【感想】緑衣の女

アーナルデュル・インドリダソン, 柳沢由実子 / 東京創元社
(35件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
10
18
7
0
0
  • 痛みの先に見えてくるもの

    痛い作品です。ある家庭内での暴力が執拗なまでに描かれ、読んでいて辛くなりました。しかし、これと同じようなことは今も現実のどこかで起きているはずです。そう思うと、暴力的な描写に込められた著者のメッセージが見えてきます。
    本書には記号のように薄っぺらな人物は登場しません。人骨発見事件を担当する捜査官たちについても、事件の進行とからめて、それぞれの特徴や境遇がていねいに描かれていきます。脇役(大使館員など)までやたらとキャラが立っていて、妙に印象に残りました。
    痛くて暗くて、でもその先にかすかな光が見える――そんな物語です。

    (文庫化に伴い単行本版に書いたレビューが消えてしまったので、こちらに再投稿します)
    続きを読む

    投稿日:2016.07.15

  • 人間の心に住む悪魔に国境はないのだと思い知らされる。

    火と氷の国「アイスランド」幸福感あふれる静かな美しい風景が目に浮かぶ。しかし北欧ミステリを読むと人間の心に住む悪魔に国境はないのだと思い知らされる。少年が拾った人骨の謎を追う、これがこの作品の全てである。70年程度経過していると想定して進められる捜査の過程で様々な人間の苦しみが浮き彫りになる。暴力、虐待、嫉妬、勇気をもって負の連鎖を止めようとする少年、深い心の傷・・・魂の殺人をしたとがで、人を裁判にかけ、有罪にすることができますか・・・捜査官エーレンデュルの抱える哀しみと並行してミステリは静かに進む。続きを読む

    投稿日:2018.09.19

ブクログレビュー

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  • AkO

    AkO

    このレビューはネタバレを含みます

    たしかに人気作家なだけあり、巧みな構成と筆力を感じる。
    死体がまず見つかって、現在と過去の話が交互に織り混ざって進むが、死体は誰なのか、わかりそうでわからない。誰かわかった後も、誰が殺したのか、どうしてそうなったのか、種明かしは焦らされて、先が気になってしまう。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.04.01

  • JUANES

    JUANES

    このレビューはネタバレを含みます

     家族を持つ前に二の足を踏む男。家族を持ちたかったが、それが叶わず身を投げる女。家族になったが、それを自分で壊してしまった主人公。作者が〝子供を大切にし、愛すること。それだけが親の責務である。“と訳者に力を込めて語ったという、その親の責務が果たせず、家族を粉々に打ち砕き破壊し尽くす父親。人骨発見を機として、それぞれの家族が交差しながら、重いテーマであるドメティック・バイオレンスが、言葉を尽くして書き切られていく。女性に対しての暴力の描写がリアルで、同じ女性として、読み手を辛くさせる。
     今日もどこかに、身を守るために敵を屍にして穴に埋めざるを得ない状況にいる人が、心の中で握ったナイフに力を込めたり、緩めたりして苦しんでいるのかもしれない。
     殺しが単なる犯人探しの謎解きに終わらないのが、テーマが重い北欧ミステリーの醍醐味である!

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    投稿日:2023.09.21

  • bond

    bond

    ミステリーですが、驚きの結末! 的なミステリーではありません。暗く陰鬱な雰囲気が全編を覆っています。しかし先が気になって読んでしまう。上手いと思った。しかし。DVには反吐しかでないね。皆死刑でいいと思う。続きを読む

    投稿日:2023.02.25

  • hocco21

    hocco21

    なんとアイスランドの推理小説作家。同国では姓名が無いとのこと!!!
    少し暗いけど、その国の様子がわかり、とても面白かった。

    投稿日:2022.12.07

  • fattycatlover

    fattycatlover

    このレビューはネタバレを含みます

    エーレンデュル捜査官シリーズの第二弾。

    子供の誕生日会が騒々しく盛り上がる最中、
    人骨が発見される。
    人骨は古いもので、発掘部隊がゆっくりと骨を取り出していく。
    遺体は近くのサマーハウスに住んでいた家族の誰かなのか、
    フィアンセを残して行方不明となった女性なのか。

    いわゆるコールドケース、
    過去の事件を掘り起していく筋立ては好きだし、
    過去と現在を行ったり来たりする構成にもついていけるのだが、
    何か入れ込めない。

    妊娠中のエーレンデュルの娘とはせっかく心が通じたと思ったのに、
    また家を出て行ってしまい、
    発見した時には胎盤剥離で胎児を失い彼女自身も意識不明となったり、
    そのせいで離婚した元妻に罵倒されたりと、
    私生活がひどいからか。

    同僚のオーリも同棲している恋人がいるか、
    結婚に踏み切ることができず、
    もう一人の同僚は、病室にいた老人に質問を繰り返し、
    酸素マスクでかろうじて生きていたその老人を死なせてしまうと、
    誰にも感情移入ができないせいか。

    前作で意味ありげに登場していた昔の上役は出てこないし、
    エーレンデュルが幼いころ、
    吹雪の日に弟とはぐれ失ってしまったことが語られ、
    霊能者と出会うが唐突。
    もちろん、事件とは関係ない。

    アイスランドでは爆発的な人気らしいけど、
    どうも自分にはその魅力が判らない。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2022.11.21

  • H

    H

    前作に引き続き陰鬱なアイスランドの曇り空の下で展開される物語のイメージだけど、全然嫌いじゃないし、むしろ好き。
    DVの描写はキツかったけど、おそらくこれは最後には……?みたいな推理も読みながらできるし、エーレンデュルの過去にも触れていて、一度も飽きなかった。続きを読む

    投稿日:2022.07.13

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