【感想】逆説の世界史2 一神教のタブーと民族差別

井沢元彦 / 小学館
(8件のレビュー)

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ブクログレビュー

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  • :*:♪・゜’☆…((φ(‘ー’*)

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    「一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書@山崎圭一」を目次的に参照し、山川資料集(世界史図説)でビジュアル補足しながら読んだ。世界史初学者だから、目にすることすべてが新鮮だった。一神教の歴史と考え方の流れを詳細にしかし一気に把握できる。併読した「ユダヤ・キリスト・イスラム集中講座」後半のインタビュー記事を読むと、井沢さんの主張もすべてその通りではないことがわかる。いろんな意見を知り、それを尊重することがいかに大切か。過干渉せずに仲良くすればよいではないかという態度は日本人の得意ではないかと改めて感じた。続きを読む

    投稿日:2020.03.29

  • goya626

    goya626

    副題が「一神教のタブーと民族差別」となっていて、このシリーズが通史ではないことを示している。キリスト教徒21億人、イスラム教徒12億人、地球の人口の半数は、一神教の信者なのだ。この一神教を理解しなければ、世界史はなかなか分からないということなのである。この2つの宗教は、どちらもユダヤ教から生まれているというのは驚くべきことである。この本は、ユダヤ教、キリスト教、十字軍、オスマン帝国を順に考察していく。一神教-とにかく神の言うことが正しい、教えを守れ、何か不都合があれば人間が悪い。他の神を信じているやつら(いやそれは本当の神ではない)は、敵である、滅ぼしてもいいというわけだ。ユダヤ教徒は、出エジプトのとき、敵対するエリコ、アイの町の住人を皆殺しにしたという。旧約聖書にそうあるのである。ユダヤ教に限らず、キリスト教、イスラム教もどれも排他的である。イスラム教の開祖のムハンメドは、信仰を広げるために生涯戦争し続けたのだ。これが聖戦のいわれなのだ。そのときから、信仰のために戦って死んだ者には、楽園が約束されたという。その楽園とは、上手いもの食べ放題、若い処女抱き放題だという。うーん、いったいこれはなんだろね。
    中世ヨーロッパよりも、同時代のイスラム帝国のほうが文化も科学も優れていたというが、近代資本主義社会の成立に成功したのは、ヨーロッパの方であった。プロテスタントの考え方は、商業や金融という世俗的職業も天職で、救われるべき人間は神のみ心のままに行動するに違いないから決して道を踏み外さないということであり、資本主義の活動は肯定されたのである。神の考えを上手に改竄することができたという。イスラム教ではそれができなかった。政教分離をして、なんとか資本主義経済をとりいれようとしても、イスラム原理主義のもと揺り返しがあるのである。うーん、この辺り、まだまだ私には分かりにくかった。
    第2次世界大戦後の中東の紛争は、イギリスの三枚舌から始まっているという。中東戦争については、分かりやすくまとめてあった。クルド人問題も取り上げられていて、戦後すぐにクルド人の国の建国を援助していればよかったということであった。
    古代から現代まで、一神教の問題は大きい。今後どうしていけばよいのか。歴史を学ぶことによって、様々な意識を変えていかなければならないのだ。
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    投稿日:2019.08.18

  • よしこ

    よしこ

    本から離れていたから、読み始めるには重い感じ。でもずっと、宗教、とくにユダヤ教は興味の範囲。でもこの本は、微妙にキリスト教、イスラム教が多かった。興味深い本でした。

    投稿日:2017.06.04

  • yasz

    yasz

    新年(2017)になって最初に読破した大部の本(300頁超)は、逆説の日本史シリーズでお馴染みの、井沢元彦氏の書かれた「逆説の世界史2」です。

    この本のテーマは「一神教のタブーと民族差別」です、私の受け取ったメッセージは、元々は同じ神を信じている、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教が、経済発展にどのように貢献・障害となったのか、です。

    世界の主要三宗教の違いを解説した本をある程度読んできましたが、なぜ、キリスト教国が近代になって、イスラム教国に対して有利になったのか、逆に言えば絶大な力を持って世界を制覇していたイスラム社会(オスマン帝国)が、なぜ西欧諸国に圧倒されることになったか、私なりの解答を得ることができたのが、この本を読んだ成果でした。

    資本主義を支える考え方、経済を発展させるうえで必要となる金融業(利子をとることの正当性)について、どのように宗教の考え方と折り合いをつけれたかがポイントだったと思いました。ユダヤ教徒が差別されていた経緯も、それが良いかどうかは別にして理解できました。

