 同じキャラクターが、違う形で現れたり と混乱気味だったが、ラストを読むこと で、この本の主張が分かったような気が した。 花シリ…ーズでは、光媒の方が読みやすい と感じた。続きを読む
投稿日:2023.01.11
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