【感想】蒼ざめた馬を見よ

五木寛之 / 文春文庫
(13件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
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  • ソビエト…スパイ…意外な結末

    短編5篇。直木賞受賞の表題作「蒼ざめた馬を見よ」は群を抜いている。新聞記者の鷹野は上司に呼び出されて突然「この社を辞めてもらえまいか」と言われる。終戦から20年、ユダヤ人の暗い真実を描いた小説を出版したい。だがソビエトの体制下では出版できない。原稿をソビエトから持ち出してほしい。そのために新聞社と無関係な人間になれというのだった。言論の自由をポリシーとする鷹野はのめりこんでいくが意外な結末に。スパイ小説は現実離れしていて面白いと思っていたが「サイバー攻撃が珍しくない時代になったな」などと考えながら読了。続きを読む

    投稿日:2017.01.26

ブクログレビュー

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  • touxia

    touxia

     巧妙な物語。1966年。ソ連は、言論統制が敷かれていた。Q新聞外信部記者の鷹野隆介は、新聞論説主幹の森村から、社を辞めてソ連に行き、アレクサンドル・ミハイロフスキイの未発表の長編小説を密かに入手することを命じられた。この命令自体がかなり危ない。それを鷹野は引き受けることに。
     ユダヤ系市民の3代に渡る家族の物語は、ソ連では発表できない。これを持ち出して、西側で発表する。そして、鷹野はミハイロフスキイの家に訪問するが、ミハイロフスキイの妻に拒絶される。
     困っていた。キーロフ劇場に行ってみようとして、劇場でオリガとあった。オリガは強引に席を譲れという。それで譲ったら、劇がおわってから誘われる。そのままいい関係になってしまう。
     オリガはミハイロフスキイの仕事を手伝っている学生だという。とんとん拍子に、ミハイロスキーの本を手に入れた。題名は『蒼ざめた馬を見よ』だった。西側で発行することで、賞賛を浴びる。
     ところが、ミハイロフスキーが逮捕されたというのだが、全く別人だった。その作品は偽物だったのだ。ソ連には自由がないということを見せつけ、言論統制されているということを見せつけるための作品だった。
     鷹野は、戦争の引き上げの時に、朝鮮にいて、死者を焼く日が決められていた。「焼き日ですよ、焼き日ですよ」という声が、耳元で聞こえるのだった。
     当たり前だと思い込んでいたことが、仕組まれていたことを鷹野はしる。さすが、直木賞をとっただけある。言論の自由とは何か?
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    投稿日:2023.07.20

  • 1695019番目の読書家

    1695019番目の読書家

    読みたい本リストにあげていたところなかなか店頭でみかけなかったが、ロシアがウクライナに侵攻
    したことで久々に再販された模様。この作品集に描かれた内容が今のSNSの普及した時代からみると道具立ても世界の思想状況もある意味時代小説になりつつあるように感じられた。とはいえその時代を生きた世代だからこそ書くことができた人間の生き様は今も我々に迫力に満ちてせまってくる。
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    投稿日:2022.06.11

  • zippin

    zippin

    第56回(1967年)直木賞受賞作。戦後20年ほどの日本と東欧を舞台とした5編の短編集。
    50年近く前の作品だが、先日読んだ『一度は読んでおきたい現代の名短篇』にて表題作が紹介されていたのをキッカケに手にした。
    主人公の行動がとにかく熱い。時代背景もあるが、今読んでも濃い。
    五木寛之の作品というと、『大河の一滴』の大河物語はまだしも『百寺巡礼』のように静かで心落ち着くイメージが強くいのだが情熱溢れる作品。そしてどれも短篇で終わらせたくないようなプロット。初期はこのような作品を書いていたとは思いもよらなかった。
    ハードボイルド小説、ミステリ小説、青春小説、色んな要素をもった作品群だ。
    新装版では、解説もまた熱い。まさに、噛まれた!
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    投稿日:2020.08.22

  • higetan

    higetan

    直木賞受賞作の表題作を含む初期の代表傑作選。表題作,日本の新聞記者が,ソ連の老作家が書いたまま封印したとされる体制批判の小説を入手せよとの厳命を受けて現地に向かうが,果たして首尾良く行くのか。他にも,終戦後のソ連抑留から帰国後20数年,安定した生活を確保した大学教員を襲う重い過去(「夜の斧」)など。サスペンス,イデオロギー,個人的な過去との対峙など,様々な面を見せてくれる。ストーリーテリングが上手い(ぐいぐい引き寄せられ,読みやすい)。続きを読む

    投稿日:2019.02.23

  • m_chigu

    m_chigu

    戦後のソ連と日本を舞台に5つのストーリー。一つ一つを中編小説で読んでみたくなる設定。結末がどうなったかを読者の想像に委ねる仕上がりに。

    投稿日:2017.03.05

  • kotaroyokoyama

    kotaroyokoyama

    戦後20年ばかりに書かれたものであり、戦争の名残が全体的に残っている。残っているというかそれに常に囚われているという方が近いかもしれない。つまり全体に暗く重い印象が付きまとっている。

    短編集はあまり好きではなかったが、本短編集はそれぞれの作品に何か共通するようなものを感じたし、多くを語らないことの効果も感じた。
    多くを語らない良さを感じたのは、作家の芸によるものか読み手の心情変化によるものかは分からないが新しい感覚だった。
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    投稿日:2016.04.09

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