    以下は気になったポイントです。

    ・世界三大宗教は、仏教・キリスト教・イスラム教である。民族を超えて世界中に広がっている世界宗教であるから(p8)

    ・世界史を知ることの根本に、宗教を知るということがある(p9)

    ・輪廻とは、人間の生命は消滅しないということ、死んでも何等かの別の生命体に生まれ変わる。動物や昆虫になる場合もある、その次の生を決定づける要因は、道徳と結び付けられ、生前に良い行いをした者は高貴な者に生まれ変わり、悪行を行った者は、下等な生命体に生まれ変わる(p13)

    ・神が天地創造を行った後、第7の日ひそれを完成させ休息に入ったため、その日を聖別し祝福したことに基づく。現在全世界で行われている日曜日を休日とする習慣はこの安息日に由来する(p45)

    ・旧約聖書に書かれている4つの獣は、バビロニア・メディア・ペルシア・ギリシアの4大帝国とされている(p97)

    ・自分は絶対の正義であり、反対するものは絶対悪と決めつける、というのが一神教の大きな特徴(p103)

    ・仏教の仏と神道の神は8世紀の奈良時代から習合(統合)の風潮が始まり、10世紀の平安時代になると、仏と神は根本的に同体であるという、本地垂迹説が、仏教と神道が融合した「日本教」というべきものの主体となった(p104)

    ・キリスト教神学者(アウレリウス・アウグスティヌス)が自殺を悪と考えた理由として、1)自分を殺すことは他人を殺すことと同じ、2)神への真の信仰心を持つ人間なら絶望しない、3)自殺したら、神の前で行いを悔い改められない、4)自殺という罪によって別の罪を避けようとする態度は許されない(p119)

    ・中国の場合は、皇帝以下、貴族から庶民まですべて順位がつけられる社会であり、平等ということはあり得ないし、一人一票もあり得ない(p141)

    ・世界中でナチスドイツの民族浄化政策を受け継いでいるのは、旧ソ連と、その消滅後は、中国のみ(p144)

    ・儒教の世界において、孔子の例では、「父親の無罪を勝ち取るためには裁判でウソの証言をしても構わない」となるし、孟子の例なら「たとえ最高権力者でも国法に従って父を罰することようなことがあってはならない」となる(p148)

    ・福音とは、ギリシア語「エヴァンゲリオン」に由来する言葉で「良い知らせ」=朗報を意味する。イエスの4人の弟子(マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネ)が福音書という形でまとめた、BCは、Before Christであり、ADは、Anno Domini(ラテン語で、主イエス・キリストの年代)である(p153)

    ・クリスマスイブ、つまり前夜も重要な祭日とされているのは、昔は1日の始まりが、朝ではなく日没だったから。冬至を祝うという習慣は、これをどん底として、日はだんだん長くなり、太陽の力が復活していくと考えられたから(p155)

    ・キリスト教最大の祭典は、復活祭である、イエスは処刑されたが、3日後に死から復活して「神であることを証明した」、こちらの方がこの世に降誕(クリスマス)よりも重要であるとされている(p155)

    ・三位一体説(アタナシウス派)とは、神は、父と子と聖霊という3つの形を持つように見えるが、実際には一つの実体である、それに対して、すべてを創造した創造主である神は唯一「父」のみであり、当然「子」なるイエスは天地創造前には存在せず、神の創造物で、イエスの地位は「神の養子」と解釈する、アリウス派もあった(p204)

    ・邪教がキリスト教とはまったく違う宗教であるのに対して、同じキリスト教の枠内で正しくないとされた教義が異端である、325年のニカイア会議以降は、ほとんどの宗派が三位一体説を正統とした。後にカトリックと分裂した、東方正教会、独立したプロテスタントもそのまま採用している(p206)

    ・キリスト教が成立して数百年後、紀元7世紀に、預言者ムハンマドは、唯一絶対の神である、アッラーから、「三位一体などあり得ない」という内容のメッセージを受け取った、これがイスラム教のはじまり。(p212)

    ・ウマル率いるイスラム勢力は、ササン朝ペルシア帝国と、ローマ帝国の後継者ビザンツ帝国との激しい消耗の中、漁夫の利を得る形で両軍を撃破した。エルサレムも支配下においたが、ローマ帝国によってユダヤ民族が追放されてから、キリスト教徒の聖地となっていたが、ウマルは、両者(キリスト教徒、ユダヤ教徒)に対して、殺戮せずに税を取り立てた。これによりエルサレムは、三宗教が混在する場所になった(p250)

