【感想】倒立する塔の殺人

皆川博子 / PHP文芸文庫
(54件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
9
21
17
2
0
  • 幻想小説?

    御年90になっても意欲的に著作を続けていらっしゃる作者であるから、著作歴は非常に長い。当然作風もしばしば変わっているが、この作品も幻想味をずいぶん強めに出したもので、最近の作品とはずいぶん雰囲気が異なっている。サスペンス 謎解き要素も入っているが、はっきり言ってやや余分な気がする。幻想一本で書ききったほうがわかりやすかったようなきがする。続きを読む

    投稿日:2022.10.30

ブクログレビュー

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  • G. S.

    G. S.

    戦争文学✕少女小説✕ミステリー
    空襲の脅威に怯えつつ、軍用機などの部品をつくる(特攻隊に死を与えている)という構造、少女たちの利発さの裏に隠された悪意が発露するとき、そして事件の真相…。とにかく美しさの中に潜む毒気にぞくっとさせられる名品。続きを読む

    投稿日:2022.10.10

  • aqua

    aqua

    このレビューはネタバレを含みます

    戦時下のミッションスクールで流行した「小説の回し書き」から女生徒を巻き込んでいく美しいミステリー。
    戦中、戦後の世の中の変わりようが、今なら分かるような気がする。中身のない矛盾した物言いが蔓延っていて、それを受け入れなければならないのはさぞ辛いだろうと思う。
    文学・音楽・絵画。お腹は膨れないけれど、少女たちの心をどうしようもなく潤すそれらが随所に散りばめられ、知識欲を駆り立てる。いつ命が失われるか分からない過酷な状況でも、心が求めるものを無視することはできない。
    読み終えて喪失感すらある。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2021.08.26

  • 菓子パン

    菓子パン

    皆川博子さん初読み。一癖も二癖もあるという噂を聞き、ついでにそんな癖の強い作品たちの中でもこの『倒立する塔の殺人』は比較的読みやすいということを聞いて手に取ってみた。確かに、読みづらくはなかったしストーリーの展開も面白かった。
    終戦間際から終戦後にかけて、あるミッションスクールにおいて行われていた小説の回し書きが主題となる物語。物語は女学生の日常と、ノートに残された手記、そして『倒立する塔の殺人』の創作によって構成されていて、そのバランスが整っていて迷わずに読み進められた。そして戦時中やミッションスクールという設定が余計にこの話をミステリアスに仕立てている気がした。戦時中とはいえ、他所と隔離された少女たちの花園。小説内に登場する「S」や「お熱」などの用語がその特殊な環境の秘匿性を高めていて、その秘密を垣間見させてもらっているような心地で読み進めた。
    特によかったと思うのは、物語の中に登場する他作品(ドストエフスキーとか)や絵画、音楽が豊富だったこと。巻末には物語に登場する絵画が絵付きで紹介されていて、随時参照しながら想像を膨らませることができた。そして解説で三浦しをん(大好きです)が書いている通り、ほかの作品への興味までかきたてられる。
    続きを読む

    投稿日:2019.08.21

  • 橘

    とても面白かったです。
    戦争末期の女学校で、ある少女の死をきっかけに、密かに書かれていた「倒立する塔の殺人」という物語の謎解きが始まる…という要約も難しいお話です。
    今回も戦争の残酷さとそれでも損なわれない美に惹き付けられました。
    YAの作品なのですが、決して子どもっぽくないどころか、登場する絵画・音楽・小説についても知りたくなる知識欲にかられる作品でした。
    「どういう小説が好きか、登場人物の誰に惹かれるか、それを明らかにするのは、自分自身の本質を曝すことでもある」という一文に、それではわたしはここでは自分自身の本質を曝してるのか…と思いました。確かに。
    空想あるいは物語という水を養いにしなければ枯れ果ててしまう、しかもその水には毒が溶けていなくてはならない…「毒が、わたしたちの養分なのだ」というのもわたしの本質です。
    「倒立する塔の殺人」で告発されたのは誰か…カロライナ・ジャスミンという花が気になりました。
    Sまではいかなくとも、親密な女学生たちの様子も良かったです。皆川さんの作品の登場人物たちには逞しさも感じます。
    三浦しをんさんの解説も良かったです。色々書いても、皆川さんの物語には結局「すごい」の一言を繰り返すのみです。
    続きを読む

    投稿日:2019.03.16

  • ゆみみゆ

    ゆみみゆ

    再読。まさに万華鏡。
    あらゆる要素がはらはらはらはらと振りまかれ、読者はくるくるくるくる回る。

    物語の構成が素晴らしいの一言に尽きる。
    突然託された一冊の本。中には告白と虚構入り混じる「物語」が描き連ねてある。
    それを見つけた少女たちが、順番に書き継いでいく……

    ミステリーという体裁を取らずとも、十分魅力的な話だ。
    作者の筆は、さすがの流麗さで、戦時中という舞台すらもどこか甘やかなものに変えてしまう。
    少女たちは、どこまでも凛と可憐で、残酷だ。

    けれどここに、上級生の少女の死や謎の死体、「本」というミステリーが絡む。読者は幻惑される。
    そしてミッションスクールでの過去がじわりじわりと開示されていく。
    読者は、この「本」を託された少女たちと同じく、息を詰めて読み進めるしかない。
    完全に「皆川万華鏡」の中に入り込んでしまう。

    「倒立」の業の深さと狂気!
    謎がほどけた時の目が覚めるような感動。
    すべてが乱反射した物語。素晴らしい。

    時代の閉塞感と生きるためにギリギリの情勢を描きながら、ふわふわと、意地悪く、けれど逞しく生きる少女たち。
    異国の男が持ち込んだ(考えてみれば、少女たちが読んでいるドストエフスキー作品の数々すらも「異国の男」という登場人物なのだ。小道具ではなく)虚無。
    虚無と狂気と少女はなんと馴染むことか……

    それでも、ベー様こと阿部欣子の生活感と頼もしさは嬉しくなる。
    少女たちすべてに幸あれ。
    続きを読む

    投稿日:2017.12.01

  • rainrainbow5

    rainrainbow5

    戦時中に家族や大切な人を亡くしながらも、自分の好きなことや大事なものを見失うことなく、本に夢中になったり歌やダンスを踊ったり、悲しく辛い毎日の中でも、楽しむことを忘れずに必死に生きる少女達は本当に逞しかった。続きを読む

    投稿日:2016.12.23

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