    ・イスラム教徒にとって、エルサレムは、これ以降、メッカ、メディナに続く、第三の聖地となった(p250)

    ・イスラム教が重視するのは、「六信」と「五行」である。(p262)

    ・西ヨーロッパは、ローマ教皇が聖職者組織の頂点に立ったが、東は何人かの総主教がいわば「教区」を、分割統治した。ここに至って、ローマ帝国の言語であったラテン語は、それぞれの地方の方言に吸収される形となり、イタリア語・フランス語・スペイン語となった。一方、ゲルマン人の言葉は、その勢力の強かった地方ではスタンダードな国語に変化した、英語・ドイツ語・オランダ語である(p285)

    ・後に蒸気機関を開発し、その力で世界を植民地化した欧米諸国は、現在までの勝者であるが故に、昔は中国やイスラム帝国に、学問や化学技術ではるかに及ばない時代があったということを封印したい、その偏見は、相手を「無信の徒」と見る感覚があるからだろう(p292)

    ・十字軍が始まって以来、キリスト教陣営がエルサレムを確保できた期間は、1099-1187,1229-1244までの103年間である、これ以降、20世紀に至るまで、エルサレムはイスラム教徒が支配した(p322)

    ・イスラム教世界は停滞し、キリスト教世界が発展するようになった分岐点は、オスマン帝国がイスラム帝国としての支配権を固めた1517年とする見方がある(p330)

    ・中世に古典としての聖書を研究するにはギリシア語の聖書が必要で、しかもギリシア語を学ばねばならない。それを欧州からの留学生に提供し、教授したのは、イスラム帝国のムスリム学者である(p337)

    ・オスマン帝国、サファヴィー朝、ムガル帝国が鼎立した16-18世紀あたりは、まさにイスラム帝国の時代であり、世界の中心部をイスラムが治めていたと言っても過言ではない(p338)

    ・ユダヤ教、キリスト教、イスラム教では、「人に金を貸して利息を取ること」は、まさに極悪人の所業である。現在でも人は、自分の親兄弟に金を貸しても、通常は利息を取らないのと同じ。この考え方で、ユダヤ教徒は、キリスト教徒相手なら金融業ができることになる(p354)

    ・近代資本主義が有効に効率的に運営されるためには、1)利益の正当化、2)流通、3)金融が必要、金融とは利息をとって利益をあげる(不労所得)ことができるか(p351)

    ・カトリックの「ラテラン公会議」@1179、公正な金利上限を年33.5%とした、これ以上は高利貸しとなり悪徳になる(p355)

    ・第一次中東戦争は、1948年5月14日に、イスラエルの独立宣言をきっかけに、独立に反対するアラブ諸国(エジプト、サウジアラビア、イラク、トランスヨルダン、シリア、レバノン)が攻撃を開始したことで始まった(p368)

    ・ナチスのユダヤ民族大虐殺を暗黙に支持する反ユダヤ感情がドイツだけでなく、ドイツとは敵対していた欧州諸国にもあったという事実がある(p370)

    ・労働は尊いもので、それ故に生じた利潤も尊いというプロテスタントの考え方は、イスラム教徒にとっては神の教えを蔑ろにする冒涜となる。人間が主体となり神の教えを「改変」していったからこそ、神から独立した形の科学、近代資本主義、民主主義が生まれ、キリスト教を信じない人にとっても、これらのシステムは受け入れられた、このパワーにより、キリスト教世界はイスラム教世界を圧倒した(p381)

    2017年1月8日作成
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    投稿日:2017.01.08

  • kasaharapapa

    kasaharapapa

    このレビューはネタバレを含みます

    キリスト教とは一口に言えば、約2,000年前にいたユダヤ教世界の中に生まれ、いちどは死んだイエスが死から復活したと言う奇跡を認め、イエスを人間でなく唯一の神と信じる宗教のことだ

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    投稿日:2016.09.12

  • izumowol

    izumowol

    逆説の世界史、2巻目は一神教─ユダヤ教、キリスト教、
    イスラム教が題材である。なぜ当時最先端だったとも言える
    イスラム教国が歴史的に没落していったのかについての
    分析など、著者独特の視点は相変わらず読んでいて面白い
    のだが、何せ相手は一神教という巨大な存在、ごく浅く
    歴史をかいつまんで紹介するまでにとどまっているように
    思える。この一冊を踏まえてのさらなる論に期待するところ
    である。
    続きを読む

    投稿日:2016.07.20

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